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悲劇は喜劇のように  作者: 五月雨
5/10

第五幕

部長(以下、部)「夏休み前だよ特別号!即興演劇部上演会!」

新入部員(以下、新)「うっしゃあああああ!」

副部長(以下、副)「おー♪」

二年生(以下、二)「おー!」


 ぅおぉおおおおおおお!


新「期末試験も終わりましたね。宿題をテキトーに片づけりゃ、あとは……」

部「夏休みだッ!めくるめく輝きが私達を待っているッ!」

二「その前に部長先輩は、補習ですけどね」

副「あれほど言いましたのに、授業中寝てるんですもの……」

部「ぐはッ!…そ、それは已むに已まれぬ事情がありまして……」

副「言い訳は聞きません。卒業できなくなったら、どうするんですか?」


 はははははは

 お気の毒にー。まあ頑張れー。


副「せっかく皆さんを別荘に御案内しようと思ってましたのに」

新「え。副部長、別荘なんてあるんすか?」

副「はい。少しばかり古いですが」

二「離れ小島のね、いいところなのよ。去年行ったけど、プライベートビーチもあった」

新「マジっすか!…部長」

部「は、はい?」

新「勉強しましょう。俺達みんなの幸せのために」

二「…分かりやすいなー」

副「そうですねぇ。実のところ、彼女が行けなくても今回は別の理由で皆さんをお招きするのですが」

新「え?」

部「…うん。実は、そうなんだよね……」

副「皆さんに御報告があります。諸事情により休学していた双子さんが、二学期から登校することになりました。今日のために来てますので、拍手でお迎えください!」


 おおおおおおおお!?

 ぱちぱちぱちぱち


双子(以下、双)「こんちわー」「こんちわー」

双「本日はええお天気でー」「本日はええお天気でー」

双「あんさんはいつも、頭の中お天気やろ」「あんさんはいつも、頭の中お天気やろ」

双「いやあんた、二人ともボケかましたらツッコミ役おらへんやろ」「いやあんた、二人ともボケかましたらツッコミ役おらへんやろ」

双「…いい加減にしいや!」「いい加減にしいや!」


 はははははははは はははははははは


双「「お粗末。どうもでしたー」」

二「相変わらずですね。でも双子先輩、いつ退院したんですか?」

双「「今日。そのままタクシーで学校に来た」」

二「だから私服なんですね。にしては同じ格好ですけど」

双「「ウニ黒寄ってきた」」

部「そういうところも相変わらずだね!…というわけで新入部員君、今年の海行きは双子ちゃん姉妹の快気祝いが目的だったのさ!だから、私がいなくても……」

新「なるほど。よく分かりました」

副「せっかくのお祝いだから全員でしたかったのだけど……補習が終わらないうちは、ここを離れられないでしょうし」

双「「無理ダメ。部長がダブるくらいなら快気祝いは無用」」

二「そういうわけには……やっと帰ってきてくれたんですし」

新「そうですよ。俺まだ紹介もしてもらってないのに……俺らだけで楽ゴホゲフン行ってきますんで、部長は頑張ってください」

二「お土産買ってきますから。今年は何がいいですか?」

部「二年生ちゃんまでっ……このやろう分かってたよチクショー!瀬戸内名物ままかり酢漬けとみんなの素敵な笑顔をお願い!」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



副「というわけで今回は即興演劇ライブではなく、双子さん姉妹の快癒記念インタビューでお送りいたします♪」

双「「プライベート垂れ流し。私生活を赤裸々に暴きたてるんだね」」

部「そういう言い方もできるかな?とりあえず双子でよかったこと、悪かったことなんかを話してもらえれば」

二「服の貸し借りとか便利ですよね。普通の姉妹だと、そもそもサイズが合わなかったり趣味が違ったりしますから」

副「そのあたり、どうなのでしょう?」

双「「うーん……」」

双「「うん」」

双「「別々のクラスになって、妹のクラスメイトに姉が気づかなかったら虐められた」」

新「……え」

双「「逆もある。姉の彼氏が妹に迫ってきて、悲鳴を上げたら破局した」」

二「…相変わらず、ぱないですね……」

双「「双子って、そんなにいいものじゃない。アニメとかゲームみたいにはいかない」」

部「だからいつも一緒にいるんだ?お互いのことが分かるように」

双「「同じ学校、同じ服装、同じ髪型、同じ食事、同じ友達、同じ部活。ずっと一緒にいれば大丈夫。人生そのものを共有すれば大丈夫」」

副「それで今回の交通事故も、二人揃って怪我をする羽目に……」

新「さすがにちょっと。助かったからいいようなもの」

双「「そう。二人とも生きているから大丈夫。おk」」

二「……いろいろ問題はあると思いますが」

双「「おk。死ぬときも一緒だから」」

副「何かいいことはなかったんですか?双子でよかったと思うことは」

双「「……………」」

新「ないとか言わないっすよね?まさか」

双「「…ない。でも」」

部「でも?」

双「「いるのが当たり前」」


 ひぅひぅー。お帰りー。退院おめでとー。


双「「…本当はあるけど、みんなには内緒」」

新「え?」

双「「言ったら、メリットじゃなくなる」」

新「……?」

双「「…ふふふ」」

副「というわけで、双子さん姉妹の退院記念インタビュー、これにて終了いたします♪」

部「次回は夏休みの登校日、普通にやるから楽しみにしてて!」

二「その頃、部長先輩はまだ補習ですよ。あたし達に任せてください」

新「戦力も拡充しましたしね……あぁ。ボケ役が足りないって、そういうことだったのか?」

双「「何でやねん。後輩君、あんた先輩に向かってようけ度胸あるなぁ」」

二「Wツッコミいただきました。それでは来月も、よろしくお願いします!」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「双子先輩の事故って、どういう状況だったんですか?」

「それね。私も気になったから調べてみたんだけど」

「横断歩道を歩いていて横から。いつも手を繋いでるのに、おかしくないですか」

「うん。これはあくまで噂なんだけど……事故当時、二回スリップ音を聞いたって人がいるんだよね。場所は同じなのに、別々の記事を載せてる新聞もあった」

「まさか……でも」

「どっちが先だったかは、この際どうでもいい。問題は残ったほうが、どうしてそんなことをしたか。立場が逆でも、同じことが起きたんじゃないか」

「…『唯一の自分にしてあげられる』」

「後からのほうは、二度とそんなことが起きないように……?」

「傷痕の位置まで同じ。これって狙わないとできないと思うんです」

「…普通はないって言うところだけど、双子ちゃんならあり得るか……」

「そう思います」

「自分のことだけで手一杯なのに……嫌とか言ってるんじゃないよ?」

「分かってます。さっきも言いましたけど、たまにはあたし達を頼ってください」

「次回の公演はそうするとして。でも快気祝いだけは絶対行くよ?それこそ這っても落第しても」

「待ってます。そのときは快気祝いの場が勉強会になるだけですけどね」

「怖っ!…やっぱり最近、私の扱い酷くなってない?」

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