事件発生〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 臨時女将
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
佐竹綾音~サウンド。女子高校生
尼子大輔~ザ・ビック 風の将軍。男子大学生
「え?運営さん?」
空から舞い降りた翼を持った女性は、自分の事をレインと名乗ると共に自らが運営であると伝えた。
「そう、運営側の人間…イレギュラーな事が起きちゃってるから上司に派遣されて来たの。」
「えーっ、そんな事あるのですね。」
ゲームに関しては無知な私は思わず大きめの声を上げた。
「なぁに、よくある事よ。」
「いやいや…珍しいっしょ。」」
明るく伝えるレインさんに対してウィンドさんがツッコミを入れる。
「実際、このキャラじゃないけど、私はプレイしているわよ…他のプレイヤーにバレないようにコッソリとね。」
「そうなのてすねー。」
運営側と言っても遊びたい人もいるのかな?それともテストプレイ的な感じかな?
疑問を残したけど、その事には触れずにジッとレインさんを見つめる。
「おいっ…お前!?何者だ!?」
ガオウの叫び声により、まったりとした空気からピンチだった現実に引き戻される。
そうだった…最悪の状況だった…
「えーっと…職業はねぇ、天使。名前はレインよ。」
「はぁ?天使だとぉ?」
あれ?運営って名乗っていた事をガオウには聞かれていなかったのかな?
にしても…天使なんて職業、あっても良いのかしら?
「えーっと、レインさん…あちらにはバレていない感じですか?」
「うん、さっきは回路を遮断して話してたから大丈夫よ…私の事は内緒ね。」
ウィンドさんの疑問にレインさんはよく分からない回答をする。
詳しく聞いたとしても、とても私には理解出来そうに無い。
とりあえず、ハッカー達にはレインさんが運営だという事はバレていないらしい。
「おいっ!ボク達が遊んでいたのにぃー、邪魔すんな!」
「お前等の方こそ、このゲームにとって邪魔な存在なんだよ!」
タンジュが文句の声を上げた事に対してウィンドさんが言い返した。
流石、ウィンドさんね!良い返しだわ。
「まぁ、いいじゃないか…獲物が増えただけだ。」
アランはそう言うと、両手を頭上に上げてマント達を飛ばした。
五体の空飛ぶマントが直線的に向かってくる。
「スキル…天使の応援!」
レインさんが聞いた事も無いスキルを発動すると、ムーンである私の体は光りだした。
「何コレ?」
「ムーンさん、障壁を。ウィンドさんは弓矢で応戦!」
「あ、はい!」
「はい、了解です!」
突然のレインさんの指示に驚きつつ、慌てて両手を前へと突き出す。
「魔導壁、展開!」
職業、魔導戦士が扱う防御『魔導壁』は詠唱無しに展開する事が出来る。
なので、魔法使い職だった時の土魔法での『土壁』よりも早く壁を作れるという大きな利点があった。
が…空飛ぶマントはスルリと壁を避ける。
うん…さっきまでも同じ事が起きていたから、この結果はよく分かるわ。
「ムーンさん、壁を動かして!」
「え?レインさん…動かすって一体!?」
「えーっと…こうっ」
「わぁー」
前に出していた腕が勝手に動き、その動きと共に作り出していた障壁が移動した。
空飛ぶマントは再び行く手を阻まれる事になる。
と…上空からマントに向かって弓矢の雨が降り注いだ。
ウィンドさんの侍スキル『流鏑馬の真髄』だ。
ズドドドドーン!!
「え?何??」
先程までとは段違いの攻撃力となった弓矢は空飛ぶマント達の体を貫いた。
「弓が飛ぶ速度も格段に速い!」
ウィンドさんが興奮気味に大きな声を出す。
「お前たち!?一体何をした!?」
そう叫ぶと同時にガオウがこちらに向かって走り出した。
「うぉーーー!」
さっきの突進攻撃だ…
「ムーンさん、障壁を!」
レインさんに言われるも私は躊躇した。
「あ…でも、さっき突破されちゃって…」
「大丈夫、私を信じて。」
「はいっ!」
再びガオウの前に魔導障壁を繰り出す。
さっきは…穴を開けられちゃったけど…お願いっ!
ずーーーん!
衝撃音が鳴り響くと共に…私が作り出した魔導障壁が崩れ落ち…ない!!
「ムーンさん、凄い!ガオウの突進を止めたわ!」
「うん、やった!」
「次!ウィンドさん、サイドから攻撃よ!刀でいなして!」
喜びあっている暇もなく攻撃が来る。
レインさんの呼びかけに応じ、ウィンドさんが即座に対応。
これは…タンジュの触手!
「侍技…陰流円型陣!」
ザンッ
一撃で触手を破壊。
「凄い…」
私は思わず感嘆の声を上げた。
「やったね!」
レインさんがウィンクしながら言うと…褒められたウィンドさんは尋ねた。
「レインさん、コレは…一体。」
「えーっとね。ステータス画面を見てごらん。」
「何コレ?」
「わぁ。」
ステータス画面を見ると、数値が跳ね上がり、さらに文字の色が金色となっていた。
「ちょっと!どうなってるのさ!つまんない!つまんない!つまんなーい!」
タンジュが叫んでいる方を見ると…隣に並ぶアランもイライラしているのが分かった。
「私、ちょっと…移動するわね。頑張ってて。」
私たちにそう伝えると、レインさんは空を舞い上がった。
タンジュが空中に触手を伸ばし攻撃をしかけたが、レインさんはスルリと交わす。
「ムーンさん!」
「え!?」
目線を空中から地表へと動かすと…目の前にはガオウの姿が…すでに棍棒を振りかざしている。
ダメ…そう思って目を閉じてしまった。
けど…ダメージを受けた様子は無い。
恐る恐る目を開けると…吹き飛んでいくガオウの姿があった。
「ムーンさん、油断大敵。」
そう言うとウィンドさんは刀を鞘に戻す。
「氷塊枝鞭撃!」
ドドドーン!
ガオウとは、反対側から飛んできたマントを私が魔法攻撃によって打ちのめした。
「ウィンドさんこそ、油断大敵。」
「ありがとう…ムーンさん。」
「ありがとう…ウィンドさん。」
「ちょっと!何、見つめ合っちゃっているんすか!?」
え?この声は…
「ブロッサムさん!」
「あの羽根の生えたお姉さんに助けて貰ったっす!」
ポリポリと頭をかく仕草をしながら大きな体を揺らしながら歩いて来た。
「俺たちも居ますよー。ステータスも爆上がり。」
ライトさん!
「復活〜。腹いせにタンジュの触手を一つぶっ飛ばしてやったわ。」
グリーンさん!
3人とも無事で良かった…レインさん、ありがとう。
3人が歩いてきた方を見ると、アランとタンジュが必死にレインさんに攻撃を加えているのが見えた。
が、レインさんは涼し気な雰囲気で、ヒラリヒラリと攻撃を交わしている。
「おい!お前ら!もう行くぞ!」
ウィンドさんによって吹き飛ばされたガオウは立ち上がり、そうアランとタンジュに叫ぶとスッと姿を消した。
「あー、ちょっと待ってくださいよー。」
「お前らなんて嫌いだー!」
アランとタンジュも捨て台詞を吐いてスッと消える。
「あー、行っちゃったわー。」
そう叫ぶと、レインさんはゆっくりと空中から降りてくる。
「レインさん、ありがとうございました。」
私は前に駆け寄るとレインさんにお礼を伝える。
「いえいえ、元はと言えば私達、運営側がハッカー対策を出来ていないのが原因ですから。」
「やはりアイツらは…追い出せないのですか?」
「そう、今、それで今回の作戦を…あ、ディレクター、どうでした?」
ウィンドさんが聞いたが、レインさんは上司と思われる人と話し始めた。
『いやいや、無理ですよ~、テレポートしちゃいますから。』
『そんな事、言われても…えー?演技が下手ですって!?こっちも必死だったんですけどー。見てなかったんですか!?』
『とりあえず戻りますねー。』
『まったく…佐藤さんは人使いが荒いんだから…あー、ムカつく!』
運営側も色々と大変そうなのね…ディレクターさん?上司の人、佐藤さんって…名前、出しちゃって良いのかしら?
「えっと…さっきも言いましたが、この度はプレイヤーさん達にご迷惑をおかけしまして、本当に申し訳ございません。」
「あ、いえ…運営さん達も必死なのが伝わりましたので。ただ…やはり捕まえて欲しいなと。」
レインさんの謝罪に対し、永遠の風を代表してウィンドさんが応える。
「はいー、今の作戦をお伝えするとですね…ヤツらのアクセスポイントを探しているのですが、なかなか見つからずでして。」
「やはり海外のサーバーとかを何個か経由している感じですか?」
私にはさっぱり分からない…ライトさんが質問をしてくれる。
「そうなんですよ…さらにそのサーバーも毎回変わるという…かなり組織的に動いてますね、あちらさん。」
「はぁ、そうなんすっか…それで、捕まえられそうなんっすか?」
ため息混じりにブロッサムさんが聞く。
「それでですね…ヤツらがログインしている間に、探し当てるしか無いという事になりまして。なるべく長い時間ログインさせる為に、プレイヤーさん達と協力しようという事になった次第です。」
「え?プレイヤーと協力?」
今度はグリーンさんが問いかけた。
「ですです…私、レインが永遠の風さんの担当となりましたので、今後共よろしくお願いします。」
「えーーー。」
ウチの担当!?レインさんの思わぬ回答に全員で驚きの声を上げる事となった。
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