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War King(戦王)  作者: チャラン
第一章 それぞれの出会い
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第四話 小さき戦士達

「大変だみんな! 魔物がこっちに来るぞ!」

「魔物だって?」

「嘘だろう?」


 突如の事態に教室内は軽いパニックになった。半信半疑の子供もたくさんいた。


「嘘だと思うんなら、窓から見てよ!」


 シージャはホークの叫びに応じて、窓に確認に行った。魔物がどんどん近づいて来るのが見えた。


「確かに魔物だ! でっかいのが一匹、小さいのが二匹、全部で三匹いるよ!」

「どうするシージャ? 皆で逃げる時間も無いし、リジャ先生もいないし……」

「僕らで何とかしよう」


 話しを聞きながら沈黙を守っていたカイトが落ち着いた声で言った。


「僕は大剣はまだ振れないけど小剣ならなんとか振れる。この教会に小剣はあるかい?」

「身を守るための小剣がお爺さんの部屋に幾つかあったはず……。取ってくるよ」


 シージャは急いで小剣を探しに行った。


「僕は剣術をやったことがないからかわりに時間を稼ぐよ。教室の扉と玄関の扉につっかいをして来る。それとゾルカス!」


 ホークは切羽詰った表情で言った。魔物と対峙したことがないのだからそんな表情になるのも当然だった。


「なんだい?」

「レンと一緒に皆を二階に避難させてくれ。もう教会から出て逃げる余裕はないんだ」

「分かった。皆を避難させたらおいらは降りて来るよ。おいらが一番力持ちだからなあ」

「頼んだよ」


 ホークはつっかい棒を掛けに走って行った。


 ホークが玄関まで来ると、窓ごしから魔物の顔がはっきり分かるくらいの距離まで近づいて来ているのが見てとれた。大きな魔物はごつごつした顔に、黄色い目を爛々と光らせている。


「急がないと!」


 ホークは二本の木材を使いつっかいをした。


 今度は奥の教室のつっかいをするために急いで戻り、そこにもつっかい棒を掛けた。


「もうすぐ来るよ! 小剣は見つかった?」

「うん。さっきシージャから貰ったよ。これで何とかするしかない」


 カイトは小剣を装備している。


「エルフの赤ちゃんもみんな避難させたぞお!」


 ゾルカスが二階から降りて来た。レンも一緒に降りて来たようだった。


「レン! 二階に居ろよ! ここにいるのは危険すぎる!」

「あなた達が心配なのよ! リジャ先生やホークのお父さんもいないのに戦うのは無茶よ」

「無茶なのは分かっているよ」


 そうこうしている内に魔物の一団は玄関の門まで近づき、扉のつっかいを力まかせに壊そうとしていた。ドオンドオンという音が聞こえてくる。


「しょうがない。ここにいていいよレン」

「有難うホーク!」


 ドオンという音と共に玄関の扉が破られた。


「もう僕らで迎え打つしかないな」


 カイトは教室内でも戦いやすい広さがある場所に移動した。魔物達は教室の扉も力任せに破ろうとしており、ドオンドオンという音と共に教会全体が揺れているかのような力が扉に加わった。


「もう時間がない! 僕は魔物達の力を弱めるための結界を張ってみるよ!」


 シージャは集中し始めた。


「結界なんか張れるの?」

「お爺さんから習ったことがある。どこまで通じるか分からないけど。ちょっと集中させて!」


 ドオンという地響きするような音と共に教室の扉も破壊された。とうとう魔物達が教室内に入って来た。


「ここまで来るのにてこずったな。ガキの癖に中々機転が利くじゃねえか?」


 魔物の一団の中のレッサーデーモンは鼻をくんくん鳴らしている。


「エルフの匂いがプンプンするなあ」

「しやすね。間違い無くここにいやすでげしょう」

「エルフなんかここにはいないぞ! ま、魔物は大人しく自分の国へ帰れ!」


 ホークは身構えながらそう言った。流石に体が震えてきている。


「ガキのくせに言うじゃねえか?隠しても匂いがするんだよ。お前らこそ大人しくエルフを渡せば痛い目を見んですむぞ?」

「そうだ! 大人しく渡せ!」


 魔物の威圧するような太い声にホーク達はおののきそうになったが耐えて言い返した。


「これ以上踏み込んでくるなら斬りつけるぞ!」


 カイトは目一杯の大声でそう言った。魔物達は鼻で笑っている。


「そんな小剣が役に立つのか? しかもガキの剣だ、もう一度言う大人しく渡した方が身のためだぞ?」


 魔物達はホーク達がいる教室の教壇側に踏み込んできた。その時シージャは集中が終わっており、すぐに結界を張った。


「セントライトフィールド・レベル1!」


 シージャがそう言葉を発すると、シージャを中心に半球状の柔らかい光が広がっていった。その半球は教室全体にまで広がった。


「ベルガ様!力が抜けていきます!」

「ほう……その年で聖なる結界を張れるのか……。末恐ろしいガキだな。だがこの程度の結界ではわしの動きは完全には封じれぬ!」


 ミニデーモンの二匹には結界の効果は十分だったが、レッサーデーモンのベルガの行動は完全には封じれなかった。


「お前らは下がっていろ! この程度の結界ならどうにでもなる。ガキを相手にするならいいハンデだ」


 ベルガは配下のミニデーモンを下がらせて、自身は聖なる結界の中を無理やり進んで行った。


「僕の今の力ではこれが限界だ……。ごめん……」

「いや。あのでかい魔物もこの結界の中ではさっきより動きが鈍くなってる。今度は僕達がなんとかやってみる!」


 近づいて来るベルガに対してカイトは構えた。小剣の切っ先を相手の右腕に向けている。ゾルカスとホークも辺りにあった、椅子を持ち上げ投げつけれるように構えをとった。


「結界で多少わしの力が落ちているとはいえそんなもので挑むつもりか? 無駄なことを……抗うというなら皆殺してくれるわ!」


 そう言うとベルガは一気に近づいてきた。


「投げるぞゾルカス!」

「おう! フガーッ!」


 ホークとゾルカスは持っていた椅子を力一杯ベルガに投げつけた。命中したが、大した効果はなかった。しかしベルガは一瞬ひるんだ。ひるんだ隙にカイトは一気に間合いを詰めた。


「くらえ! 魔物め!」


 小剣を振り、ベルガの右腕を切りつけた。切るには切れたが小剣はベルガの右腕に食い込み取れなくなった。


「小僧のくせにやるじゃないか。だがこれでお前は丸腰になった。武器もないのにどうするつもりだ?」


 ベルガは鼻で笑った。負った傷もベルガにとってはかすり傷程度のものだった。


「刺さったままでは流石に邪魔だな」


 そう言うとベルガは左手で刺さった小剣を抜き、後ろへ投げ捨てた。


「これでお前たちも万事窮すだな。そうだなまずそこの女の子に痛い目を見てもらおうか」


 今度はベルガの方から間合いを詰め始めた。


「レン! 狙われているよ! 二階に逃げるんだ!」

「でも、ホーク達は……」

「いいから逃げろ!」


 もう皆武器を持っていない。


「もう体当たりでもするしかないな……。シージャ! これで駄目なら結界を作るのを止めて逃げてくれ!」

「逃げるけど、ギリギリまで結界は張るよ。僕のことは気にしないで!」

「分かった。じゃあ三人でぶつかるぞ!」


 ホークとカイトとゾルカスは呼吸を合わせてベルガに体当たりをした。少しの間、押し戻したが、やはりレッサーデーモンの力は強かった。


「ちぃっ、ガキの癖に! 小賢しいわ!」


 正面から体当たりを受け止めたベルガは両腕の膂力を使い、三人を吹き飛ばすように払いのけた。


「ホーク!」

「……いいから二階に逃げるんだ……」


 吹き飛ばされたホーク達はダメージを負い起き上がれなかった。ベルガはレンに近づいて行った。レンはホークの言うことを聞かずに二階への階段の前を懸命に塞いでいた。

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