メルメド火山〜風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「よし、やった!サラマンダーを倒した!」
「ウインドさん、やったですね!」
ブロッサムさん、ライトさんとハイタッチを交わす。
後ろを見るとムーンさんとグリーンさんの魔法使いコンビもハイタッチを交わしていた。
「まずは物理攻撃を加える。サラマンダーが炎を吐いて来た所で一旦退避。炎を吐き終えサラマンダーの動きが止まった隙に水魔法で大ダメージ。そして物理攻撃でトドメ…だな。」
ギルドメンバーと共にサラマンダーの倒し方を再確認した。
「このメルメド火山ではサラマンダーが多く生息しているらしい。これは…稼げるかも!」
火山に来る事を不安そうにしていたライトさんも嬉しそうに言った。
「ボク、役に立てて嬉しいっす!」
ブロッサムさんが両手にはめたグローブをバンバンと叩き合わせた。張り切っている様子が伝わる。
「時間が限られているわ…急ぎましょう。」
グリーンさん…相変わらず頼りになるな。サラマンダーを相手にする事が出来るのも全てグリーンさんのおかげだ。それにしても、いつの間に上級水魔法を習得したのだろうか。
「あまり役に立って無いけど…頑張りますね。」
ムーンさん"役に立って無い"って…まぁ、さっきの戦闘では確かに。
だけど、オレは自分が思っている気持ちを口にした。
「ムーンさんが後ろに居てくれるから、オレは全力で戦う事が出来るんだ。怪我をしても治してくれるという安心感…本当、心強いんだ。」
真っ直ぐにムーンさんに向かい伝える。
「あ…ありがとう。ウインドさんが怪我したら、私、全力で治しますから!」
ムーンさんもオレに真っ直ぐに向かい言う。
「ちょっと…何を二人で見つめ合っているのよ。"急ぎましょう"って言ってるでしょ。」
少しニヤニヤとした声で言うグリーンさんの言葉にハッと我に返った。
「あぁ、すまない。進もう。」
にしても何だろう?この感覚は…オレはPCの前で顔が熱くなるのを感じ、手でパタパタとあおいだ。
ムーンさん…全力で治しますって、心強いな。
この後も、サラマンダーが多く出現。
こんなにもAランクモンスターが現れるとは思わなかったが、グリーンさんの上級水魔法のおかげで倒しまくった。
「グリーンさんのおかげでポイントがどんどん貯まるね!」
「やったわ!水魔法レベルが上がったわ!」
ブロッサムさんとムーンさんが手を取り合って喜びを分かち合うが…
「うーん、順調すぎるくらいだ。」
慎重派であるライトさんは楽観視していない様子だった。
「うん、確かに…サラマンダーだけなら、もっと他ギルドもこの火山に来ている筈ね。」
グリーンさんがライトさんに賛同の言葉を口にすると…
「たいへん、たいへん。」
画面右上に表示されている、フェアリーが騒ぎ出した。
高ランクモンスターが出現する合図だ。
「防御陣形を!」
オレはギルドメンバーに指示を送った。
「やばっ」
目の前に現れたのは二つの頭を持つ異様な姿をしたモンスター。Sランクモンスター"キマイラ"だ。
崖の上に立つキマイラは鼻息を荒らげながら、4つの目でじっとこちらを見ている。
前例の中央に立つライトさんがオレに問いかけた。
「どうする?離脱するか?」
オレはキマイラと目を合わせたままライトさんの問いかけに応えた。
「我儘を言わせて貰えるなら、一度手合わせしてみたい。」
「ボクもやってみたい…」
前例左側にて防御姿勢を取るブロッサムさんが返事をすると…
「仕方ないわね、水魔法がどれだけ効くか…ね。」
「や…役に立ちますようにっ!」
後方に控えるグリーンさんとムーンさんもキマイラとの対戦を承諾。
「キマイラもサラマンダー同様に炎を吐く筈だが、データ不足だ。」
モンスターに詳しいライトさんでもSランクモンスターのデータは乏しいようだ。実際、オレ達のギルドはSランクモンスターを倒した経験は無い。
「オレとブロッサムさんとで攻撃、まずは様子を見よう。ライトさん、グリーンさん、ムーンさんは待機してモンスターの観察と対策を。」
「了解!いつも通りボクは左からだね!」
「あぁ分かった。弱点があると良いが。」
ブロッサムさんとライトさんが作戦を確認。
「隙があればムーンさんと水魔法を放つわね。」
グリーンさんとムーンさんが杖を構えた。
「よし、行こう!」
オレとブロッサムさんの2人で走り始める。
対するキマイラは崖の上から飛び降りた。
背中には、その巨体に対しては小さい翼が見える。空中を飛ぶにはあまりにもお粗末だが、崖から飛び降りる分には十分なようだ。
ドスンと音を立てて降り立ったキマイラに対し、オレは右側から回り込んだ。
左側から回り込んだブロッサムさんが先にスキルを発動する。
「武技…爆裂連打!」
飛びかかるブロッサムさんに向けてキマイラの首の一つ、獅子の顔が口を開いた。
ぶぉぉぉぉぉぉ〜
獅子の口からは炎が吹き荒れる。
「ブロッサムさん!」
オレは仲間を案じつつも右側から攻撃を加える。
キマイラはもう一つの首…羊のような顔をこちら側に向けた。
攻撃する事でブロッサムさんを助ける。
「剣技…サイクロンソード!」
円を描くような動作で連続してキマイラに剣を打ち込む。
と、同時に羊の口からは液体のようなものが放たれた。
「くっ」
嫌な予感を感じたオレは、攻撃を踏みとどめてキマイラの後方へと回避した。
ドンッ
「え?」
背中に物理攻撃を受けた事が分かる。
「ヘビ?」
ヘビに背中を噛まれた…そのヘビを見ると、キマイラへと繋がっている。
「キマイラの尻尾が…ヘビなのか…」
ヘビの牙には毒があったようで、HPが徐々に減っていく。
オレは慌てて剣でヘビの尻尾を振り払った。
ぶしゅわーーーー
羊の口から放たれた液体を被る…しまった、尻尾に気を取られすぎた。
「この液体は…行動力減少か…」
液体による攻撃を被った事でHPゲージが減り、さらに画面上に赤いランプが点滅…状態異常を知らせる。コレは…まずいな。
「ウインドさん!」
オレの名前を叫びながらブロッサムさんが、反対側から必死にキマイラに攻撃を繰り出しているのが見える。
「ウインドさん!」
さらに近くからオレの名前を叫ぶ声が聞こえる…って?あれ?もしかしてこの声は…
「ハイヒール!」
「ムーンさん!!こんな最前線で何やってるんですか!?」
キマイラの毒により狭まっていた視界がムーンさんの魔法により開けていく。
「ウインドさんのピンチに駆け付けただけよ!感謝しなさい!」
え?感謝しなさい!って…ムーンさんって、こんなキャラだったかな?
にしても、さっき言った”ムーンさんが居るからオレは全力で戦う事が出来る”が本当になった。
だけど、防御力が低い魔法職…こんな最前線に来る事は間違いだ。
「きゃ!」
案の定、キマイラが大きな足を振り下ろすとムーンさんにダメージを与えた。
オレが…助けないと…と思ったその時、
ドドドドーン!
キマイラの体を氷の剣山が突き刺した。
「私も忘れないでね!」
「グリーンさん!」
いやいや、助かったけど…グリーンさんまで、こんな最前線まで来るなんて、通常あり得ない。
「剣技…サイレントスラッシュ!」
シュンシュンシュン!
ライトさんの得意技が高速でキマイラの体を襲う。
「ライトさん!」
いつもなら魔法職をカバーする盾役に徹するライトさん…守るべき魔法職が前線に来てしまったのだがら、ライトさんも前線に来る事は当然だ。
「水魔法…中級 アイスクラップ!」
え?ムーンさんが中級魔法を!?サラマンダーを倒しまくった事で水魔法レベルが上がったのか。
空中に現れた無数の氷の槍がキマイラを襲う。
「こうなったら力押しだね!武技…修羅の雷鳴!」
ブロッサムさんの雷武具が唸りを上げた!
「あら、雷じゃ負けないわよ!雷魔法…サンダーボルト!」
グリーンさんも至近距離で雷魔法を放つ。
二人の雷系攻撃で周囲一帯に電撃が走る。
「ちょっと、オレまでビリビリしてるんだけど!あー、もう!剣技…サイレントスラッシュ!」
ライトさんが、再度、剣技を放った。
「アイスクラップ!アイスクラップ!」
我を忘れたかのようにムーンさんも中級魔法を連打。
「みんな…凄いや。剣技…バスターソード!!」
新しく手に入れた武具”コバルトソード”の熟練度も、この火山でかなり上がった。強敵キマイラに対し、過去最大の攻撃値を叩き出した。キマイラのHPを10%程、削る。
「これは…もう力尽きるまで、繰り出すしかないな。」
ふぅ…と、深呼吸した後、再度、渾身の剣技を繰り出す!
「剣技…バスターソード!!」
「水魔法…アイスクラップ!」
「武技…修羅の雷鳴!」
「雷魔法…サンダーボルト!」
「剣技…サイレントスラッシュ!」
ムーンさん、ブロッサムさん、グリーンさん、ライトさん、パーティメンバーの4人も出し惜しみせずに攻撃を繰り出す。しかも、その距離0。
防御力の低い魔法使いが0距離から魔法攻撃を繰り出す事など、普通はあり得ない事だ。
ズドドドドドドーーーーン!!
「チャララーン♬」
高ランクモンスターを倒した時に流れる音楽が聞こえた。
キマイラはゆっくりとその巨体を倒し、地面へと崩れ落ちた。
「はぁはぁはぁ…」
正直、どの攻撃で倒したのか…トドメの一撃が誰の攻撃だったのかも分からない。
「やったな!」
ライトさんが言うと、手を取り合ってみんなで喜びを分かち合った。
「凄かったよ…みんな、凄かったよ。」
グリーンさんがギルドメンバーを褒めたたえた。
「キマイラ、強かったねー!」
ブロッサムさんが大きな体を揺らしながら言う。
「みんな怪我は無い?大丈夫?」
ムーンさんはギルドメンバーの状態を気にかけた。
「あぁ…みんな無事だ。みんなありがとう!永遠の風、初のSランクモンスター討伐だ!」
そう言って、オレは右手を前に差し出した。
その手に、ムーンさん、グリーンさん、ライトさん、ブロッサムさんが手を重ね合わせる。
ムーンさんの手がオレの手に触れている。
魔法職にも関わらずオレの為に駆け付けてくれたムーンさん…間違いない。オレは素顔も知らないムーンさんの事を好きになってしまった。
オレ達5人は、合わせた5つの手を天に向けて大きく掲げた。
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