洞窟にて〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「半信半疑でここまで来たけど…これは、まるで隠し洞窟ね。」
グリーンさんが、みんなの心を代表するかのように言う。
崖の上から見た滝の裏側に、まさかこんな洞窟があったなんて。
見つけたウィンドさん、ほんと凄いわ。
「近くに来るまで分からなかったよ…ウインドさんには、あの位置からこの洞窟が見えたのかい?」
ライトさんが不思議そうに聞く。
「うーん、逆に斜め上からだったから分かったのかも。みんな時間ある?入ってみようか?」
確かに、真正面からだと絶対に分からなかったわね。
「ボクは大丈夫っす。」
「私も大丈夫。」
ブロッサムさんと私が賛同すると、グリーンさんとライトさんも頷いた。
「じゃぁ、いつもの陣形で進もう。」
そう言ったウインドさんとブロッサムさんが一列目となり、滝の横側からゆっくりと洞窟内へと入って行った。
「たいへん、たいへん。」
洞窟に入ってすぐに案内役のフェアリーが騒ぎ始める。
「これは…強いモンスターが近いって事?」
私は不安な気持ちを言葉にした。
「どうする?一旦、撤退する?」
グリーンさんが冷静に撤退を口にすると、ウインドさんが答えた。
「いや、探索を続けよう。いざとなればテレポートのアイテムがある。貴重だから使いたくないけど…ライトさん、無理と判断したら躊躇せずに使ってください。」
「あぁ、分かった。すぐに使えるように準備しておく。」
最後列を歩くライトさんの返事に緊張感が増す。
ゆっくりと行軍を再開。
「来たっす!」
前衛を歩くブロッサムさんが声を上げる。
目の前に現れたのは、大きなトカゲ型のモンスター。
「なんだ?このモンスターは…見た事も聞いた事も無い。」
ライトさんも知らないモンスターの出現に私は思わずPCの前で身震いした。
「サーチ!」
グリーンさんが魔法でモンスターの分析を始める。
モンスター名…アースドラゴン
HP…10,000
MP…3,000
攻撃力…不明
防御力…不明
魔力…不明
「え?ドラゴン?」
いくらゲーム知識が乏しい私でもドラゴンというモンスターが強い事は分かる。
「HP1万って…オレの10倍…」
ライトさんが驚きの声を上げた。
「一度、攻撃してみよう!」
そう叫ぶとウインドさんがアースドラゴンに向けて走り始めた。
「行くっす!」
続けてブロッサムさんが走り出す。
ライトさんは私とグリーンさんの前へと立ち、剣を構えた。
「ぐぉおおぉぉぉ〜。」
アースドラゴンは叫び声を上げる。
まるで『さぁ、かかって来い。』と言っているかのよう。
「サイクロンソード!」
「武技…爆裂連打!」
左右に分かれたウインドさんとブロッサムさんが、それぞれの得意スキルを放った。
挟み込むような形でモンスターを攻撃する。
ドドドドーン!
激しい攻撃音が鳴り響く。
が…「え?全然効いてない!?」
アースドラゴンのHPは、ほとんど減っていなかった。
「ウロコが硬いのね…じゃぁ、私が!!」
バチバチバチッ!
グリーンさんが杖をかざすと洞窟内に電撃が走る。
「雷魔法…サンダーボルト!」
杖から放たれた雷魔法がアースドラゴンを直撃した。
「ぐぁぁ〜。」
ドラゴンは雄叫びを上げるとHPゲージを少し減らした。
「あの魔法で、これだけかよ。」
ライトさんが声を出す。
「厳しいっすね、このまま後ずさりしながら撤退っすかね?」
「あぁ、無理そうだな…ゆっくり後退しよう。」
ブロッサムさんの提案にウインドさんが賛同した。
すると…今まで静かだったアースドラゴンがその巨大な4本の足を上下に動かし始めた。
私は、防御コマンドを入力して身構える。
「何?何なのコレ!?」
徐々に地面が揺れ…立っている事が難しくなる。
ドドンドドンドドン…
「これは…アースクエイク!」
ライトさんが口にした途端に地面が大きく揺れた。
私が操作するムーンは転倒…どうしたら良いのか分からない。
「うわぁ。」
ウインドさん、ブロッサムさん…他のギルドメンバーも転倒して行動不能に陥いる。
「ぐわぁぁぁ〜。」
アースドラゴンは一声、そう叫ぶと体を回転させ…尻尾を振り回した。
ドドドドーン!
「キャッ!」
尻尾で攻撃された私は、吹き飛ばされて壁に激突させられた。
HPゲージがみるみる下がる。
思わず、PCの画面から目を逸らす。
ゆっくりと画面に目を戻すと…
なんとかHPが0になる前に止まった。
「みんなは?」
私は焦りながら周囲を見渡した。
このゲームはHPが0になると1時間の操作不能状態となり、さらに所持しているマネーも半分になるというペナルティが課せられてしまう。
「ライトさん!テレポートアイテムを!」
ウインドさんが叫んだ。
すぐ近くで倒れているライトさんが見えた。
「まずい…混乱状態だわ。」
混乱状態となると、何を入力しても自分のキャラを思い通り動かせない。時には味方をも攻撃してしまう。
私は慌てて杖を掲げた。
「ハイヒール!」
新しく手に入れた杖、"星屑のワンド"が光輝く。まるで…妖精の森に光を取り戻した時に感じたような落ち着いた光。
その光は、ライトさんの体を包み込んだ。
「テレポート!」
私の回復魔法により混乱状態が解けたライトさんは左腕に装備していたテレポートの腕輪を使った。
目の前が真っ暗になったかと思った瞬間、次に目の前に現れたのはよく知っている街の姿だった。
「た、助かったわ…」
私は地面に座り込む。ムーンを動かすマウスを握る手は汗ばんでいた。
「ありがとう、ムーンさん。」
ウインドさんが私にお礼を伝えてくれた。
「ムーンさん、助かったよ。」
「ハイヒールは、混乱状態も治せるのね。」
「危なかったっす…ボク、HPが50しか残ってないや。」
ライトさん、グリーンさん、ブロッサムさんが私を取り囲んでいる。
あぁ、みんなの役に立てたのね。私はただ、それだけが嬉しかった。
「にしても、あんなに強いモンスターが居るなんて。あの場所には一体、何があるっすかね?」
「うーん、いずれあるイベントで出くわす事になりそうかな。」
ブロッサムさんの問いにライトさんが答えた。
「俺が無理にあの洞窟に入った為に、みんなを危険な目に合わせてしまった…すまない。」
ウインドさんが謝罪の言葉を述べる。
「みんな無事だったから良いじゃない。」
私は慌てて、ウインドさんをフォローした。
「そうよ、誰も反対しなかったから、今回の件は全員の意思であり全員の責任よ。ウィンドさん一人が責任を感じる必要は無いわ。」
流石グリーンさん…言葉に重みがあるわ。
「いずれ、あのアースドラゴンともう一度、戦う事になる筈。今回、手合わせ出来たメリットは大きいと思う。」
「そうっすね、事前に対策を考える事が出来るっすね。」
ライトさんとブロッサムさんが冷静に分析しているけど、一番の目的はウインドさんに負い目を背負わせない為だろう。
「みんな、ありがとう。」
ウインドさんが、みんなにお礼を伝えた。
前向きな言葉でウインドさんを励ますグリーンさん、ライトさん、ブロッサムさんも素敵だし、素直に謝罪を示す事が出来るウインドさんも素敵であり尊敬に値すると感じた。
私は…なかなか素直になれていないな。
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