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【完結】風と月の永遠~サウザントフェアリー  作者: あんそに


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勉強会〜風斗

◇登場人物◇


ギルド”永遠の風”メンバー


一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生

三好月代~ムーン  女子高校生

佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生


ギルド”幻の兔”メンバー


尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生

あれから10分くらい経っただろうか?

10分という時間は幼馴染の三好月代(みよしつきよ)の家の前に立ってから経過した時間だ。

何故、素直に言われた時間にここまでやってきたのだろうか…近所だからすぐなのだが、それでも自分で自分の行動を不思議に思う。


そう考えていた時、三好の家の玄関から尼子夕凪(あまこゆうな)が飛び出てきた。

「ちゃんと来たのね、偉いぞ風斗(ふうと)。さぁ入って。」


三好と同じく幼馴染の尼子は、満面の笑みを浮かべつつ、まるで自分の家に招き入れるかのようにオレの腕を掴むと連れて入った。

体育祭の時に保健室で尼子から"三好との勉強会"を提案された時は何の冗談かと思ったが、本気だったようで昨日、集合時間まで設定されてしまった。

尼子は、こんなに強引な子では無かったと思うのだが…しばらく話をしていない間に人格が変わったようだ。


「お、お邪魔します…」

一応、常識のあるオレは玄関に入ると挨拶をした。が…誰かに聞こえるような声量だったかは自信がない。


「今日、おばさんもおじさんも居ないんだって。」

夕凪が説明する…なんだ挨拶して損したな。


二階へと上がり、三好の部屋へと入った。

あぁ…そういえばこんな部屋だったな。

こじんまりとした部屋はあまり物が無く、整然としていた。昔は…もっと物が溢れていた気がする…

薄い紫色をしたカーテンが風になびくと、よく分からないが良い香りが漂った。

「本当に来たのね…いらっしゃい。」

嫌がっているのか歓迎しているのか分からない台詞をこの部屋の主である三好が言い放った。


「あぁ、来てやったぞ。」

オレも負けずに憎まれ口を叩く。


「もう…相変わらず仲が良いわね!さぁ、座って。」

そう言いながら尼子はオレの背中を押し、三好の対面へと誘導した。


「どこをどう見たら仲良く見えたのよ。」

三好はギロリとオレを睨みながら言い、言い終えると目を逸らした。


「まぁまぁ、久しぶりに3人で集まったんだし楽しくやりましょうよ。」

尼子はオレと三好の間に座ると、そう言いながら三好の顔を覗き込んだ。


「こいつが…暗いから雰囲気が悪くなるのよ。」

「暗くて悪かったな。これがオレなんだから仕方ないだろ。」

三好の口撃に反論する。


「昔は、もうちょっとマシだったんじゃない!?」

「お前こそ、昔はもうちょっと可愛げがあったんじゃないか?」

さらに三好が文句を言ってきたので、オレはイラッとする。


三好と目と目を合わせて言い合ったのは久しぶりなような…


「ちょっと…ヤメてよ。」

そう言い、オレと三好の間に手を伸ばした尼子を見ると目に涙を浮かべ、今にも泣き出しそうだった。え?なんで泣きそうになっているんだ?この子は?


「あ、ごめん…夕凪。」

三好が尼子に謝る。この二人は、本当、仲が良いな…まったく違う性格なのに不思議に思う。


「ほら、あんたも謝って。」

「え?オレ?」

三好に促されて仕方なくオレも謝る。

「まぁ…悪かったな。」

何が悪かったのかは分からないが女子の涙には勝てる訳がなく、そう伝えた。


すると尼子は急に笑顔に変わる。

その豹変ぶりに驚くが…これが女子という人種なのだろう…と自分に言い聞かせた。


「早く…勉強、教えてよ。私、マジで困ってるの。」

三好が話題を変える。そして…珍しく下手(したて)に出てきた。

「苦手な科目とか…あるのか?」

「特に数学…」

問いかけると困った顔を見せながら、そう答えた三好。


「私も数学は苦手なのよ。」

勉強は出来る方である尼子だが数学は苦手なようで、そう話す。

そしてオレは比較的、数学は得意な方。まぁ、ちょっと見てみるか。


いくつか問題文を読み上げ、簡単な質問をする。

「お前…全然、分かっていないな。」

「だから、数学は苦手だって言っているでしょ。」


「いや、苦手とかいうレベルでは…お前、どうやって高校に受かったんだ?」

「推薦入試よ…小論文と面接。」


三好の返答にオレはウチの高校、大丈夫か?と疑問を抱いた。


「風斗って、ボーっとしているのに勉強できるよね?魔法でも使ってるんじゃないの?」

「いや、魔法って…ゲームじゃないんだから。」

訳の分からない事を言う三好にオレが言葉を返す。三好はサウンザントフェアリーの事を知らないのだから、魔法=ゲームという発想を押し付けるのは違ったか。


「私も不思議に思うのよ…どうして風斗は真面目に授業を聞いていないのに、成績が良いの?」

オレの顔を覗き込みながら問いかける尼子。


「いや、先生は教科書に書いている事を言っているだけだから。あらかじめ読んで、分からない事だけ先生の言う事を聞いているんだよ。」


驚いた表情を向ける三好。


「私にはマネできない芸当だわ。」

「私も無理ね…」

三好と共に尼子も頷いた。

誰もが思っている事だと考えていたが、三好はともかく尼子までが反論した事に驚いた。


「尼子はともかく、三好…お前は基礎がまったく出来ていないんだよ。」

オレはそう伝えると、手を伸ばして三好の前に置かれていた問題集を閉じた。


「三好…中学校の時の教科書を持って来い。」

「え?中学校の時の?」

三好は驚きつつも、おとなしく中3数学という教科書を探し出してきた。


「私、お茶入れてくるね。」

「夕凪、ありがとう。」

尼子は、お茶を入れてくると言い席を立った。一体、誰の家なのかと不思議に感じる。


尼子が階段を走り降りる足音が聞こえる。


「お前等、本当、仲が良いな。」

「そう?昔は、風斗も同じような感じだったわよ。」

残された三好に問いかけると、予想外の答えが返ってきた。そうか?幼馴染だったとはいえ、そんなに仲が良かったかな?と思い返す。

が、ボヤっとした記憶が残るだけだった。


「鬼ごっこした時、ずっと夕凪が鬼で…泣きそうになっていた夕凪に風斗はわざと捕まっていたじゃない。」

「そんな…事あったかなぁ。」

鬼ごっこをした記憶はあるが…尼子の顔を思い出すと、そういえば泣き顔しか出てこない。


すると、尼子が戻ってきた。

「はーい、お茶ですよー。」

にこやかな笑顔を向けながら、持ってきたグラスを机の上に置いていくと、カランッと氷がグラスのフチに当たる音が鳴った。

さっき思い出した尼子の泣き顔と、今、目の前に居る尼子とのギャップに困惑する。


改めて尼子の顔を見るが、わざと鬼を代わってあげた事を思い出す事は出来なかった。


「さてと…この公式は分かるか?」

中学3年生の教科書を使い、どこまで理解しているかの確認作業をしていく。

が…ダメだった…三好は半分も理解していない。


「何よ…仕方ないじゃない。風斗と私では頭の出来が違うのよ。」

中学2年生の教科書を持って来いと、ため息交じりに伝えた所、三好はついに投げやりな態度となった。


「ちょっと…トイレ。」

不機嫌そうな顔をしながら三好は席を離れる。


「はぁ…なんか疲れる。」

そう言いながら尼子が持ってきてくれたお茶に手を伸ばした。


尼子もお茶を飲みながら、ゆっくりと話出す。

「月代ちゃんは、風斗の前だと素直になれないのよ。風斗が来る前までは、今日の勉強会をとっても楽しみにしてたんだから。」

「え?三好がこの勉強会を楽しみにしていた?」

心の中の驚きを、思わず口に出してしまった。


尼子は…机に肘をつき、手に顔を乗せてオレに顔を近づける。

「そうよ、ちなみに私も楽しみにしてたんだからね。」


「お、おぅ…」

じっとオレの目を見ながら話す尼子と、目を合わし続ける事が出来ず、オレは目を逸らしながら、そう答えた。

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