メルメド火山〜咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
あれ?どこに行っちゃたのかな?
買ったあと、すぐにカバンに入れた筈なのに…無いわ。
公園のベンチに座り、リュックサックの中を引っ掻き回すも出てこない。
もう…今日、発売の新刊のコミック、楽しみにしてたのに…どうして買ってすぐに無くなっちゃうのよ。
相変わらずの自分のダメさ加減に本当、呆れてしまう。
もう、悲しみを通り越して、"呆れ"しかないわ。
「あのぉ〜。」
すぐ近くから小さい声がする。見上げると、オーバーオールを着た小太りの女性が立っていた。あたしより少し年上ね…高校生?それとも社会人かしら?
「あのぉ〜。」
要件なら急いで言って欲しい所…なんせ、あたしは今から落としてしまったコミックを探して、本屋へと来た道を戻らなければならないのだから。
「すみません…急いでいるので。」
あたしがそう言って立ち上がると、その女性は自分のカバンの中から本を取り出した。
「あ…それ、あたしが落とした本…」
「あのぉ〜…あなたが本屋の前で本を落としたのを見て、慌てて追いかけたのですけど、見失っちゃって…」
本を拾ってくれたその女性は何故か申し訳なさそうに言う。
「すごく助かりました!ありがとうございます!」
あたしは、深々とお辞儀をしてお礼を述べた。
顔を上げると…あれ?
どうして同じ本が2冊もあるの?
小太りのその女性は、両手に同じ本を持っていた。
それは間違いなく2冊の"魔法使いのサナサ"あたしが購入したコミックの最新刊だ。
「私は駅前の本屋さんで買ったの。」
笑顔を見せながら、その女性は言った。
「え?お姉さんも"サナサ"好きなのですか?」
あたしが好きな"魔法使いのサナサ"はアニメ化などはしてなく、有名なコミックじゃない。まさか?と思いながら聞いてみた。
「はい、自由奔放なサナサちゃんが好きで、新刊が出るのを心待ちにしているの。」
目の前に立つ女性がこのコミックが好きな理由は、あたしがこの本を好きな理由と同じだった。
「あたしも…サナサちゃんが大好きで、今日が来るのを楽しみにしていたんです。拾ってくれてありがとうございます!」
再度お礼を言うと女性は驚きの提案をしてきた。
「あのぉ…今から一緒に読みませんか?」
「え?今から?ここでですか?」
「はい…ここで。一人だと恥ずかしいけど二人だと恥ずかしく無いかな。と思って。」
確かに、公園のベンチで一人、コミックを読む女子は"イタイ感じ"がするけど、二人だと"仲良しね"という目で見られるだけかもしれない。
「は…はい。」
家に帰ってから読もうと思ってたけど、本を拾ってくれた方の提案を無下には出来ず、あたしは彼女の提案を受け入れる事にした。
二人、公園のベンチに座りコミックを読み出す。
当然、無言。
友人が少ないあたしは他人に慣れてなく最初は緊張したけど、すぐに"魔法使いのサナサ"に集中する事が出来た。
「ふぅ〜。」
「面白かった、早く続きが読みたいわ。」
隣に座る女性とは、ほぼ同時にコミックを読み終えた。
「付き合ってくれて、ありがとうね。」
女性はそう言うとスマホを取り出した。
「私は津軽…津軽真琴、良かったらLIMEアドレスを教えてくれますか?」
「あ…はい。」
カバンから慌ててスマホを取り出す。
「あたしは佐竹…佐竹咲華です。」
えーっと…スマホを操作するもアドレス交換なんて久しぶりすぎて、やり方が分からないわ。
「えーっと。」
津軽さんも詳しい訳ではなかったようで戸惑いながら、スマホを操作している。
ん?津軽?
クラスメイトの津軽三佳の嫌な顔を思い出した。
この辺じゃ珍しい名字だけど…もしかして姉妹?
けど…目の前に居る女性は小太りで、とても読者モデルをしている津軽三佳の姉妹とは思えなかった。
「よし、出来た!」
「ありがとうございます。」
友達登録が10人も居ない事がバレてしまったかしら…と、どうでも良いことを心配する。
ベンチの前で手を振って津軽さんとは別れた。
年上女性の友人が出来るなんて…珍しい事もあるものね。って、友人と呼べる程でも無いか。
でも…"魔法使いのサナサ"が好きな方、仲良くなれるかもしれない。
帰宅後、もう一度コミックを読み返した後、早めの夕食を済ましてPCの電源を付けた。
えーっと、ギルドのみんなはログインしているかな?
「まだ、ウインドさんだけね。」
ウインドさんと二人きりになるのは…なんか恥ずかしい。
けど、早く話がしたいとも思う…不思議な感覚。
ブロッサムへと気持ちを切り替えると"ギルドメンバーと合流"ボタンをクリックし、ボクはウインドさんが居る草原へと降り立った。
ウインドさんは戦闘の真っ最中、ボクもその戦闘に加わる。
「お邪魔しますねー。」
「あ、ブロッサムさん、ありがとう!」
戦う相手はカマキリ型のBランクモンスター"マンティス"、コイツは攻撃力が高い上にすばしっこいので厄介。ただ、HPと防御力は低いので当てれば倒せる。
「オレがカマキリを引きつけるから、その隙に!」
ウインドさんの剣がカマキリの攻撃を受け止める。
「はい!」
ボクはカマキリの懐へと入り込んだ。
ドンッ
「チャララーン♬」
スキル技を繰り出す必要も無く、難なくマンティスを倒す事が出来た。
「ブロッサムさん、こんにちは。助かった。」
「そう言えば挨拶がまだでしたね、ウインドさんこんちわっす。」
「イベント開催時間まで、このメルメド火山付近でレベル上げしてたんだ。」
「そうなんっすね、でも…そろそろ時間なのに、皆さん遅いっすね。」
日曜日の夜、それぞれリアル都合があるのかな。
「ごめんなさーい、遅れちゃったわ。」
やって来たのはムーンさん。慌ててログインした様子。
19時となり、イベント開催を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
「ライトさんとグリーンさん、来ないっすね。」
「とりあえず…火山の入り口まで行こう。」
ウインドさんの後についてボクとムーンさんは歩いた。
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