表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】風と月の永遠~サウザントフェアリー  作者: あんそに


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/117

勉強会~夕凪

◇登場人物◇


ギルド”永遠の風”メンバー


一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生

三好月代~ムーン  女子高校生

佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生


ギルド”幻の兔”メンバー


尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生

ふふふ…目を背けちゃって、風斗(ふうと)ってば可愛いな。


勿論、月代(つきよ)がこの勉強会の事を楽しみにしていたなんて嘘。

直前まで、駄々をこねていたわ。


勿論、私がこの勉強会の事を楽しみししていたのは本当。

だって、この日が未来への第一歩となる大切な一日なんだから。


私はニヤけてしまいそうになる顔を必死に(こら)えた。


「もどり〜。」

戻ってきた月代の手にはポテトチップスがあった。

お皿に出さず、豪快にパーティ空けをするのが月代らしい。


「さて、続けましょうか。」

ついさっき、中学2年生の教科書からやり直しと言われ、不貞腐れていたとは思えない立ち直りの早さ。

この切り替えの早さが月代の魅力であり、私が好きなところ。


「ポテトチップスの力…凄いな。」

風斗が感心したような、呆れたような表情をしている。


まぁ、確かに立ち直りのきっかけはポテトチップスだったわね。

でも…それは単なるスイッチ。

風斗は月代の事が見えなくなっちゃったのね。ちゃんと見えるようにしてあげないと…私が。


「だから…ここは、この式で…こうするんだよ。」

「えー、どうしてこの式を使うのよ?」


「それを説明するには中学1年生まで戻るぞ。」

「それは勘弁…」

風斗と月代が眉間にシワを寄せながら勉強している。

にしても…風斗って、教えるのが上手いわね。月代も素直に頑張っているわ。


私も自分の勉強をする…フリをして、風斗と月代の言動を観察している。一挙手一投足、見逃す訳にはいかない。せっかく手に入れたチャンスなんだから。


「ふぅ…ちょっと休憩にしようか。」

風斗は、そう言うと外の空気を吸いにベランダへと出ていった。


月代は、まだ中学校の時の教科書と睨めっこをしている。

「月代、いったん頭を休めて。」


ほんと、夢中になると止まらないんだから。

この一生懸命さで、どうして成績が悪いのか謎だわ。


名残惜しそうに教科書を閉じた月代に向かい言う。

「そういえば…さっき、風斗が月代の事を褒めていたわよ。」

「え?風斗が私を褒める?」

うん…嘘だけど、月代…そんなに驚くところ?


「すごく頑張ってるって。」

「あー、そこね。」

おかしいわね…"頑張り"は月代の代名詞。そこを褒められると喜ぶと思ったけど…動じないわ。


「それにしても風斗は、教えるのが上手いわね。」

「そうね、中学校の時の教科書を持ってこい。と言われた時はムカッとしたけど、確かに…正解だったわ。」

私の前だと素直なのに…どうやったら風斗の前でも素直になれるのかしら?


「ただいまー。」

風斗が部屋に戻ってきた…”ただいま”って、まるで家に帰ってきた主人のようね。

「おかえり。」

月代が、”おかえり”って…あぁ、風斗、月代、そして私、3人での夢の結婚生活を、ついつい妄想してしまってゾクゾクしてしまうわ。


夕凪(ゆうな)、何をニヤニヤしてるの?」

「あ、ちょっと…ね。」

ついにニヤケ顔を晒してしまったようね、慌てて苦笑いで誤魔化した。


「まったく…夕凪は昔から、ちょっと変わった所があるからな。」

「風斗よりマシでしょ!」

風斗の発言に対して、月代が文句を言う。

月代が私を庇うのも嬉しかったけど、風斗が私の”昔”を覚えていてくれている事も嬉しかった。


「風斗、私の”昔”を覚えてくれていたのね。」

素直に自分の気持ちを打ち明け、風斗をじっと見つめる。堂々とニヤニヤ顔をしながら…

「ちょっと夕凪、何を言ってるの?…風斗に”変わった所がある”って言われてるのよ。」

そう言う月代をチラリと見た後、私は思わずクスクスと笑ってしまった。


風斗が手を伸ばし、月代の前に置かれた教科書を開いた。

「ほら、遊んでないで、勉強に戻るぞ。」

話を切り替えようとしたのかな?風斗は心なしか焦っているように見える。


「分かったわよ…けど、なんか釈然としないわねぇ」

そう言いながら、月代は教科書を眺め出した。

「えーっと…ここからだったわね。」

文句を言いながらも集中して数学に取り組む月代。

ピカイチの集中力を持つ月代…何故、成績が悪いのかと思い返すと、一つ心当たりがあった。


月代は記憶力が悪い。昔、遊びに行った場所。一緒に遊んだ事。全然、覚えていない。私が大事に記憶している事を、すっかり忘れてしまっている。

その事を知ると、私は凄く寂しくなってしまう。


うん、間違いない。

月代の成績が上がらないのは記憶力が悪いせいだわ。


小学2年生の時、あの公園で私がウサギのぬいぐるみを無くしてしまった。そしたら月代と風斗が一生懸命に探してくれて、月代が見つけてくれた。嬉しかったなー。

この前、この話したら全然覚えていないって…一体どういう事よ。

月代の事は大好きだけど記憶力の無さだけは、どうにかして欲しいところだわ。


「あー、分かったわ!」

嬉しそうに声を上げて喜んでいる月代。どうやら、数学の問題が一つ解けた様子。

「そうか…良かった。」

喜ぶ月代に対して風斗も笑顔で応えた。

あら?風斗…月代が喜んだ姿に笑ったわ…そう喜んだ私だったけど3秒後に落胆する事になる。


「まぁ、中学校の問題だからな。」

まったく…風斗が余計な事を言うから、せっかくご機嫌になった月代が、怒りに堪えているのが分かる。


「月代、これは大きな一歩よ…基礎が身につけば、後は楽勝よ!」

私は月代のご機嫌を取る為、風斗のフォローの為、手を叩きながら大きめの声を出した。

世話が焼ける二人ね…ほんと私が居ないとダメなんだから。


「あ、もうこんな時間か。」

風斗が壁に掛かっている時計を見ながら言った。何?逃げようとしているのかしら。


「時間経つの…早かったわねぇ。」

そう言いながら月代はグッと背伸びをしている。確かに…いつの間にこんな時間になったのかしら。


「続きは、来週の日曜日にしましょ。」

疲れていそうな二人に私はそう声をかけた。

こんな楽しい時間、今日で最後なんてあり得ないわ。毎週、続けたい…いえ、だんだんと間隔を短くして…いずれは毎日。あぁ…なんて幸せなのかしら。


「え?来週も?」

風斗が不満そうに言うと、月代の顔が曇った。


「いいわよ…どうせ私は落第して高校を追い出されるのよ。」

月代が珍しくマイナス思考な事を言う…けど、これは風斗へのけん制ね。


案の定、風斗はバツが悪そうな顔をした。

本当、分かりやすいわね。


「まぁ、来週も暇だし…勉強会に参加してやってもいいぞ。」

月代の事を心配する気持ちがあった様子。でも、素直に言えないから”暇だから”って言うのね。風斗…その素直じゃない所も可愛いわぁ。

私は、風斗に抱きつきたい衝動に駆られたけどグッと我慢した。


「中途半端なのは嫌いだから…風斗、来週も頼むわ。」

流石、月代。風斗にお願いをしているのに、まったく頭を下げている感じがしないわ。


「じゃぁ、今日は帰るな。」

風斗は立ち上がると、私も帰宅する旨を月代に伝えた。


「うん、今日はありがとね。」

月代は私に向かって満面の笑みを浮かべる。

多分、”ありがとう”という言葉は風斗にも言っているのだと思うけど、あきらかに私だけを見ている。

今日で、”風斗と月代を昔みたいに仲良くさせる”という私のミッションは失敗したようだわ。

まぁ、ちょっと厳しかったわね…来週のチャンスに繋げたから、また頑張ろ。


そう心に誓い、月代の家を出た。

風斗と二人きりになるけど…それは、この月代の家の前まで。左右に分かれて家路に付くことになる。

「風斗…私、月代と一緒に高校を卒業したいの。お願い、力を貸して。」

少し目に涙を溜めてそう訴える。これは、半分は演技で半分は本気。


「あ…あぁ。三好が退学になったら、目覚めが悪いからな。」

「ふふふ…」

あ、ダメ…思わずニヤけてしまったわ。風斗が不思議そうに私の顔を見ている。


「私…月代の事が大事だけど、風斗の事も大事なの。」

別れ際のこのタイミングで、私は勝負に出た。そう、一日一緒に過ごした今が一番大事。


「え?どういう事?」

風斗が焦ったような表情をしながら、私に問いかける。

けど…まだダメ。


「そうね…必要な人…という事よ。」

私は少しおどけたような表情で、風斗にそう伝えた。

ここで、風斗の事が好きとか言ってはならない。まだ…思わせぶりな言葉で濁しておくのが賢明。


「三好にとって…必要って事なのか?」

風斗が言ったセリフを考える…

うーん、このままだと月代の学力向上に必要な風斗。って事になってしまうわね。


「私にとって…だよ。」

勘違いさせて幻滅させない為に、ちょっと踏み込んでみた。


「え?」

風斗の顔がみるみる赤くなっていくのが分かる…けど、焦ってはダメ。

私の最終目標は、風斗に私を振り向かせるのじゃなく、私と月代の二人を同時に愛してもらう事なのだから。


「じゃぁ…また、明日ね。」

ゆっくりと歩き出した後…一回振り向いて、小さく手を振る。


「あぁ…また。」

風斗の返事に、少し手ごたえを感じた。


「さてと…」

帰宅した私は、早々にノートPCを開いた。


「みんな…分かってるわね。ギルド”永遠の風”を潰すわよ。」

~~~~~~~


読んでいただきありがとうございます!

良かったら、ブックマーク、いいね、⭐︎評価お願いします!


誤字・脱字等、ありましたら、是非ご指摘くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ