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悲劇は喜劇のように  作者: 五月雨
4/10

第四幕

部長(以下、部)「はいっ!今月もやってきました即興演劇部上演会!」

新入部員(以下、新)「これで四回目っすね。そろそろ慣れてきました」

二年生(以下、二)「部長先輩のテンションに?」

新「無茶振りとgdgdにです。これからはやられっぱなしじゃないっすよ」

部「お、宣戦布告。そういうことなら受けて立つよ。ほゥぁッ!」

新「いや喧嘩じゃなくて。部長、見るからに弱そうですし」

部「完璧超人の我が相棒よりはね!でも何を隠そう、私は毎日空手部の朝練を見学していたのだッ!ちなみに完璧超人とは『パーフェクトちょうじん』と読むッ!」

二「……………」

新「……………」

副部長→完璧超人(以下、完)「そうですねぇ」

部「な、なんだってー!」

二「セルフリアクション、御苦労様です」

新「今日のテーマは『雨宿り』。季節的にもいいかな、と」

完璧超人→副部長(以下、副)「天気予報は見てきましたか?傘マークの日は念のため準備を忘れずに♪」


 HYAHAAAAAA!

 HEEEEHAAAA!


新「おっ、皮ジャン君久しぶり。今度なんか食いにいこうぜ」

部「無視しないでー!?」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



二「さて。本日のテーマは『雨宿り』ですが」

新「例によって脚本はないんだよな。それやると部長が怒るし」

副「看板が偽りになってしまいますもの」

部「そのとおり!だから今日もシチュエーションの募集だ!みんな雨宿りっていったら、どんなトコですると思う?」

二「不健全な場所はダメですからね」


 ……………。

 ファミレス!

 ネカフェ!

 カラオケとか?

 駅のホーム。

 コンビニ。


副「いろいろ出ましたねぇ」

新「前みたいに全部っすか?…うーん」

二「一番多いのはコンビニ。他もなるべく入れるとして」

副「カラオケはあまり行かないのですが……」


 えー。歌わないのー?


部「コンビニに決定!店番やるから適当によろしく!」


 ぶー




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



二「はい、じゃあ放課後ですね。あたし達電車通学なんで、駅のホームにいます」

新「俺チャリ通だけど……」

副「私は……車です。家人に送られて」

部「私は歩きだよ!参考までに」

二「…普段から電車乗ってるのあたしだけ?」

新「みたいっすね」

副「詳しい描写はお任せして、私達は窓の外でも見ていましょう♪」

部「わー速い速い。人がゴミのようだ!」

新「ちょ。それって……」

部「何かな?」

新「人を……」

部「わーいわーい♪」

二「ていうか、まだ乗っていません。これから雨が降るんですし」

副「そうですねぇ」

新「そうでした。ほら、いない人は降りてください」

部「いないのに降りるも何もないと思うけど……ちゃんと店に来るよね?」

二「そのつもりですが、展開次第ですね」

新「俺ら即興演劇部っすから」

部「…うーん。最近、私の扱い酷くない?」

副「そうですねぇ」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



副「あら。雨が降ってきました」

二「駅に入ってからでよかったですね」

新「でも拙いっすよ。今日は誰も傘持ってきてません」

部「誰も……って」

二「相合傘でもするつもりだった?」

新「え?…あ、いや。そういうわけじゃ」

副「…降りるまでに止めばいいのですが」

二「その場合は降りた駅で雨宿りですね」

部「…おーい」

副「何か聞こえたような気がしましたけれど……気のせいですね」


 くすくすくす

 ふふふふふふ


新「…呪いの視線を感じる」

二「気づいたら負けよ。心を強く持ちなさい」

部「目的変わってない?なんか目的変わってるよね?」

副「そんなことはありません……あら、よかったです。もう一駅のところで雨が……」

部「うわああああん!」

副「と思ったのですが、また降ってきました。やはりこの季節は天気が変わりやすいですね♪」

新「実は副部長……S、ですよね」

二「うん?」

新「その人を相棒と呼ぶ部長は、見かけによらず……はっ」


 ❤❤❤――しばらくお待ちください――❤❤❤


二「着きました。あたし達の降りる駅」

副「そうですねぇ」

新「ガクガクブルブルガクガクブルブル」

二「まだ止まないですね、雨」

副「そうですねぇ」

新「ガクガクブルブルガクガクブルブル」

二「ファミレス遠いし、喫茶店高いし……」

副「カラオケは苦手ですし……」

二「コンビニがありますよ。傘、売ってるかも」

副「そうですね。行ってみましょう」

新「ガクブル×99」

二「後輩君、いつまでも震えてないで行くよー?」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



部「いらっしゃいませー」

新「お。バイトがいる。俺らと同じくらいかな」

二「とりあえず飲み物買いましょ。温かいやつ」

副「そうですねぇ」

新「先輩はミルクティっすか?副部長は緑茶」

副「はい。それで」

二「いいけど……なんで?」

新「雰囲気っすよ。何となく」

副「ここは一番先輩の私が出しておきましょう♪」

二「あ、ありがとうございます」

新「あざーっす。じゃあ俺、番茶で」

二「…渋いですね」

副「渋いです……というわけで店員さん、ホットドリンクの陳列棚は」

部「ないよ?うちホットはやってないから」

新「は?」

二「聞き違いでしょうか。もう一度お願いします」

部「仕方ないなぁ……うちホットはやってませーん。ていうかコールドもやってませーん。あるのは常温の定番だけー」

副「…最近流行りの、体にいいということでしょうか?」

二「なるほど……」

新「あり得る……の、か?」

部「いや別にそういうんじゃなくて。ただ単に設備がないからやってない」

新「だってここ、コンビニだろ?」

二「そう書いてあったよね。確かに」

部「あなたのコンビニだよ!よろしくねっ!」

副「…どういうことなのでしょう?普通のコンビニとは違うのでしょうか」

新「もう一度確認するぞ。ここはコンビニなんだよな?」

部「うん♪」

新「だったらフランチャイズに加盟してるよな。最近変えたことは?本部からの指示とか何かあるだろ」

部「おでんやめました」

新「やめたのかよ!」

部「だって客が来るとめんどいし。店番やりたかっただけだし」

二「よくフランチャイズが続けられますね?」

部「続いてないよ?元コンビニの普通の商店」

副「あら。そうですねぇ」

部「屋号が『あなたのコンビニ』だから!」

新「うっわ本当だ。ロゴの色も形も業界三位の某社にそっくり」

部「…あなたとコンビ……♪」

二「ストップです。それ以上歌うのは禁止」

副「訴えないでくださいね?この物語はフィクションです。実在の国・団体・個人・事件とは一切関係がありません♪」

部「そいうコト。オーナー兼店長が祖父ちゃん、家内労働者は私。いきなり蒸発した母さんが、帰ってくるのを気長に待ってる」

新「いきなり重い設定が来た!?」

部「それはさておき、何か買わない?買うならおまけにコーヒーくらい出すけど」

二「あ、買います。これとこれ、このお菓子と透明傘」

副「折り畳み傘と男梅を」

新「食品衛生法は大丈夫なのかよ……とりあえず傘とガム買っとく」

部「まいどー♪…じーちゃーん!お客さんにコーヒー淹れてー!」

新「あんたが淹れるんじゃないのかよ!?」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



部「あ、こら。出てきちゃダメだろ。お客さんいるんだから」

二「何です?」

部「私の弟。ほら戻って戻って」

副「弟君、大人しいですね」

部「甘えっ子だから。それにあまり元気じゃないし」

新「ふーん……お、雨が上がってきた。傘、買うまでもなかったかな」

部「返品なら受けつけるよ?また仕入れられる見込みもないし」

二「コーヒーも御馳走になりましたから。寄附します」

副「そうですね。ここに挿しておけばよろしいのでしょうか?」

部「…ごめん。高いコーヒーになっちゃったね」

新「いいって。お母さん、帰ってくるといいな」

二「どうします?どこか寄ります?」

副「そうですね。先日ダストでリリースされたドゥーブルフロマージュが美味しいと噂なのですが」

二「いいですね!女子だけで行きましょう。即興演劇部の女子会です♪」

部「おー!」

新「マジ行くつもりか。じゃあ俺、先帰ってますねー……というわけで、ありがとうございっした。次いつやるか未定っすけど、また見に来てくださいね」


 ぱちぱちぱちぱち ぱちぱちぱちぱち

 がやがやがやがや ぞろぞろぞろぞろ




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「…いらっしゃいませ」

「私。ただいま」

「ああ。お帰り」

「何か変わったことは?」

「……………」

「着替えてくるね。夕飯まで少し休んでて」

「進路は決めたのか?」

「大学には行かないよ。高校卒業すれば、私も一人前に働ける」

「……………」

「ずっと、ここにいるよ」


「……お祖父ちゃん」

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