第二回勉強会~月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「あぁ~あ、雨は嫌ねぇ。」
太陽の下で走り回る事が好きな私は雨が嫌いだった。
そして…この勉強会も嫌い。
毎週、日曜日に行われる事になった勉強会。今日は幼馴染の夕凪の家に呼ばれた。
今日は夕凪のご家族は留守との事。
夕凪との勉強会は苦じゃない、勉強は嫌いだけど…夕凪は私の為に時間を割いてくれている。逆に感謝しないとバチが当たるわ。
問題はもう一人の勉強会参加者、風斗。夕凪と同じ私の幼馴染だけど、性格が暗くなった彼の事を私はどうしても好きになれなかった。
「あーぁ、風斗は来なくても良いのにな。」
思わず本心が口に出たけど、改めて思う。
夕凪は勉強が出来るけど、人に教えるのは…正直、苦手なように思う。その点、風斗は人に教えるのが上手だ。まるで私が分かっていない部分を見透かしているような気分。
「ん?私の心を見透かしてる??」
そう考えると、余計に腹がっ立った。
「どうして、私の心を風斗に見透かされないといけないのよ…ウインドさんになら、まぁいいかもだけど。」
最近、気が付いたんだけど、私はオンラインゲームでお世話になっているギルドマスターのウインドさんの事が少し気になっているみたい。
昨日の夜、キマイラにウインドさんが倒されそうになった時、私は思わず駆け寄ってしまったわ。
魔法使い職がSランクモンスターであるキマイラの目の前に駆け付けるなんて、あり得ない。とライトさんに怒られたけど、勝手にコントローラーが動いたのだから仕方ない事だわ。
けど…所詮はゲーム仲間、知らない人同士、しかも相手はニート(たぶん)。心を許しちゃダメだわ…と、自分に言い聞かせる。
まぁ、瀕死状態だったウインドさんを助けたのは私だけどね。
「フフフ…」
あ、ダメ…相手は知らない人…しかもニート。気を許しちゃダメ…心の中で繰り返した。
夕凪の家の前に着くと…玄関前で風斗がウロウロとしていた。
あぁ…マジで不審者にしか見えないわ。
「ちょっと風斗、何してるのよ…不審者認定で通報されるわよ。」
「え?オレが不審者?」
怪しげな行動をしている事にまったく気づいてなかった様子。
「はぁ…」
頭を抑えながら、ため息をついた。
「さぁ、入りましょ。」
夕凪の家に入ると、風斗は後ろからついて来る。
「おかえりー。」
エプロン姿の夕凪が出迎える。
ん?”おかえり”?…この家ではメイド喫茶風のイベントでも開催中なのかしら?と不思議に思った。
「クッキーを焼いていたの。」
後で食べようね。
確かに…甘い香りが家の中に漂っている。
「月代…先に部屋に行ってて。」
夕凪に背中を押された私は階段を登った。後ろには風斗が続く。
小学生の頃は私が夕凪を振り回していた気がするけど…今では私が振り回されている気がするわね。
「さて…勉強会の準備を始めましょうか。」
私はそう言ったが、風斗はボーっとしている。
あー、そうか…学年でトップクラスの美人である夕凪の部屋に入ったのだもの…惚けない方がおかしいわね。
「風斗…身分をわきまえなさい。」
「は?何を言ってるんだ?」
間違えて風斗が夕凪の事を好きにならないように、私はクギを刺した。それが一般庶民である風斗に対する優しさでもある。
先週の勉強会での夕凪の言動から”もしかしたら夕凪は風斗の事が好きなのでは?”と考えたけど、冷静に考えたらCランクレベルの風斗の事をSランクレベルの夕凪が好きになる訳が無いわ。
間違えて風斗が夕凪の事を好きにならないように誘導する事が私の優しさ。
「訳の分からない事を言ってないで勉強を始めるぞ。忘れずに中学数学の教科書を持ってきたか?」
あぁ、どうして風斗に上から目線で言われなくちゃならないのかしら…腹が立つ思いもあったけど、今は大人しく従っておく。いつか、返り討ちにしてやるわ。
「えぇ、ちゃんと持ってきたわ。だからちゃんと教えなさい。」
上から目線には上から目線で。私は持参した中学の時の教科書を開けながら言った。
「あぁ…、やるからには、ちゃんと教える。」
「当然よ…」
一週間ぶりの風斗との勉強会が始まった。
うん…やはり風斗は教えるのが上手い。
私が分かっていない部分…自分でも知らなかった事を風斗は次々と指摘していく。
「あ、なるほどね。」
私が問題を解くと風斗は言った。
「三好…どうして、これほどの集中力を持ちながら、数学が出来ないんだ?お前、中学校の時、何をしていたんだ?」
うーん、それは…一つ、心当たりがあった。
「中学の時の数学の先生…私を馬鹿にしてきたのよ。あ、違うわ…陸上競技を馬鹿にしてきたによ。」
私がそう言うと風斗が不思議そうな顔をする。
「だから…あの数学の先生は”陸上競技が将来、何の役に立つのか?”って言ってきたのよ。私、頭に来てね…それ以来、数学の授業をちゃんと聞かなかったわ。」
「・・・・」
風斗が呆れたような顔をするのが分かる。
「分かっているわよ、大人気ないって…でも、陸上競技を馬鹿にするあの先生を私は許せなかったの。」
私の大人気ない行動に対し、風斗は口を開いた。
「はぁ…今更だが、ちゃんと聞いとけ。」
「風斗が中学校の時の数学の先生だったら、ちゃんと聞いていたかもね。」
あれ?どうして、こんな事を言ってしまったのかしら?まぁ、風斗は教えるのが上手いから本当の事かもしれないわね。
「あぁ…オレは三好が大切に思っている陸上競技を馬鹿にする事は無いからな。」
おかしいわね…ちょっと体が熱いわ。
「その…なんだ。怪我が治ったら…陸上、頑張れよ。」
風斗の言葉に時が止まる。
「え…えぇ…」
陸上部には、もう戻れない…いえ、全力で走れないんだから、スポーツ全般…もう無理よ。
お医者様に言われた言葉を思い出し…涙がこぼれるのを必死に我慢した。
にしても…夕凪、遅いわね。
しばらく風斗の授業を受けると、やっと夕凪が現れた。
「お待たせー。おやつタイムよ。」
お皿一杯のクッキーを持った夕凪が満面の笑みを浮かべている。
「もう、待ちくたびれたわよ。」
なかなか部屋に来なかった夕凪に私が言う。
「あら…月代ちゃん、食いしん坊ねぇ。」
「ははは、違いない。」
どうして、風斗に笑われなくちゃならないのよ。
「もう!クッキーじゃなくて!」
「あ、月代ちゃん、私が居なくて寂しかった?」
夕凪が意味深い言葉を口にする。
「風斗と二人きりだと…落ち着かないだけよ…」
私は夕凪、風斗と目を合わす事なく、そう伝えた。
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