表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/56

第43話 商売繁盛


 魔界デパートのグランドオープンから一週間。

 売れ筋商品とそうでない商品の傾向がはっきりしてきた。


 カードゲームを始めとする娯楽品がダントツの売れ行きで、次いで日用品と衣服が続き、最後が食品だ。


 店内の売り場のサイズの配分を調整すると同時に、ポメラーニさんには魔界で売れ筋の商品を優先的に持ってくるようにお願いをする。


 また、消費期限はほぼ永遠とはいっても食品を余らせるのは勿体ないので、食品売り場の隣にレストランを作る事にした。

 買い物が終わったお客さんが休憩も兼ねて寄ってくれればそこで余った食材を消費できるからだ。


 その後もお客さんのニーズに応えながらお店の中にカードゲーム対戦用スペースを設けてみたり、マゾック&ウィザードの世界を描いた二次創作の小説や人気キャラクターのフィギュアの販売、キャラクターのイラストが描かれたTシャツや日用品などメディアミックスを展開。

 果てはパッケージにキャラクターのイラストが描かれているだけの食品の販売といった風な迷走もあったけど、スタッフみんなでアイデアを出し合ってどのエリアも少しずつ売上を伸ばしていった。


 しばらくは物々交換だけで対応していたが、ある時人間界にも行った事があるというひとりの魔族が来店した事で状況が変わる。


 彼は商品を手にカウンターの前に立つと、おもむろに懐からイザベリア聖王国の銀貨を取り出して言った。


「これで支払いはできるかい?」


「何だこれ? 誰かこれの価値が分かる人はいるか?」

「分からん。これは何に使うものだ? 食べ物じゃなさそうだが……」


 通貨を見た事がないお店のスタッフ達は判断ができずに私の下にやってきた。


「あ、お金ですね。懐かしいな、私が教会でシスターをしていた頃の毎月のお小遣いがこの銀貨一枚でした」


「え、この小さいのに一ヶ月分の給料の価値があるんですか?」


 お店のスタッフの給料は基本的に食料などの現物支給だ。

 一ヶ月分といえばいっぺんに持ち帰れるような量ではない。


 スタッフ達は驚愕して銀貨をまじまじと見つめる。

 私は彼らの反応にクスリと笑いながら答える。


「いえ、あなた達のお給料には全然足りませんよ。これはお金といって、イザベリア聖王国では物々交換の代わりにこれと品物を交換する事ができるんです」


「へえ、これにそんな価値があるんですか」


「これ以外にも銅貨や金貨といったものがあって、それぞれ価値が違うんです。この銀貨だとここに並んでいる食品十個分といったところでしょうか」


「そうなんですね。確かにこの大きさならかさばらないし持ち運びが楽ですね。それじゃあ支払いはこれでOKという事でお客さんと話をしてきます」


「お願いね」


 これがきっかけで魔界にもお金の概念が生まれる事となった。

 今はまだ魔界には人間界で使われているような精巧な通貨を作り出す技術はないので、しばらくはイザベリア聖王国から流入してきた僅かな量のお金を回していく事になるが、ゆくゆくは魔界独自の通貨を作っていこうと思う。


 その後もお店には日々大勢のお客さんが足を運び、大盛況となった。


 そろそろ魔界の地方にも支店を建てようかという話が挙がった時だった。


 今日は来訪の予定はなかったはずなのに魔王城にポメラーニさんがやってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ