代替
築50年の校舎に秋の風が吹きつけてる。もう10月の後半だな。衣替えをする奴もいるだろう。
俺?俺は衣替えも何も無いさ。何故かって?見りゃわかるだろ、今から死ぬからだよ。
今、俺がいるのは2つある校舎の内、職員室だのコンピュータ室だのがある2棟だ。1棟は3階建てだが2棟は4階建てだから、当然より高いところから落ちる為に2棟にした。それで、放課後で静かな階段を登ってる。上の階につく度一瞬迷いは生じたが、大河に小石を入れたって水の流れは止まらねぇ。常識だ。とまあそんな訳で、屋上に到着だ。今じゃあちこちの学校で屋上に行けねぇが、何故かうちの学校は禁止されてねぇ。まあ、好都合だな。そして、柵の前で止まった。
何故俺は自殺しようとしてるのか。それは、1週間前に彼女が交通事故にあい、昨日死んだからだ。別に勉強に疲れたとかじゃねーぞ?俺を含めて日本中の学生が思う感情だろうけどな。とまあそんな訳で、彼女と別れるのが嫌で死ぬんだな。だらしないとか踏み留まれとか言いたい奴もいるだろーが、俺にとっちゃ彼女が人生の全てだったんだよ。…あぁ、なんでこうなったんだよ…チクショウ…。
因みにだが…俺は自殺することを一人にだけ打ち明けていた。小学校時代からの親友さ。彼は悲しみつつも、俺の決意が固いことを察してか何も言わなかった。俺と彼とは彼女を奪い合って以来絶交していたが、親身になって聞いてくれたのは友情故にだな。
さて、死ぬか。じゃあな、彼女無きこの世界。
…何故だ。最初に出てきた感情がそれだ。何かが俺をせき止めている。大河に突如ダムが出来てしまったようだ。そして、気づく。別に死ななくてもいいんじゃないか、と。確かに彼女は死んだ。だが世の中にはまだ大量の女共がいるじゃないか。彼女で楽しめなかった分は他の女で補えばいい。そう思うと、自然と笑みが溢れてきたなぁ?はは、こうしちゃいれねぇ。とっとと別の女で彼女の分を補わないとな。と、言う訳で猛スピードで階段を下ったさ。すれ違った進路指導のばばあに変な目で見られたが、そんなのどうだっていい。どうやら、俺の人生は薔薇色のようだ。はは、ははははははははは!
クソッ、何が自殺するだ。幸せそうな顔をしやがって…。僕から彼女を奪っておいて彼女が死んだらすぐ他の女に手を出しやがって…。許せない。あいつが僕に自殺したいと言ってきた時、僕は止めなかった。彼女を奪ったやつとは、一切関わりたくないしね。全く、小学校時代の友情は銀河の彼方へでも吹っ飛んでいったようだ。だがあいつは自殺しなかったどころか、他の女に手を出したのだ。最早、僕自身があいつに制裁を加えなければならない。そう思った。もしかすると、いやもしかしなくても僕を止めようとする人はいるだろう。でも、この怒りを抑えることなんて出来やしない。彼女の仇は僕がとる。そう決めたんだ。
これが終わった後僕はどうなるんだろうな…。彼の家の前に着いてからそう思った。でも、大きな決意にヒビが入る事は無く、僕は昔彼から教えて貰った場所にある合い鍵を取り、彼の家に入った。暗くて見えにくいが、あいつの部屋はわかってる。小学校時代の友情から仕入れた情報でね。さあ、彼女の仇を取るんだ。そう思って、そっと一歩を踏み出した。
後、これが終わった後どうするかは自分で決められる道にするよ。じゃあ、行ってこよう。
朝のニュース番組は一つの話題でもちきりだ。S高校の男子生徒が夜中に別の男子生徒の家に侵入し、中にいた男子生徒を刺殺した後自らも自殺したのだ。この二人は小学校時代から仲良しで有名だったそうで、警察は彼らの間にトラブルがあったかを調べている。何があったんだろう。将来に不安があったのだろうか?それとも…