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第34話 シロネの教会

「おいシェリナ、本当に大丈夫なのか? 本職の聖女ではない者の破邪の力ならば恐らく死にはしないだろうが、さすがにノーダメージという訳にはいかない。俺の身体が崩れ始めればもう言い逃れはできんぞ」


 アザトースさんは周りに聞こえないように小声で私に話しかける。


「大丈夫。私に任せて下さい」


 私はそう言うとアザトースさんに抱きついて唇を耳に近付ける。

 これは仲のいい兄妹と思わせる演出と、もう一つ別の狙いがある。


「おい、シェリナ……」


「いいからじっとしてて!」


 普段なら絶対こんな恥ずかしい事はできないけど、今は必死だ。

 そんな事を考えている余裕はない。


「さあエミリア様。どうぞ兄に破邪の力を使ってみて下さい」


「……いいでしょう。これでその者が人間か魔物なのかはっきりします」


 エミリアは膝を折り両手を合わせて祈りの姿勢を取る。


 その瞬間から彼女の身体より破邪の力が放出される。


「くっ……?」


 アザトースさんは身構えるが、一向に破邪の力の影響は現れない。


「ラー……ラー……」


 それもそのはずで、私はアザトースさんだけに聞こえるように、耳元で囁くように小声で祝福の歌を歌っていた。

 エミリアさんの破邪の力によるダメージは私の祝福の歌の治癒力に相殺された為、彼女達には全く破邪の効果がないように見えていただろう。


 数分後、エミリアは祈りの姿勢を解き、立ち上がって言った。


「……確かに何の影響も見られませんでした。ごめんなさい、どうやら私の勘違いだったようです」


 エミリアは潔く自らの非を認め、私達は無事無罪放免となりゲルダ侯爵領への進入が許された。



 領内に入った私達はポメラーニさん達と別れ、クロネの教会の皆さんの行方を探す事にした。


 と言ってもおおよその見当はついている。


 ゲルダ侯爵領の北西、魔界との境界線付近であるシロネという森の中にひとつの教会がある。


 同じ教会の関係者同士、そこを頼ったと考えるべきだろう。


 私達がシロネの教会に辿り着いた時は既に日も暮れかかっていた。


「こんばんはー……」


 私は期待に胸を膨らませながら扉を開けると、教会のシスターが出迎える。


「このような辺境の教会へようこそいらっしゃいました。どうぞ奥へ」


「えっと、私達は礼拝に来たのではなく人を探しているんですが……。以前クロネの教会にいた神父様やシスター達がこちらにいらっしゃいませんでしょうか」


「あら、あの方達のお知合いですか? 今町に出かけていますが、もうすぐ帰ってくると思いますよ」


「本当ですか? それではここで待たせていただいても宜しいでしょうか」


「もちろんです。どうぞごゆっくりなさって下さい」


「ありがとうございます」


 私とアザトースさんはお言葉に甘えてシロネの教会で待たせて貰う事にした。

 それにしてもこんなにあっさりと見つかるとは思わなかった。


 神父様達には今の私の状況を正直に話そうと思う。

 あの人達ならきっとセルベリア聖王国を離れて魔界に行った私の決断を分かってくれるはず。


 シロネの教会で待つ事三十分、ようやく神父様達が戻ってきた。


 私の望まぬ人物を連れて。


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