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悲劇は喜劇のように  作者: 五月雨
7/10

第七幕

部長(以下、部)「やってきました文化祭!ここが一番の書き入れ時だよ!」

二年生(以下、二)「お金は取りませんってば。誤解を招く発言は控えてください」

副部長(以下、副)「他のものはいただきますけれど♪」

新入部員(以下、新)「え?」

双子(以下、双)「「先を越された。書き入れ時って、何を書く?」」

副「古くは在庫の帳簿だそうですが。私達の場合、お客さんの時間でしょうね」

双「「灰色のスーツ着て葉巻吸う。ひとりだけ拒絶した女の子に迫る」」

新「…またマニアックな洋画の話を……」

部「笑顔も一緒に貰うけどね!」

二「恥ずかしい台詞を真顔で言いますね」

部「追試に受かって絶好調だから!…三期の復習してないから、また補習になりそうだけど」

新「ホント懲りないよな……授業中何やってんだ?」

副「…起きてはいるのですが。ただ寝てないだけで」

双「「壊れたメトロノーム。頭が左右にゆらふらり」」

新「それ寝てるよな!?」

二「今のうちに頑張りましょう。でないと部長先輩だけクリスマスプレゼントなしです」

部「がーん!」

双「「皮ジャン君は掛け持ちだから厳しいけど、全員が揃う機会は大事」」

新「そういや今日は皮ジャン君もいるんだっけ」

二「最初からずっと無言で踊りまくってるよ」

副「決まった型はないそうです。これも即興ですね♪」

部「盛り上がってきたぁ!即興演劇部上演会、第七幕秋の文化祭篇!景気づけに声出していこう!せーの……」


 ヒィ―――ッハァ―――ッ!


部「始まるよ!」


 ぱちぱちぱちぱちぱちぱち




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



新「…と威勢よく始まりましたが。今回俺達ゲリラ参加なんですよね」

副「はい。半幽霊も含めれば部員七名ですが、顧問もいない無認可クラブですので」

新「今回初めて知りましたよ。イベントステージの許可取りに生徒会行ってビックリ」

双「「正式な部か同好会じゃないとステージ発表はできない」」

部「その割に好意的だったっしょ?見て見ぬフリはしてくれるから」

二「イベント盛り上げの実績ですね?」

部「そう!今年の体育祭は全員青軍で公式の応援合戦になったけど、毎年無許可のライブはやってたんだ」

新「へー。そう言われると根性ありそうに聞こえるっすね。公園でバンド演奏やって警察に引っ張られた、みたいな」

双「「そこまでじゃない。でも私達が入ったときの部長は、停学で出席日数が足りなくなりかけた」」

二「普段の態度もありますよね。どこぞの誰かさんに聞かせたい話です」

部「ぎくっ」

双「「先輩が危なかったのは、それだけが理由じゃない」」

新「…というと?他にも何かやらかしたのか」

双「「文化祭準備の一週間、放課後にあった悲喜交々を即興劇にして暴露した」」


 うぇええええ!?


新「……それは、確実に敵増やしそうっすね」

双「「生徒だけじゃなく、先生達のアレやコレも」」

新「停学、完全に意趣返しじゃねえか!?」

部「でも先輩、成績自体はよかったからなー……私が同じコトしたらどうなるか、想像するのも恐ろしい」

新「だから日和ったと」

副「というより面白いネタがありませんでした。ドキューン先生とバキューン先生を屋上で見かけたときは、これ幸い!と意気込みましたが」

新「おおい!?」

部「上手上手。皮ジャン君この調子で効果音頼むねー♪」

二「今年の企画も似たようなものですが、本人達が見たら恥ずか死ぬようなシーンを厳選してお送りします。喧嘩を売るつもりはありませんので、誤解されませんように」

双「「誰と誰がピーーーーしてたとか。でも平気な顔してれば分からない」」

新「…先輩。俺らあと一年以上この学校にいるんすけど。刺されたりしないっすよね?」

二「大丈夫。ほとんどが三年生ネタだから!」

副「今日までの間にも、いろいろな動きがありました。男子二人には見せられませんが、女子更衣室のロッカーにはファンからのプレゼントがどっさり♪」

双「「いつもありがとうねー。てなわけで多大な御芳志をいただいた方の、お名前のみ御紹介します」」

新「おおおい!?」


 ざわざわざわ どよどよどよ


副「念のため確認しますが、この演劇はノンフィクションです。実在の個人・団体・事件とは密接な関わりがあります♪」

部「あれれ?どうしたのかなー?お礼を言うだけなのに。演劇の内容とプレゼントは、全く一切関係ないよ?」

新「そりゃ関係ないでしょうよ。名前が出た時点で隠蔽したことになるからな……」


 きえええええ つぉおおおお


部「値段を言うのは無粋だからね!そこは安心してくれていいよ!」


 安心できるかw

 早く言いやがれw


副「では最初の方……生徒会長さん」


 うぇええええ!?

 何だ?何かやったのか?


部「いきなり本命が来ましたねー。名誉のために申しますと、不正を働いたとか贔屓をしたとかそういう話はございませーん」


 何だ?何だ?何だ?何だ?


副「多大な御芳志ありがたく頂戴しました♪…でも一言付け加えさせていただきますと、お好きな方がいらっしゃるのでしたら、そちらの方にプレゼントされたほうがよろしいと思いますよ?」

双「「野暮なことは言わない。一応友達としてのアドバイス」」

新「いや言ってる!完璧に全部言ってるから!」

双「「のん。名前はまだ言ってない」」

新「言うのかよ!?」

二「それ言ったらおしまいですよ……」


 ひぅひぅひぅー。

 おぅおぅおぅおー。

 お前らぁぁああ!


副「次の方まいりまーす……あら。生徒会の方が続きますね?」

部「ん?だれだれ?」

副「書記長さんです♪」

双「「こちらもプレゼントいっぱい、ありがとうなの」」


 おおおおおお……?


副「同じ言葉を贈ります。今のうちに考えておいて、クリスマス直前迷わないようにしてくださいね?」


 ははははははは

 ひゅおおおおお

 いやああああ!


部「誰とは言わないよー。二人とも頑張ってねー?」


 ぱちぱちぱちぱち ぱちぱちぱちぱち




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



副「続いてまいりましょう。サッカー部の部長さん♪」

副「サッカー部マネージャーさん♪」

副「…あら、主将さんもでしたね」

新「その順番に意味ないですよね!?」

部「野暮なことは言いっこなし!」

双「「私達は感謝してるだけなの」」

二「…頭、痛くなってきました……」

副「御芳志の披露も終わりましたので、いよいよ演目に入りたいと思います」

部「いつもは準備なしの即興演劇部だけどねー」

双「「今回は特別。取材を基にしたノンフィクションだから」」

副「プライバシー保護のため、固有名詞は伏せてお送りします♪」

部「皮ジャン君効果音よろしくー。では再現VTR、スタートっ!」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 どんどんどんどん ぴぅぴぅぴぅ

 あははははは うははははは

 誰よ?アレ誰のことよ?w


新「我ながら鬼だな……」

二「大丈夫よ。停学になった昔の部長さんは、もっと容赦なかったって聞くから」

新「同じ相手じゃないんすよ?停学になったから気が済んだって可能性も」

二「……多分。きっと。それに今のでもう終わりだし」

副「御好評いただきました再現VTR、いよいよ最後の一幕となりました。それでは続けてまいりましょう♪」

二「……え?」

新「まだあるんでしたっけ?俺、何も振られてないんすけど」

二「あたしも知らない。これってどういう」

部「ちょっと長いネタだけど、二年の子は特に?耳かっぽじって聞いてくれると嬉しいかなー。じゃあ始めるよー」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



副「…あいつ最近調子乗ってんよね?」

部「だからさー、既読スルーで別ネタしちゃったwイジメとかで呼び出されっかな?」

双「「関係なくね?違うハナシ振っただけっしょ?何もショーコないじゃん」」

部「だよね?大丈夫だよね?でさ、乗ってきたらまた別の話題に変えんの」

副「それヤバー」

双「「ヤバいよね?」」

副「ヤバいヤバいー」

部「でしょー?マジ退学んなったらどうしよぉ?」

副「やめとく?」

双「「二週間くらい?で、また調子乗ってきたらやんの」」

部「くっろいわー」

副「さすがキィィィだわー。鳥肌立っちゃったって」

双「「これくらい基本っしょ。そういや調子乗ってるってばさ。もっとヤバい奴いるでしょ。えーと……」」

部「ピーガーーー部?行事とかのとき、いつも勝手に騒いでるやつ」

新「え……?」

副「ほとんど三年女子なんだよね。うちのクラスにもいたっけ」

部「そうそうそう。そいつそいつ!窓側二列目の前から三番目の奴。あいつムカつくよねー。何様のつもりって感じ」

双「「あんたから見て四つ右、二つ前の席の奴ねー」」

副「廊下でループしてんじゃん。やっぱあんた性格悪いわーw」

部「体育祭のときも全っ然走れなかったくせにさ。先輩達の後ろで偉ッそうにしてんの。マジ信じらんないよね」

二「……………!」


 ざわざわざわ どよどよどよ


新「部長……?」

部「そりゃ頭はいいか知らんよ?だったら一人でオベンキョしてろって。無理にセーシュンしようとしないでさ」

双「「ねー?中学んとき同じクラスの奴に聞いたら、今と違って目立つほうでも可愛くもなかったんだって」」

副「マジ!?ウケるわー!噂に聞く高校デビューってやつ!?」

新「おい!?」

二「……………」

副「じゃあさ、どうする?」

部「実はもう始めてんだよね。さっきのと同じ手口、そいつにもやってる」

双「「じゃあとっておきのやろうよ。あんたソレで一年のとき、三年の先輩ツブしたって自慢してたじゃん」」

部「でもさー。アレ彼氏いないと意味なくね?アイツ彼氏いんの?」

副「ないよねー」

双「「だったらテキトーな奴でいいよ。懐いてる先輩とか、一年の男子でも」」

部「さすがピガガーーーだわ。やっぱあんたのクロさには負けるー」

副「いつやる?」

部「後夜祭とかいいよね?」

双「「アゲてるトコで一気にオトすの」」

副「決まりー…ってイインチョいたの?部活の出し物行くって言ってたじゃん」

二「……え?」

部「何か聞こえた?聞いてないよね?暇なら一緒に見て回ろうよ」

双「「いいよね。友達なんだしさ」」


 ……………。

 これ実話なの?


部「そいえばイインチョの席さ。居眠りしてもバレなさそうじゃね?」

副「そうそう。窓際じゃないから日光当たらないし」

双「「前の奴マジメだから盾になってくれるし」」

部「羨ましいわー。できれば代わってくんない?…あははははははっ!」

副「ウケるー。マジウケるー!」

双「「あはははははー」」

二「…あ……え……」

新「おい!?んなことして何の……!」

部「何?ウチらがイインチョイジメてるっての?」

副「嫌とか言わないよねー?友達だもん」

双「「ねー」」

二「……………」

部「え?先輩達に訊かないと、そんなことも決められないの?」

副「うわダッサ」

双「「キモ」」

二「……………っ」

部「先輩達もこんな後輩いらないよねー」

双「「ねー」」

副「こんなのに纏わりつかれて迷惑だよねー」

双「「マジ死ねるわー。明日にでも腐って死ぬわー」」

副「あたし今すぐー。マジキモくて泣けるー」


 ざわざわざわ がやがやがや

 何?どうしたの?

 さあ。何かあったらしいよ。


部「…だけど、さ」

副「私達は、あなたの何ですか?」

双「「遠慮はいらない。思いきりぶつかって」」

二「……………っ!」

新「…先輩?先輩、どうしたんで」

二「…ふっざけんなぁぁぁああ!」


 ごぎゃん!

 うあぁぁああ!?


部「げぶぅ!?」

新「ちょ、え……先輩!?」

副「よくできました♪」

双「「ん」」

新「何やってんすか!?部長、大丈夫っすか部長!?」

部「ひれはら~」

二「ふっっっざけんな!キモいのはお前らだ!陰でグズグズ腐りやがって!下○か!悪〇菌か!〇ツリヌス菌か!」


 きぃやあー。おぉおあー。

 委員長どうしたの?何かあったの?

 いやコレも演技だって。確か演劇部に……

 でも血が出てるよ!?血!?


二「お前ら先輩の何が分かる!?お前らにあたし達の何が分かる……っ!」

部「うんうん。そうだねー。ごめんねー」

副「よしよし♪」

双「「……ん」」

二「それとウチは即興演劇部だからっ!みんな間違えないようにっ!」


 どしたの?どしたの?

 よく判んないけど、一組の委員長が三年の先輩殴った!

 えぇー!?

 でもなんかイイ雰囲気だよ……

 全然意味分かんねぇって!


新「…えーっと。俺だけ蚊帳の外なんすけど」

皮「ヒャッハァァァア!」

新「何?これ俺が読むの?はぁ……」

新「…即興演劇部上演会第七幕、お楽しみいただけましたでしょうか。今回は文化祭特別篇ということで、『ナマ音源』CDを……何だこりゃ。厳正な審査のうえで?一名様にリーズナブルな値段でお譲りいたします。詳しくは即興演劇部部長まで」

部「待ってるよー。どしどし応募してね!」

新「…えーっと」

二「…っく。…っく」

新「とりあえず〆ます。次回お楽しみにー」

双「「にー」」

副「にー♪」

部「にー!」

二「……に」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「…失礼します」

「来たか。まあそこ座れや」

「はい……」

「…で。昨日のことなんだが。殴られた本人に聞いても、劇中の演出ってしか言わないんだよな」

「はい……」

「お前らが普段から仲いいのは、俺もよく知ってる。だからといってな、何もなかったことにしていいわけじゃないんだ」

「…はい」

「停学一箇月。お前は成績いいし、まだ二年だから何とでもなるだろ」

「…ありがとうございます。寛大な処分に感謝します」

「部長の怪我、大したことなくてよかったな」

「はい。それでは、これで……」

「おう。気ぃつけて帰れよ?」


「…また何もしてやれなかったか」

「寛大な処分だって?」

「これ以上、ダメな大人を甘やかしてくれるなよな……」

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