メルメド火山〜翠
「大海原に佇む水の化身…ポセイドンよ…我に大いなる海の力を与えたまえ…ビックウェーブ!」
私は上級水魔法を使用しサラマンダーにダメージを与えた。
”上級雷魔法”を覚えた次は”上級水魔法”を習得したいと願い、日々努力していた。
ライトと二人でレベル上げを行う時は常に水魔法を使っていた。
使用すればするだけ経験値を獲得できるのが魔法。
そうね…ライトのおかげで水魔法のレベルが上がったのね。
どうして喧嘩してしまったのかしら?
喧嘩というより…一方的に私が怒った事が原因?
タオルなんて、正直に言うとどうでも良かったわ…なんか気に入らなかっただけ。
そう…同棲するライトの事が気に入らない。
何が気に入らないか?…明確に答える事が出来ない。なんせ嫌いになった訳じゃないんだから。
あぁ…ライトが気に入らない前に、自分自身が気に入らないわ…
トントン。
今はインターネットカフェに居る。借りた個室のドアを優しく叩く音がした。
「お開けしてもよろしいでしょうか?」
そうだった…ビールと夕飯を注文していたんだったわ。
「あ、はい…」
”サウザントフェアリー”のゲーム画面を最小化して、店員さんに返事をした。
ここのピラフ、美味しいんだよねぇ♪
右京は…ちゃんと夕飯食べたかな?…あ、今はゲーム中だからライトって呼ばなくっちゃだった。
サウザントフェアリーをプレイしている時は、お互いの事をプレイヤー名で呼ぼうと決めていた。
理由はゲーム内で、ポロッと本名を口に出してしまう危険性を感じたから。
音声入力で自分のアバターが言葉を発するこのゲームのシステム…”便利だが注意が必要だ”と諭したのはライトだった。
確かに…思わず口に出してしまった言葉がグリーンから発せられる。少しギルドのメンバーと話をしてみると、これほど危険な事は無いと実感した。
「うーん、やっぱりいつもと違う感じがするわね。」
インタネットカフェの椅子が合わないのかしら?それともこのキーボードかな?
調整しながら、サラマンダーと戦う。
「ムーンさん、今よ!サラマンダーの首を狙って!」
「あ、はい!」
同じ魔法使いであるムーンさん、本当、素直で可愛い。
最初は、この少数ギルドで魔法師2人も要らないんじゃないかしら?それだったらウチに居ないアーチャーを引き込む方が良いんじゃないかな?て思った。
けど…今はムーンさんが来てくれて良かったと思う。たまに意味不明な事を言うけど、そういう所もなんか…癒される。
「ふぅ…結構、倒したわね。」
「今日でサラマンダー5体。19時になってもグリーンさんが来なかったから、最初どうしようかと思ったわ。」
「ごめんなさい、リアルで色々あってね。」
「あら?どうかしたのですか?」
「うーん…私が大事に思う事と、相手が大事に思う事との相違って感じかな?」
「え?どういう…意味ですか?」
「フフフ…ムーンさんが何歳か分からないけど、そのうち分かるわ。」
「私…そんな子供じゃないですよ。」
そう、相手の顔が見えないオンラインゲームの世界…ムーンさんが何歳なのかは分からない。本当に女性なのかどうかも。
でも…なんとなく分かる。リアルでのムーンさんは私より年下の女性。あぁ…会ってみたいな…もしかしたら良い友人になれるかもしれない。
「あの崖の上!キマイラだ!」
ウインドさんが叫び、指を差した方を見上げると、そこには昨日と同じ”二つ首のSランクモンスターの姿”があった。あぁ…やっぱり出るわね。
「オレに考えがある。試させてくれないか?」
え?
遅れてログインしたライト…彼の事だから、てっきり逃げる事を提案してくると思ったのに攻撃の提案?
「昨日はキマイラの尻尾にウインドさんがヤラレたから、尻尾をオレが専門に対応したいと思う。」
ライトは提案を続けた。
「前回と同じように、右の”獅子の首”をブロッサムさん、左の”羊の首”をウインドさん。そして、厄介な”蛇の尻尾”をオレが対応。スキが出たところでグリーンさんが魔法をぶっ放す。ムーンさんはみんなの怪我の回復に専念…どうかな?」
結局、私の魔法が重要なような…でも、逃げる頭は無かったようね。ムーンさんを回復に専念させるところがライトっぽいけど。
「ライトさん、それで行こう!グリーンさん、ブロッサムさん、ムーンさん、OK?」
「良いわよ!キマイラには電撃魔法が効いてたわ。頑張るわね!」
「ボクも頑張るっす!電撃武技を叩きこむっす!」
「回復担当、頑張りますっ!」
Sランクモンスター、キマイラへの対応が決まった。
「ぐうぉぉぉぉ~。」
崖の上でキマイラが叫ぶ声がこだますると同時に私は詠唱を始める。
「天より来たれし光の化身…建御雷神よ…我に眩い光を与えたまえ…サンダーボルト!」
ズドドドーン!
キマイラに向かって、空から稲妻が轟いた。
「先制攻撃…成功♪」
「グリーンさん、凄いっす!」
ドーン!
勢いよく崖から飛び降りたキマイラ。
感情は持っていないと思うけど、まるで怒っているみたいに見えるわね。
事前に話し合った通りの位置取り。
ブロッサムさんが”獅子の首”に攻撃を繰り出す。
「武技…修羅の雷鳴!」
ズドドドドドドーーーーン!
ウインドさんが”羊の首”に攻撃を繰り出す。
「剣技…サイクロンソード!」
ザンッ!ザンッ!ザンッ!
ライトさんが”蛇の尻尾”に攻撃を繰り出す。
「剣技…サイレントスラッシュ!」
シュンッシュンッシュンッ
「みなさん、頑張ってますね。なんかウズウズします。」
「ムーンさん、今回は前線に飛び出しちゃダメよ。」
昨日は、ウインドさんを助ける為に前線に走っていったムーンさん。あの必死な姿…フフフ…ムーンさんてば、ウインドさんの事が好きなのかな?
3人が攻撃を止めた瞬間に魔法を放つ必要がある。
上級魔法を使うには詠唱が必要…なかなかタイミングが難しいわね。
「グリーンさん!頼む!」
ウインドさんの合図と共に、私は詠唱を始めた。前線の3人は一斉にキマイラから離れる。
「天より来たれし光の化身…建御雷神よ…我に眩い光を与えたまえ…サンダーボルト!」
ズドドドーン!
「あれ、躱されちゃったわ。」
意外とスピード値が高いのか…いえ、バレバレって事だわ。
バーン!
「え?」
キマイラに水魔法が炸裂している…ムーンさんね。
「やった!当たったわ!」
中級魔法だから、大きなダメージを与えられていないけど…ムーンさんが嬉しそうだから良いわ。
魔法攻撃が終わると、すぐに前衛の3人が攻撃を始めた。
「ムーンさん、次は逆にしようか。」
「あ、はい…先に私が魔法を放った後、グリーンさんが攻撃ですね。」
「うん、ムーンさんの魔法の方が詠唱早いから。」
「なるほどです。」
「グリーンさん!頼む!」
再びウインドさんから声がかかる。
「水魔法…アイスクラップ!」
ムーンさんが魔法を放つ。
「雷魔法…サンダーボルト!」
ズドドドーン!
「よしっ!」
確実に捉える事が出来た…けど、キマイラのHPゲージは大きく減っていない。
「繰り返すしかないですねぇ。」
3回ほど、このアタックを繰り返し、やっとキマイラを倒す事が出来た。
1時間程戦っていたかしら?
「あぁ…疲れたわぁ。」
ネットカフェの椅子に大きく寄りかかって肩を叩き、自分自身で疲れを癒す。
ピロン。
ダイレクトメッセージが届く音が聞こえた。
『帰っておいでよ。』
あぁ…やっぱり…ライトね。
『オレが悪かったから。』
うーん、どうしよっかなー。
『ちゃんとタオルの柄を覚えるから。』
そういう事じゃないのよ…やっぱり分かってないわね。
うーん…仕方ない、今日は帰るか。
『違うのよ…ちゃんと"見て""聞いて"欲しいだけ。私はそれだけで満足なの。』
『あぁ…分かった、ちゃんと見るから。聞くから。』
本当かな…
「ちょっとログアウトするわね。」
そうギルドの皆さんに挨拶をすると、ネットカフェを出て家路へと急いだ。
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