ビックバトル〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「え?ブロッサムさん、何をしているの??」
ギルドメンバーのブロッサムさんが急に飛び出したかと思ったら、崖に対してスキルを発動して…殴り壊した。
崩壊する崖。
その崖の上には筆頭ギルド"幻の兎"のメンバー達が立っていたから、その面々は崖と共に崩れ落ちる結果となる。
「すみません、ボク…どうしたら…」
ブロッサムさんが、困惑の声を上げる。
ここに来た時は居なかった”幻の兔”…いつの間に現れたのかしら?不思議に思っているとグリーンさんが近づいてきた。
「ブロッサムさんがミミズに攻撃しようとした瞬間に"幻の兎"の魔法使いが雷魔法で先に倒したのよ。私たちをつけて来たのかしらね?」
それだけでブロッサムさんが、あんなに怒る理由は分からないけど…その行動には正直、スカッとしたわ。
狩場を被せてくる"幻の兎"が気に入らない事は私も…おそらく他のメンバーも同じだと思う。
ギルドマスターであるウインドさんが怒りの声を上げる"幻の兎"のメンバーと対峙した。
「オレが、このギルドの代表のウインドです。」
「おたくのギルドは、なんて酷い事をするんだ。この件はゲーム運営に通報させてもらうぞ。」
ウインドさんは相手の様子を伺っているようで、謝ろうとしたブロッサムさんを片手で制した。
昨日もここに来ていた"幻の兎"の弓使いが口を開いた。
「少数同盟のクセに偉そうなんだよ。」
どうして私たちが”偉そう”になるのよ…
「え?オレ達の事を知っているのですか?」
ウインドさんが疑問を口にすると弓使いが答えた。
「あ、あぁ…この前のイベントで首位だったから、知っているだけだ。」
「なるほど…だからオレ達が行く場所に付いて来るのですね。」
ウインドさんがそう言うと、相手は少し言葉を詰まらせてから続けた。
「たまたま…同じ場所に来ただけだ。とにかく、この件は運営に訴えてやるからな。アカウント停止になるのが楽しみだ。」
運営に訴えると言われた事にカチンとした私は頭に血が昇り、文句を言おうとしたけどライトさんとグリーンさんに制された。ブロッサムさんは大きな体をピクリとも動かさず、何も言えずにいる。
「崖の側面にモンスターが居たんですよ。ブロッサムさんは、それを倒しただけです。」
「な…何だと!?そんな苦しい言い訳が通用する訳無いないだろ!」
"幻の兎"の弓使いがさらに怒り出した。周りに居るメンバーも同調し、それぞれが文句を言っている。
「そもそも崖を破壊してはならない。と言うルールは無い。」
そう伝えるウインドさんは堂々として…とても格好良く思えた。
「ふざけやがって…」
弓使いは、そう怒鳴ったけど…このゲームはプレイヤー同士で攻撃し合う事は出来ないので、戦闘にはならない。
「うわぁ!」
"幻の兎"のメンバーの数人が突然、大きな声を出した。
「何?何なの?」
叫ぶ人たちの目線の先である自分の背後を振り返ると、クネクネと体を揺らすポイズンワームの姿があった。
ブシューーー!
「きゃっ…毒吐き攻撃。」
固まっていた私達"永遠の風"と"幻の兎"、二つのギルドはまとめてポイズンワームの毒の直撃を受けてしまう。言い争いになっていたお陰で、とても回避する時間は無かった。
HPが一気に減り…さらに徐々に減っていく。
「くっ…視界も落ちるのね。」
さらに画面は、だんだんと黒い影が広がっていった。
「うぉーーー!!!」
この声は…ブロッサムさんね。
「武技…修羅の雷鳴!」
ズドドドーン!
画面いっぱいに広がった黒い影の中に、眩い光が輝き…ハッキリとは見えなかったけど、雷系の武具でブロッサムさんがAランクモンスターであるポイズンワームを倒した事が声と音から分かった。
助かったわ…ポイズンワームの急襲という危機をブロッサムさんの機転で乗り越える事が出来た。
機転というより、力技といった方が正確かもしれないわね。視界が完全に無くなる前にスキルを放ったんだわ。
「ハイヒール!」
私は限定杖、"星屑のワンド"を頭上へと掲げた。
みるみるうちに視界が広がる。
凄いわ…毒に対しても効果があるのね。
ウィンドさん、ブロッサムさん、グリーンさん、ライトさんを治療した所で私の魔力は尽きた。
すると…筆頭ギルド"幻の兎"の弓使いが騒ぎだす。
「毒消し薬が足りない!」
"幻の兎"のメンバー数人が…動けずに居る。HPも減り続けている筈。
まぁ…いい気味かな…
そう考えていた私に向かい、ウインドさんは魔力回復薬を手渡して来た。
「アイツらも治してやってくれないか?HPが0になるとマネーが半減してしまうからな。」
ウインドさんは…やっぱり優しいな。
私は素直に言う事を聞く事にして、魔力回復薬を使用する。
「ハイヒール!」
"幻の兎"のメンバー達を一人づつ治療していく。
グリーンさんとライトさんは先程の失敗を繰り返さない為に、辺りを警戒している。
全員を治療する為に、ギルド保有の魔力回復薬をさらに1本使ってしまったわ。
「…助かったよ。」
"幻の兎"の弓使いは礼を言うと、ギルドメンバーを集めた。
「オレ達は他の狩り場に行く…」
「あぁ…お互いのメリットの為だな。」
ウインドさんがそう言うと弓使いは、ゆっくりと言葉を続けた。
「ウチのギルドマスターの指示でお前達は見張られている。オレ達は去るが…また他の誰かが派遣されるだろう。」
「そうか…ギルドマスターのイブニングさんか…困った方だ。」
ため息交じりにウインドさんが言う。ウインドさんは”幻の兔”のギルドマスターを知っているのかしら?
「あ、そうだ…コレを。」
弓使いは、2本の魔法回復薬をウインドさんに渡し、去っていった。
サウザスの砂漠は再び、静寂に包まれた。
「ウインドさん、ありがとうっす。そして…ごめんなさい。ボク、イライラしちゃってて。」
「気にしないでくれ…ブロッサムさんがあの崖を破壊した時は…ちょっと笑ったよ。」
「そうそう、奴らの慌てふためいていた顔!ブロッサムさん、ナイスだった!」
「それより凄かったのは毒を喰らった状態からポイズンワームを倒した事よ!」
ライトさんとグリーンさんも、ブロッサムさんを褒める。
「みんな…ありがとうっす。」
ブロッサムさんが声を震わせながら言う。
私は…ウインドさんに向かい伝えた。
「ブロッサムさんの為に、”幻の兔”と渡り合ったウインドさん…とっても格好良かったよ。」
現実世界では恥ずかしくて、とても言えないようなセリフ…どうしてゲーム内だと言えるのか不思議だったけど、私は素直に自分の想いを口にする事が出来た。
だって…仲間の為に一生懸命に戦う姿は、本当に恰好良かったのだから…
「うん…ボクもウインドさんの事…すごくカッコイイと思ったっす。」
ブロッサンムさんも私に同調してくれる。
「そうだね、お疲れ様!」
ライトさんがウインドさんを労う。
「私…惚れちゃうかも♪」
グリーンさんが、いたずらっぽく言う。
すると…ウインドさんは動かず、言葉も発しない。
ん?どうしたんだろ?トイレにでも行っちゃったのかな?
ギルドメンバーも、まるで時間が止まったかのように誰も言葉を発しない。
「あ…いや…オレが立ち上げたギルドだから。」
やっとの事でウインドさんが口を開いた。
「オレが立ち上げたギルドだから、オレに責任があると言うか…」
「ブロッサムさんも…みんなも大切だし、絶対にオレが守らなくっちゃって思って…」
続けて言うウインドさんに対し、今度はギルドメンバー達が固まった。
「もう…ウインドさん、本当に私を惚れさす気?」
口火を切ったグリーンさんが大胆な事を言う。
「わ…わたしも惚れちゃうかも…」
え?なんて事を口走ってしまったの…私ったら。
「ボクも…惚れちゃうかも…っす。」
大きな図体をしたブロッサムさんまで”惚れちゃう宣言”をする。
「ウインドさん、モテモテだね!」
ライトさんは、そう言うと笑った。
グリーンさん、ブロッサムさんも笑い出したので、私も釣られて笑い出す。
サウザスの砂漠に4人の笑い声が広がった。
あれ?ウインドさん…また固まっちゃったわ。
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