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第28話 どっちもポンコツ

 イザベリア聖王国に帰る。

 その言葉を聞いてアザトースさんは一瞬戸惑っている様子だったが、直ぐに落ち着きを取り戻して言った。


「ずいぶんと急な話だな。お前が帰りたいというのなら止めはしないが……」


「はい、今までお世話になりました」


 昨日あれからずっと私の部屋にやってきた女性についてずっと考えていた。


 着飾った姿にアザトースさんへの妙に馴れ馴れしい感じ。

 絶対にアザトースさんの配下として仕えている魔族ではない。

 どう考えても身内だ。

 状況から推測されるのは恐らく王妃か側室。


 私の部屋にやってきたのは間違いなく私に対しての牽制だ。


 私が聖女として王宮内で生活していた頃、キーラを筆頭に王太子エイリーク殿下の配偶者の座を狙う令嬢達に何度も嫌がらせを受けた。

 彼女達は皆示し合わせたかのようにマウンティングを取るところから始まる。


 エイリーク様とは幼い頃から遊んだ仲だの、家柄がどうだの、美貌がどうだの、ピアノやダンスの教養があるだの様々だ。


 アザトースさんが私に対して甘いのは誰の目にも明らかだ。

 それを妬ましく思う人がいるのも無理はない話だ。


 しかも私はそれを良い事に、城の中でなく魔界全体を自分の都合が良い環境に変えていこうとしている。


 我ながらおこがましいにも程がある。

 誰も私を止められないのなら、自ら身を引くしかない。


 これが私がイザベリア聖王国に帰ろうと考えた理由だ。


 学校の生徒達の事は気になるけど、道徳について伝えたい事も全て伝えたし、後は彼らが自分で考えて判断してくれるだろう。


 私はアザトースさんに今までのお礼を言うと、出口に向かって足を進める。


 この城からイザベリア聖王国まで歩いてどのくらい掛かるかな。

 途中でお腹がすくかもしれない。

 食堂でパンでも分けて貰ってこよう。


 そんな事を考えながら歩いていると、後ろからパァン!と何かを引っ叩くような音が聞こえた。


「何の音?」


「シェリナちゃん、もう帰っちゃうの~?」


 私が振り向こうとした瞬間、背後から私に抱きついてきたのは昨日の女魔族だ。


 あれか?

 邪魔者を追い出して勝利宣言か?


 イザベリア聖王国にいた頃の私なら迷わず破邪の力で反撃をするところだけど、これ以上この城の人達に迷惑をかけるつもりはない。

 私はおとなしく引き下がる事を決めていた。


「はい、もうこの城に戻ってくる事もないと思いますので安心して下さい」


「えー、そんな寂しい事を言わないで、いつでも遊びに来てよ?」


 素直に身を引くと言っているのに、この女魔族は私を煽ってくる。

 さすがにカチンと来たので私は反射的に言い返す。


「私がここに戻って来たらまたアザトースさんと仲良くしてしまうかもしれませんよ? それでも構わないなら……」


「全然オッケーよ。むしろあの子と仲良くしてあげて欲しいな。あの子色々と不器用だからちゃんとリードしてくれる人がいないと不安なのよね」


「……え?」


 余裕か?

 私なんかには絶対にアザトースさんを取られないって考えてる?

 いや、元々そんな関係じゃないけど、そういう事はあまり油断をしない方が良いよ。

 世の中の泥棒猫達は目的の為なら手段を選ばないものだ。

 足を掬われてからでは遅い。


 経験者の私が言うんだから間違いない。

 そんな義理はないけど、助言だけでもしてあげようかな。


 ……ん?


 ちょっと待って。

 今あの子って言った?


 普通配偶者の事をあの子だなんて言う?


「……失礼ですけど、あなたはアザトースさんとどんな関係ですか?」


「あれ? 言ってなかったっけ。 あたしはあの子の母よ」


「は、母親!?」


「そう、グルヴェイグって言うの。やっぱり酔っ払ってちゃダメね。昨日ちゃんと自己紹介したと思い込んでたわ」


「初耳です」


 先に言ってよ。


 一晩中悩み続けた私の睡眠時間を返して。


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