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悲劇は喜劇のように  作者: 五月雨
3/10

第三幕

部長(以下、部)「今日は体育祭ということで、我々即興演劇部が余興を任されましたっ!」

新入部員(以下、新)「余興ちゃいます、応援合戦。一応点数入りますから」

副部長(以下、副)「そうですねぇ。部員全員がたまたま青軍だったこともありますけれど」

新「珍しくタイムリーな同意です、副部長。今回は俺もネタ幾つか仕込んできましたよ」

部「ほほう?」

新「さすがに晴れ舞台っすから。天国の父さん母さん、見てるか……?」

部「じゃあそれ、全部破棄する方向で」

新「んなっ!?」

部「即興演劇部たるもの、台本も仕込みも予習もなーい!頼るは刹那の閃きだけ!」

副「台本や仕込みがあるのなら、練習すればよいですものね」

新「はっっっ!…いや、授業の予習はしたほうがいいんじゃ」

部「未来は分からないから面白いのだゼっ!ちなみに過去は振り返らない主義だから復習もナシ」

新「少しは振り返れよ、受験生。というわけで今年三度目の即興演劇会、初めての皆さんもよろしくお願いします」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



新「そういや今回まだ喋ってないのがいるな」

副「皮ジャン君かしら?」

部「ああー。そういえばいないね。ちなみに彼も青軍だから」

新「まだ籍置いてたんすか!?てか生きてるんですか!?あれだけ存在流されたのに!?」

部「…いるよー。みんなの心の中に」

副「彼とはいつでも会えますから」

新「……名前も知らない奴より今は先輩です。ずっと黙ってますけど、どこか具合でも悪いんすか?」

二年生(以下、二)「……………」

新「先輩?」

二「…つぃ……」

新「え?」

二「……あづぃ……」

部「死んだ」

副「そうですねぇ」

新「見てないで手伝ってください!水!水っ!?」

部「真水じゃ逆効果だよ。はい、スポドリ濃いめ」

副「塩飴もあります。男梅ですが」

新「やけに準備いいっすね?…まさか」

二「驚いた?」

新「驚きましたよ!マジで心配したじゃないすか!」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



二「で。今度は新人君がダンマリしちゃったわけですけど」

新「……………」

部「どしたの?もう本番始まってるよ」

副「そうですねぇ」

二「体育祭がテーマなので、注意喚起も込めて熱中症を演じさせていただきました」

部「よい子のためになる即興演劇!…って、もうこんな時間か。全三回の応援合戦、すべて即興演劇部が請け負いましたので」

副「競技に参加しない皆さんも、そのときだけは来てくださいねぇ」

新「……………」

二「ツッコミ役が拗ねてます。これじゃ締まらないですよ」

部「おーい。大人げないぞー?」

副「ほっぺ、ぷにぷに?」

新「別に怒ってないです。やめてください」

部「というわけで、お昼の部もお楽しみに!」

二「また、よろしくお願いしまーす」

新「…んだよ。自分達は仕込んだくせに……」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



部「応援合戦お昼の部、即興演劇部上演会体育祭篇第二幕!張り切っていこう!」

副「おー」

二「おー!」

新「…おー」

副「新入部員君は元気が出ないみたいですね。正直、私も運動は苦手なのですけれど……」

二「それはそれ。やるのは演劇だから頑張りますよ」

部「熱中症に気をつけて、だね!」

二「はい。ではまず、ここまでの成績を確認しましょう」

副「白一七○点、赤一八四点、青一五六点となっております……あらあら」

部「このままだとヤバいね~。最下位だよ」

二「朝の応援合戦も三位でした。いつもみたいにやったほうがいいのかも?」

副「そうですねぇ……」

部「十八禁ギリギリのお色気路線!」

新「んなもんいつやりました?ダメに決まってます」

部「バレたか」

新「バレますよ」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



新「で?俺達青軍が逆転するには、具体的にどうすりゃいいんです」

部「まだチャンスはあるよ。徒競走が一位から順番に四点、三点、二点、一点。欠場は〇点だから、とにかく全員参加するのだっ!尽き果てようともゴールまでダッシュ!」


 おおおー

 ぱちぱちぱち


二「部長先輩、手放しでイイコト言いました」

新「そうっすね。珍しいこともあるもんです」

部「部長だからね!たまにはイイコト言わないと!」

副「そうですねぇ」

新「副部長の同意もタイムリー……何か悪いことの前触れか?」

部「みんなの力を集めて勝とう!出番待ちの人達は、他軍選手の出場を妨害するのも忘れずにっ!」

副「頑張りましょう、おー♪」

部「頑張ろう、おー!」


 ぅおぁぉあ――!

 殺っっってやるzEeぇえ

 ヒィ――ッハァ――――ッ!


新「……あー」

部「どうしたのかな!気迫と元気が足りないぞ!」

新「…疲れてきました。先に飯、食って寝ます」

二「本気にしたら困るからね。あたしとの約束だよ☆」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



部「本日三回目の即興演劇部だよ!最後の応援合戦いってみよう!」

新「俺もテンション上がってきました。最初はちょっとアレでしたけど」

副「そうですねぇ。本気にしちゃって♪」

新「いやマジで倒れたのかと。にしても……」

部「死んでるねえ。二年生ちゃん」

二「……死ぬ気で……一点、稼ぎましたよ………」

新「相変わらずの演技派っていうか……ある意味、尊敬しますね」

二「…あー。うん。あたし女優だから……げふっ」

部「あ。死んだ」

副「頑張りましたね」

新「…おーい?」

二「……………」

部「返事がないよ。ただの屍みたいだね!」

新「それ言いたかっただけでしょう?とりあえず運ぶの手伝ってください。自分で動く気なさそうなんで」

部「うぃー」

副「…二年生ちゃんが名誉の戦死を遂げました。これは弔い合戦です!」


 いやいや。ちゃんと生きてっから!

 君の死は無駄にしないぞー。

 青軍、ファイトぉー。えいえいおー。


部「さあ泣いても笑っても、残る競技はあと一つ!」

副「学年混合代表リレー。選手の皆さん頑張ってください、他の方々も張り切って応援しましょう!」

新「おー!」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「みんなお疲れー。ありがとね」

「お疲れっしたー」

「こちらこそ、お疲れ様でした」

「まさかの一点差勝利。ないっすよねこんなの」

「ふっふっふ。私の作戦指導が効いたんだよ。他軍の生徒をトイレで待ち伏」

「ところで先輩は?ちょいちょいムカつきましたけど、今日の演技は凄かったすね」

「…部室に忘れ物。親御さんが来てるから、そのまま一緒に帰るって」

「そうなんすか?意外と親子仲いいんすね……」

「その『意外と』ってとこ、あとで二年生ちゃんに伝えとくよ!」

「余計なことは言わんでくださいって」

「今日はこのまま解散しましょう。公演成功の打ち上げは改めて」

「ん。じゃあまた明日ね。ほんっとお疲れ!」

「そういや登校日か。うちの学校、何で体育祭が平日なんだろうな……」


「…具合は、どうです」

「落ち着いたよ。ちゃんと汗拭いて着替えさせて、温かくしてるから」

「御家族に連絡も?」

「…したよ。とりあえず今日はウチに」

「すみません。いつも頼りきりで……」

「大丈夫。ウチも家族は少ないから」

「…迎えを呼びました。せめて送らせてください」

「こっちこそ。いつもありがとう」

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