ビックバトル〜風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
あれは…筆頭ギルド"幻の兎"の旗印。黒い旗の中心に真っ白な兎が描かれている。
オレが半年程所属していたギルドだ。
最初は楽しくやっていた…けど、ギルドマスターのイブニングさんが自分は女子高校生だと暴露した時から雰囲気が変わってしまう。
多くの高課金者が集まってきて…イン時間の少ない人や低課金者が追い出された。
オレも追い出される対象だったのかもしれないが…高課金者をあからさまに優遇する姿勢に嫌気がさして自ら脱退した。
その後"幻の兎"はどんどん順位を上げ、このゲームの筆頭ギルドとなった。
オレは"幻の兎"を脱退した後、理想のギルド"永遠の風"を作り、こんなに素晴らしい仲間に出会えたのだから、結果として良かったのだと思う。
今回のイベント『モンスター討伐ビッグバトル!』でサウザス砂漠をポイント稼ぎの場として選んだが、よりによってその筆頭ギルドと場所が被ってしまうとは…不運でしかない。
「ウインドさん、どうする?」
ライトさんに問いかけられる。
「狩り場が被ってしまったようですね…」
オレはモヤモヤとした気分に包まれながら答えたが、解決策を提案する事が出来なかった。
「あちらさん…どこか、他のエリアに行ってくれないかしら?」
「なんか…嫌な感じね。」
グリーンさんの言葉にムーンさんが怒りのアクションを取っている。ムーンさんの気持ちは分かるが、"幻の兎"の行動はルール違反では無い。
おそらく"幻の兎"は自分達の狩り場を他ギルドに譲る事はしないだろう。なんせ自分達に自信があるから…逆に他ギルドに対して、他に移れと言うに違いない。
ウチみたいな少数ギルドが交渉など話にならない。
「うーん。」
腕を組みながら、少し考えを巡らしているとブロッサムさんが口を開いた。
「アイツらより早くモンスターを倒せば良いんすよ。」
あぁ、そうか…このゲームは早い者勝ちが鉄則だもんな。
「ブロッサムさん、いい事を言うわね!」
ムーンさんが褒めるとブロッサムさんが照れている。
大きな図体をしながら照れる姿は何か面白かった。
「あちらさんより、早く…強くだね。」
人数の多い"幻の兎"だが、全メンバーが集結している訳じゃなく10人程がここに来ているようで、勝機はある。オレはそう言うと、さっき弓を放った奴らを睨みつけた。
「デザートラビットとかのCランク以下のモンスターはアイツ達に任せて、雷に弱いここのAランクモンスター"ポイズンワーム"討伐に集中するのはどうだろうか?」
ライトさんが提案する。
「それ、いいね…すぐに雷魔法を放てるように準備しておくわ。」
「分かったっす、ボクも頑張るっす。」
雷系の攻撃を得意とするグリーンさんとブロッサムさんが身構える。
ライトさんとムーンさんは、Cランク以下のモンスターを倒すフリを続けた。あわよくば倒そうとするが"幻の兎"に先を越される展開が続く。
"目が良い"のを買われたオレはポイズンワームの出現を見逃すまいと集中する。
「やっぱり、待つと…長いわね。」
グリーンさんがそう言った時、砂漠の地面が波打ち始めた。
「来た!」
オレが言うとグリーンさんは、すでに呪文の詠唱を始めたいた。
「天より来たれし光の化身…建御雷神よ…我に眩い光を与えたまえ…サンダーボルト!」
砂漠の砂の中から姿を現したポイズンワーム。
「うわぁ〜」
その姿を見たムーンさんが声を上げた。
ウネウネと体をくねらす手足の無いモンスター、それがポイズンワームだ。得意な攻撃は毒吐きと、体当たり。
その毒は強烈な上、その皮膚は剣が通りにくい為に倒すのに時間を要する。
が…
バリバリバリッ
グリーンさんの雷魔法…サンダーボルトが炸裂!
ポイズンワームは、その姿を地上に表すと同時にブスプスと煙を上げる事となった。
"幻の兎"の弓使いが放った弓が、すでに生き絶えているポイズンワームの体へと当たる。当然、彼等にはポイントは入らない。
「グリーンさん、強い!ボクの出番、無かったっすよ。」
ブロッサムさんが言ったように、グリーンさんの雷魔法は以前よりも火力を増している事が分かった。
「あー、なんか…グリーンさんがあのモンスターが苦手と言っていた理由が分かったわ。」
げんなりだとした顔をしながらムーンさんが言う。
「そうなのよ…あのモンスターは巨大ミミズにしか見えない。あぁ、口にするのもおぞましいわ!」
グリーンさんは、そう言いながら身震いした。
その後も何回かポイズンワームを討伐した。
グリーンさんが、まるで親の仇でも倒すかのように、一体一体に全力の雷魔法をぶつける。
筆頭ギルド"幻の兎"も一撃加えようとするが、まったく攻撃を当てる事が出来ずに苛立っている様子だ。
「あら、レベルが上がったわ。」
あっけらかんとした声をグリーンさんが上げる。
「グリーンさん、おめでとう。疲れたでしょ。」
「集中しないとだから、このイベント…疲れるわぁ。」
今日一日、グリーンさんに負担をかけてしまった事をオレは反省した。
「じゃぁ、また明日ね。」
イベント終了まで、まだ一時間弱あったがグリーンさんがお風呂に行くと言った事でオレ達のギルドは解散した。
うん…楽しく遊ぶのがオレが目指すギルド。上位に入賞したいからといって拘束するのは間違っている。そんな気楽なギルドだからこそ、メンバーも一緒に居てくれている筈だ。
にしても…筆頭ギルド"幻の兎"は最後まで、このサウザスの砂漠に居た。Aランクモンスターはすべてウチが倒し続けたのに、何故、彼等はこの場所にこだわったのだろうか?疑問を抱きつつ、薄手に変えた布団の中へと入った。
「風斗、おはよー。」
翌朝、背後から声をかけて来たのは尼子夕凪だった。
隣には当然のように三好月代の姿もある。
「あぁ…おはよう。」
そう挨拶を返しながら昨日の勉強会の別れ際に夕凪から言われた言葉を思い出す。
"風斗は私にとって必要な人…"
言葉は違ったけど、こういう風なニュアンスだった。
どういう意味だったのか…改めて考えるが美人だと話題になるような女子生徒がオレの事を好きになる筈がないと思い直し、前を向いて歩く。
「ちょっと、せっかく夕凪が挨拶してあげたのに何、その態度は?」
何故か隣にいる三好が怒り出した。
「朝から不機嫌だな…カルシウムが足りてないんじゃないか?そうだ…三好、これから毎朝、牛乳を飲め。」
朝からこんなに饒舌に話す事が出来た自分に驚いた。
「風斗の態度が気に入らないから不機嫌になるのよ!」
「まぁまぁ、私の事はいいから…ね、月代。」
さらに怒り出す三好の事を尼子がなだめている。
頭をなでて…まるで小学生を相手にするかのような、なだめ方だ。
きっとオレがしたら、速攻で蹴りが飛んでくるだろう。
「ふわぁ〜。」
昨晩、夜更かしをしてしまったせいか、あくびが出てしまった。
「ふわぁ〜。」
すると隣を歩く三好と尼子もあくびをした。
「もう、移っちゃったじゃない!」
三好が理不尽に怒る。
「どうせ、遅くまで動画投稿サイトでも見てたんだろ。」
オレが言うと三好は反論してきた。
「違うわよ…ちょっと遊んでただけよ。」
三好がそう言うと尼子も同じような事を言う。
「私も…ちょっと夜更かしして遊んじゃったわ。」
うーん、毎晩オンラインゲームしてるなんて言ったら根暗だのなんだの言われるだろうな。
3人で目を合わすも、それ以上の事はお互いに何も言わずに歩いた。
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