念願〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 臨時女将
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
佐竹綾音~サウンド。女子高校生
尼子大輔~ザ・ビック 風の将軍。男子大学生
ついにウィンドさんとお付き合いする事になった。
うれしいな…
たけど…なんか違うのよねぇ〜
最初はとても満足だったけど、冷静になればなる程、現実世界の話なのかどうか分からなくなり…ついにはウィンドさんって本当に実在するのよね?
なんていう疑問まで頭を巡るようになっちゃった。
「うーん…」
「どうしたの?月代ちゃん?うなってるわよ。おかしな物でも食べた?」
「えーっと。まぁ、たいした事ないわ。」
と、夕凪には言ったけど、本当はたいした話。
なんたって人生で初めて彼氏が出来たのだから。
オンラインゲームの中でだけと…
親友の夕凪には、真っ先に言いたい所だけど…相手が夕凪が大嫌いなギルド"永遠の風"のマスター、ウィンドさんなのだから、言える訳が無いわ。
「それで…運営から来た人が凄かったのよ!もう私のステータスが爆上がりしちゃってね。って月代ちゃん、ちゃんと聞いてる?」
「あ、うん…天使の人だよね?」
「ん?何?天使って?」
「あ、違う?ごめん…私の勘違いみたい。」
レインさんが職業『天使』って言ってたから、てっきり運営から来た人はみんな天使職なのかと思ったわ。
「えーっと…運営から来た人っていうのは、上位ギルドにだけ派遣されたみたいなの。だから、月代ちゃんが所属しているギルドには来なかったのだと思う。」
「あ、そうね…とにかく、早く正常な状態になると良いよね〜。』
あぶなっ!私のギルドにも運営が来た事がバレたら
、私が上位ギルドに所属しているってバレちゃうじゃない。
夕凪はともかく…イブニング様はホント怖いんたから…
レインさんと夕凪のギルドに来た人の職業が違って良かったわぁ。
でも…ちょっと気になるわね?
「で、筆頭ギルドのところに来た運営の人って、職業は何だったの?』
「え?職業?そんなの聞かなかったわ。運営に職業ってあるのかしら?』
もしかして…レインさんが語った天使って、あの人が適当に名乗っただけ??
「おはよう風斗ー。」
「お、おぅ。」
教室に入ると、座っていた風斗に挨拶をする夕凪。
学校一の美人とも噂される夕凪から挨拶をされた風斗はバツが悪そうに周りを見渡しながら挨拶を返した。
なによ、せっかく夕凪から挨拶をしてもらっているのに、覇気がないわねぇ。
そこは『夕凪様、光栄です。おはようございます!』てしょ。
って、そんな事を言ったら尼子夕凪親衛隊みたいね。
うん、やっぱり気持ち悪いわ…風斗は、お、おぅ…で十分ね。
「じゃぁね、月代ちゃん…頑張って勉強するのよー。」
「う、うん。」
ちょっと、大きな声でそんな事を言わないでよ、私があまり勉強出来ない事、バレちゃうじゃないの。
って…一学年もこの三学期で終わり。
このクラスのみんなには、すっかりバレてるわね。
「大丈夫…みんな知ってるから。」
「うるさいわねー。」
まったく…この風斗って奴は。
どうして私が懸念した事を知っているのよ。エスパーなの?私の心が読めるの?
「そんなに動揺してキョロキョロと周りを見たら誰だってお前が考えている事くらい分かるって。」
「違いますー、風斗と仲良さそうに思われるのが嫌なんですー。」
キー!なんて憎たらしいのかしら、思わず正解を否定しちゃったじゃないの。
けど、合ってるから!風斗と仲良さそうに見られるのが嫌って事は本当だから!
「あー、そうですか。」
「そうなんですー。」
まったく…なんで三学期まで近くの席なのよ。
一学期、二学期と連続で隣の席で…さらにこの三学期まで斜め隣の席なんて、天使様を恨むわ。
「そういえば…お前が所属するギルドに運営の人って来た?」
ん?珍しいわね…風斗からサウザントフェアリーの話を切り出すなんて。
来たと言えば、私が上位ギルドに所属。さらには『永遠の風』に所属しているって事までバレかねないわ。
まぉ、ここは…誤魔化しとこ。
「学校は勉強する所よ。そんなゲームの話なんてしないわ。」
「そうか…悪かったな。そうだな…お前はしっかり勉強しないとな。」
イチイチ、イラッとさせてくるわね…この男は。
まぁ、いいわ…こんなの相手してないで、ちゃんと勉強しなくっちゃ。 目指せ進級よ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
家に帰り、早々にPCの電源を入れる。
よし、まだウィンドさんしか来てない。
「ウィンドさん、こんにちは。」
「ムーンさん、こんにちは。」
普通に挨拶を交わすけど、内心はドキドキしている。
なんせ…相手は彼氏。
問題は現実世界で会った事が無いって事だけ。
だけど…それが大きいのよねぇ。
あぁ…ウィンドさん、どんな顔しているんだろ?
本当の声はどんなのだろう?
私の事…ムーンでは無い本当の姿を見ても好きでいてくれるかな。
ピロンッ
ん?ダイレクトメッセージ?
ウィンドさんからね。
普通に会話をするとギルドメンバーにも分かってしまう。 何?他のメンバーには聞かれたくない会話?
ドキドキしながら、メールボックスの封を開ける。
『あの…思い切って言いますが…リアルで会って貰えませんか?」
きたー!
どうしよ…私も会いたいけど、いざとなると躊躇するわ。
『私、ムーンみたいに可愛くなくって。』
『それなら、俺もウィンドみたいにカッコよく無いから…』
ここは…私も思い切らないとね、
いつまでも、モヤモヤした気持ちのままで居られないわ。
『じゃぁ…会います。』
『ありがとう、じゃぁ、次の土曜日に名古屋駅の時計台の前でどうかな?』
『はい、分かりました。分かりやすいように…紫のカバンを持って行きますね。』
『じゃぁ…俺はお気に入りの緑色の帽子を被っていくよ。』
緑色の帽子かー、そう言えば風斗のお気に入りも、緑色の帽子だったな。
『そう言えば、私の幼馴染も緑色の帽子がお気に入りなのですよ。』
あれ?返事が来なくなっちゃった。
とうしたのかな?
『実は俺の幼馴染のお気に入りカバンも紫色なんだ。』
そう、私のお気に入りの紫色のカバン。
誕生日にお母さんに買って貰ったカバン。
まさかね…
『えっとね…私にはもう一人幼馴染が居てね…とても可愛い子なの。』
夕凪の事…知らないわよね。
『俺にも美人の幼馴染が居るんだ…おかげで友達から羨ましがられている。』
偶然よね…美人の幼馴染くらい誰にでも居るよね。
キーボードに入力する文字が浮かばない。
『その紫色のカバンを持つ俺の幼馴染は…とても元気な子なんだ。』
ウィンドさんからのメッセージ。
あれ?なんだろう…胸が苦しくなってきた。
『緑色の帽子が好きな私の幼馴染は…とても頭が良いの。だから、私はいつも嫉妬しちゃうの。』
『その幼馴染二人とは、よく近所の公園で遊んだんだ。』
『私も…幼馴染二人と近所の公園で遊んでたわ。』
『すべり台がね…ピノキオの鼻になっているんだよ。』
『うん…知ってる。』
『じゃぁ…今からそこで。』
『うん。』
PCを開いたまま、私は家を飛び出した。
ドキドキする鼓動を必死に止めようと右手で胸を押さえる。
足の怪我があるから全力では走れない。
でも…全力で走りたい。
公園はすぐ近くだから、そんなに慌てなくても良いのに。
「風斗!」
私は緑色の帽子被った風斗の姿を公園内に見つけ、叫んだ。
「三好!」
そう呼ばれて…ゆっくりと風斗へと近づいた。
これは…確定ね…やっと会えたウィンドさんが風斗か…
「えっと…ウィンドさん?」
「あぁ…俺だ、ムーンさん。」
しばらく沈黙が流れる。
「あの…朝はゴメン…なんか嫌味な感じな事を言ってしまって。」
朝?あぁ、私が勉強できない事、みんな知ってるのくだりか。
「こちらこそ…風斗と仲良く見られるのが嫌だって言ってゴメンナサイ。」
「いや、そんな…謝らなくていいよ。」
うん…風斗が風斗じゃないわ。
完全にウィンドさんね…この態度は。
「実は…もしかしたら三好がムーンさんかも?って…思った事があったんだ。」
「え?そうなの?私…全然、気づかなかったわ。」
「そうか…」
流石、風斗ね…でも、毎日のように話をしていたのだから、少しは感づくものなのかも。
「えっと…その…リアルでは、どうするの?」
風斗は…私と付き合うなんて嫌よね?
「どうするって…俺は変わらない。けど、三好はどうなんだ?」
「私も…変わらない。けど、ちゃんと言って欲しいかな。」
私が好きなのはウィンドさん…だから、ウジウジした態度の風斗なら…お断り。
昔から知ってる風斗なら…良いかな。
「あぁ、そうだな…ムーンさん、いや…三好月代、俺と付き合ってくれ。」
賢くって頼りになるあの風斗なら…
「ありがとう風斗…喜んで。」
私の右足は自然と前へと出て…風斗の胸へと飛び込んだ。
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読んでいただきありがとうございます!
ついに二人はお互いの正体を知り、このお話も最終話が近づいて来ました。
最後までお付き合いいただけると幸いです。