ビックバトル〜右京
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「あ、はい…すみません、その期日までには必ず。」
そう言葉を残して受話器を置いた。
違うんだ…オレはちゃんと発注を受けたその日に手配したんだ。
なのに…海外の生産拠点でトラブルが起きたらしく…予定していた納期から遅れたんだ。
オレは悪くない…なのに何故、謝罪しないとならないんだ…
「おい、六角!…六角右京!」
オレの名前を呼ぶのは上司だ。
どうやったら期日に間に合わせる事が出来るのか必死に考えている時に、一体何のようだ?
「部長…何ですか?」
オレは渋々返事をした。
「お前が電話中に最上工業さんから電話があった、折り返してくれ。」
あぁ…最上工業か…あそこも無茶な事を言ってくる会社だ。
昼休みになり、色々と考える。
えっと…島津産業の納期は航空便に変更してもらったから、何とかなるかな。ただ、航空便だと運送費が高くなっちゃうから、赤字にならない事を祈ろう。
最上工業への提案資料は作ったけど…注文を受けた時にちゃんと在庫があるかが心配だな。あの会社、決定が遅いから忘れた頃に注文してくるからなぁ。
そう言えば…この前出した武田工業の見積もりは、どうなったのかな?他社に取られちゃったかな?結構大きい案件だったから頑張ったんだけどダメだったか…どこも大きな案件は低粗利で勝負してくるからなぁ。
あぁ…あの件もまだ終わってないんだった…あの件も…机の上にあるファイルが山積みになっている事を思い出す。
もう…何もかも投げ出してしまいたくなる。
「おい、右京…大丈夫か?」
同期入社の友人が声を掛けてきてくれた。
「さっきから話しかけてるのに、ボーっとして…大丈夫か?」
「あ、あぁ…ありがとう。大丈夫だ。」
「営業部は大変だな…オレ、総務部の所属になって良かったと心底思ってるわ。入社した時は営業部に配置されたお前に嫉妬したが…会社全体を見てると、本当、営業部は大変だな。」
心配をしてくれる同期が居るのは有難い事だ。
オレは目の前にある食事と同期の会話に集中する事にした。
「残業とか多いんじゃないか?」
「それは…最近、監査がうるさいらしくてね。おかげで定時に帰れるようになったよ。仕事は貯まる一方だけどね。」
「そうか…ストレスが心配だな。なんかあったら相談しろよ。」
「あぁ、ありがとう。」
ストレスか…オレは自分のストレス解消法を知っていた。
帰宅後、PCを起動しオンラインゲーム”サウザントフェアリー”にログインする。
プレイヤー名は”ライト”職業は剣士だ。
オレはこのゲームで所属するギルド”永遠の風”が気に入っている。
ギルド名は中二病っぽくてイマイチだが…ここに来るとホっとする。
もしかしたら…このゲームをしていなかったらストレスにより潰れていたかもしれない…そんな考えさえある。
今回は他のギルドとトラブルがあり、逆にストレスとなったがギルドマスターであるウインドさんが上手く対処してくれた。
もし…オレがウインドさんの立場だったら…まずは謝った事だろう。現実世界でいつもそうしているように。
ウインドさんは謝らず、むしろ相手を怒らせた。結果、上手く行ったけど本当にウインドさんのやり方が正解だったのだろうか?自分の対処の仕方との違いに少し困惑した。
「あ、翠…コーヒーありがとう。」
「昨日のウインドさん、頼もしかったね。」
隣に座った翠もノート型PCを開きながら言う。
細川翠…彼女とは同棲している。
そして翠も一緒にオンラインゲーム”サウザントフェアリー”をプレイしている。
プレイヤー名は”グリーン”魔法使いだ。
「ねぇ、ライト…今日もサウザスの砂漠かな?」
「また筆頭ギルドが邪魔をしにくるかもねぇ。」
PCを付けた途端、二人の呼び名は右京と翠からライトとグリーンへと変わる…不思議な感覚だ。
「そうなのよねえ。このままで良いのかな?って思っちゃう。」
「うーん、ギルドマスターの指示に従うのがセオリーだけど…」
「それは大規模ギルドの場合でしょ…ウチらみたいな小規模ギルドの場合、仲間同士で意見をぶつけ合うのが良いんじゃない?」
「確かに…ギルドマスターは個々の意見も聞いてくれる。一緒に考えてくれる。そこがウチのギルドの良いところだ。」
いつものように他のギルドメンバー3人はすでにログインしていた。
「皆さん、こんばんわ。」
「ライトさん、こんばんわ。」
このゲームはログインすると街へ行くか、ギルドメンバーが居る場所に行くかを選ぶ事が出来る。
ギルドと合流を選択したオレ達が居た場所はやはりサウザスの砂漠だった。
「ちょっと…ライト。」
隣に座るグリーンからのプレッシャーが激しい。グリーンは場所を変えようと提案したいのだろう。
「ただ…あの弓使いの話だと、"幻の兎"のギルドマスターの指示でオレ達の後をつけて来ていた事になる。そうなると場所を変えても無駄じゃないかな?」
ゴーンゴーンゴーン
今日も19時になると同時にイベントスタートの鐘が鳴った。
「グリーン…今日はここで頑張ろう。」
「そうね…今更ね、やってやるわよ。天より来たれし光の化身…建御雷神よ…我に眩い光を与えたまえ…サンダーボルト!」
隣に座るグリーンがログイン早々、いきなり電撃魔法を繰り出す。
めずらしく開始直後にAランクモンスター”ポイズンワーム”が目の前に出現したのだから当然なのだが、鬼気迫る雰囲気を感じる。
バリバリバリ!
グリーンの放った稲妻により、ポイズンワームは崩れ落ちた。
「グリーンさん、凄い!」
ムーンさんが感嘆の声を上げる。
ムーンさんがこのギルドに入ったのは最近。彼女のおかげでギルドの雰囲気は格段に上がった。
初心者であるムーンさんは、オレ達が気にも止めない事に仰天し、喜びの声を上げる。おそらく、オンラインゲームも初心者なのだろう。オレ達が当たり前のように使っているネット用語も通じない。
いちいち説明するのは面倒に思う部分もあったが、ムーンさんが喜ぶ姿を見ると…面倒どころか、もっと教えたいとさえ思った。
それはオレだけでなくグリーンも思っている。実際に同じ部屋で会話しながらゲームをしているのだから間違いない。
ウインドさんもムーンさんに対し、一生懸命に指導している事が分かる。それはギルドマスターとしての責務では無く、個人的な感情では?と勘繰る部分もあった。
「グリーンさん、開始1分でAランクモンスターゲットっすね!凄いっす!」
ブロッサムさん、昨日のあの暴走は何だったのだろうか…音声入力で話す声は明らかに涙ぐんだ声だった。
ゲームシステムにより、声質は変わるがその辺は分かる。
そもそも…普段から言葉がおかしい時がある…情緒不安定な部分があるのだろうか。
「今日は来ていないようだな。」
ウインドさんが言うように筆頭ギルド"幻の兎"の姿は無かった。
「ウチらに勝てないと思ったのよ。」
ムーンさんが自慢げに言う。
「グリーンさんの詠唱速度、速いっすからねー。」
ブロッサムさんもグリーンの事を褒めた。
「ねぇ、ライト…どう思う?」
音声入力を切ったグリーンが話しかけて来た。
「あぁ…」
オレは一呼吸置くと、グリーンにだけ自分の考えを伝えた。
「きっと"幻の兎"はオレ達のギルドから目を離したんだよ。二日目を終えて、オレ達のギルド順位は30位…警戒する必要が無くなったのさ。」
「だよね…で、どうする気?」
「ウチのギルドは"楽しく遊ぶ"が一番だと思うんだ。オレは別にギルド順位を上げる事にこだわらない。あとはギルドマスターの考えに従うだけかな。」
「そうね…順位を上げたところで…ガチャを多く引けるだけだものね。」
グリーンはそう言ったが…
「うーん…やっぱりガチャチケ…たくさん欲しいわ。」
すぐに前言を撤廃した。
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