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第38話 公爵家への使者


「ポメラーニさん、儲かってますか?」


「これはペペロンチーノさん。ぼちぼちですね」


 私は市場で商売をしていたポメラーニさん達とお約束のやり取りをした後、彼らの荷馬車で公爵領への物資の運送の協力を願い出る。


「あなた方にはお世話になりましたからね。もちろん協力をさせて頂きますよ。それにあなたからは儲け話の匂いがします」


「さすが商売人は鼻が利きますね。詳しい話は三日後にシロネの教会でお話しします」


 ポメラーニさんも快く引き受けてくれたので後は各自の準備が整うのを待つばかりだ。



 三日後、シロネの教会に私の計画に携わる一同が集結した。


 まずはアザトースさんが懐から青黒く輝く美しい鉱石を取り出す。


「おお、何と美しい……これは何と言う宝石ですか?」


 真っ先に反応したのはポメラーニさんだ。

 この石の価値をひと目で見抜くとは良い鑑定眼をしている。


「これは魔界の奥深くでのみ採掘できる宝石、魔石です」


「魔石ですと!? どうやって手に入れたのですか?」


 興奮収まらない様子で捲し立てるポメラーニさんに対して、アザトースさんは落ち着いた様子で答える。


「俺が配下の者を使って採掘してきた」


「配下の者? あなたいったい……」


 そういえばポメラーニさんには私達の正体を明かしてなかったっけ。


「あ、この人魔王なんですよ」


「ま、魔王!? ははは、まさかそんな事……」


「百聞は一見に如かずだ」


 とても信じられないといった様子のポメラーニさんに対して、アザトースさんは人化の術を解き、山羊のような角と漆黒の翼を露わにする。


「う、うわああああ! 本物だ!? お、お助けを!」


「案ずるな、お前に危害を加える気はない」


「ほ、本当ですね……? 信じていいんですね?」


 ポメラーニさんは深呼吸をして気持ちを落ちつかせると、今度は私の方をちらちらと眺めながら言う。


「という事はあなたの正体も魔族なんですか?」


 アザトースさんの正体を見た後だと当然そう思うよね。


「いえ、私は人間ですよ。イザベリア聖王国の聖女シェリナです」


「せ、聖女様!?」


 私は浄化の力を自分に掛けてアザトースさんに掛けて貰った変化の術を解き、久しぶりに本来の姿に戻る。


 流れるような銀色の髪に深緑の瞳は私のトレードマークだ。


 直接面識がなかったポメラーニさんも私のこの特徴的な姿を見てひと目で本人だと確信をする。


「これは驚いた。聖女様は魔族に連れ去られたと噂になっていましたが、デマだったのですね」


「いえ、連れ去られましたよ。今は一時帰国をしているだけです」


「???」


 何度も同じ質問をされれば事情を説明するのも慣れてきたもので、要点を掻い摘んで簡単に説明をする。


「なるほど。それでキーラ嬢をぎゃふんと言わせてやる為に一芝居打つわけですね」


「話が早くて助かります。まずはティファニスさんをこちら側に引き入れるところから始めましょう。エミリアさん、そちらの首尾はどうですか?」


「バッチリです。お父様も乗り気でしたよ」


「それは良かった。それでは作戦を開始しましょう!」




 私達の打ち合わせから数日後、ゲルダ侯爵家より遣わされたティファニスの誕生日祝いの品々を乗せた荷馬車がゾーランド公爵の館に到着した。



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