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第43話 故郷の危機

「ポメラーニさん、そんなに息を切らせてどうなさったんですか?」


「大変です、シェリナさん。私達はここしばらくゾーランド公爵領で商売をしていたんですが、昨日突然ゾーランド公爵のお屋敷で大爆発が起こりました」


「は?」


 私は一瞬ポメラーニさんが言った事が理解できなかった。


「……今大爆発って言いました? どういう事ですか? 誰かが爆裂魔法でも誤爆したんでしょうか?」


「爆発の原因は分かりません。一瞬にして屋敷は礫の山になりました。領民の住宅地とは距離がありますのでそちらは被害はなかったんですが、あの爆発に巻き込まれたゾーランド公爵達は恐らくもう……」


「そんな……」


 王宮にいるティファニスさんは巻き込まれずに済んだみたいだけど、それだけ大きな爆発があったのなら屋敷で引き籠っていたキーラも無事ではいられないだろう。


「しかもそれで終わりではなかったのです。屋敷の跡にできた大穴から人間とも魔物とも違う正体不明の異形の者が現れて人々を襲い始めたのです。私達も命からがらゾーランド公爵領から逃げてきました」


「何ですって!? ゾーランド公爵領で一体何が起こっているの……?」


 私はイザベリア聖王国の聖女だ。

 故郷の危機と聞いてこんなところで商売なんてしていられない。


「ポメラーニさん、私をゾーランド領に連れていって下さい!」


 相手が魔物ではないのなら私の破邪の力は効果がないかもしれないけど、聖女には他にも不思議な力が沢山ある。

 祝福の歌や激励の歌で皆を助ける事はできる。


 私はポメラーニさんの返事を待つまでもなく荷馬車に飛び乗り、ゾーランド公爵領へ向かうように催促をする。


「はい、それでは飛ばしますのでしっかり掴まって下さいよ」


「待て」


 急ぐ私達の前に立ちはだかったのはアザトースさんだった。


「アザトースさん、一刻を争うんです。邪魔をしないで下さい!」


「勘違いするなシェリナ。俺達も行くと言っている」


「俺達?」


 アザトースさんの後ろにはオプティムさんを始めとした魔王城の皆が武器を手に整列していた。


「者ども、出撃するぞ! 目標はゾーランド公爵領に出現したという正体不明の存在だ」


「おおおおー!」


 アザトースさんの号令で魔族達は一斉に雄叫びを上げる。


「え? 皆さんも来てくれるんですか? 魔族の皆さんには関係がない事なのにどうして……」


「さあな。それにそんな馬車ではどれだけ時間がかかるか分からん。俺がゾーランド公爵領まで送ってやろう」


 アザトースさんは問答無用で私を軽々と抱きかかえると、漆黒の大きな翼を羽ばたかせて宙に浮く。


「飛ばすぞ。しっかりと掴まっていろ」


「は、はい!」


 私は振り落とされないようにしっかりとアザトースさんに密着してしがみつく。


 奇しくもアザトースさんは私にポメラーニさんと同じ言葉をかけるが、私の心は全く異なる反応を示した。

 私の胸の鼓動がいつもより早いのは、戦場に赴く緊張によるものだけではなさそうだ。





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