05 学院内とゴブリン
パーリとは違うクラスになった。喜ばしいが、ターゲットを変えるだけで、誰かが犠牲になるので心が痛んだ。
学院では授業と図書館の往復の毎日だ。新しい知識が増え、楽しい。なまじっか知識があると退屈になるが、過去から遡ってどうやって、今の時代になったのか新な発見があり調べるのが楽しいのだ。
後は週に1度のお茶会があり、友人も出来始めた。恋話が多く、誰々と誰々が付き合っていて、誰が誰を好きだとか……。そういう話しが多い。
この年頃は恋話が好きだからね~。私が104歳の見解を話すと、納得してくれて、この子達も案外考えてるのね、と思ったりしている。
恋する乙女は厄介だ。毎日ボーッとしていて、夢見がちだ。話しが全く通じない。えっ! 何か言ったって感じだ。ほっておこう。と、思いながら私は図書館に向かう。
そんなこんなで時は経ち、学校の組み分け対抗戦が近づいて来た。それが終わると、夏休みだ。
対抗戦は体が弱いと思わせて、メンバーに選ばれないようにした。
対抗戦と同時期に、学院の周りの森に魔物が増えて来ている、との噂が広まり、冒険好きな男の子が森に入ったきり戻らないと言う事件が起きた。
先生が森に入り、戻って来た。
後ろ姿だけだが、メデューサがいるらしいと報告がされ、学院中がパニックになった。メデューサは見た生物を石化する能力を持っている。上級のメデューサにもなると、気配だけで石化する恐るべき魔物だ。
授業を停止、生徒は学院から家に帰された。冒険者によるメデューサ討伐が結成され、森に入っていった。
私は実家に帰る為、アストロ帝都に戻った。そこで聖女に捕まってしまった。
仕事が積もり積もっているとの事で、大聖女の力で対応出来る範囲の物は対応した。
「大聖女様、お疲れ様です」
大聖女の仕事……。それは……ただ働きなのだ。ご飯も出ないの、お金もないので、内職するしかないと、職業斡旋所へ行く。このままでは、実家にすら帰れないのだ。
大通り沿いの職業斡旋所に入る。人が多い。職が無い人がこんなにも多いのか? 何とかしないとな! と、思う反面、私の方も何とも出来ないので他人事ではない。
受付が空いたので、行って見る。
「何か仕事、ありませんか? 短時間で稼げる仕事を下さい」
「何が出来ます?」
「光魔法と聖魔法なら出来ます」
「それでしたら、回復要員として冒険者等はどうでしょうか?」
「では、それで」
「冒険者ギルドに行って、この斡旋依頼の封筒を渡して下さい」
封筒を貰い、冒険者ギルドに行く事になった。
メデューサのお陰で、2カ月の夏休みが3カ月に増え、バイトが出来る状態なのは嬉しい、メデューサが出なければ、バイトも出来ず、高利貸しにお金を借りていたところだ。
冒険者ギルドに入ると、人がまばらだった。この時間帯が人が少ないのか分からなかったが、受付に行ってみる事にした。
「冒険者登録でしょうか?」
「斡旋所からこれを渡されました」
斡旋依頼の封筒を渡した。
受付の女の人は中を開いて読んでいる。
「分かりました、冒険者登録をお願い致します」
何が、分かったのか?
「お金は持っていないのです」
「では、出世払いと言うことで」
お姉さんはにっこりと微笑んだ。
お姉さんは、何か書いているようだ。
「この紙を持って、あそこで立っていて下さい」
お姉さんの言う言葉を信じて、紙を持って立つ。書いている事は『回復魔法が出来ます』と書かれた紙だ。
何やら、物乞いのような感じがする。私を拾って下さい。か、お金頂戴と言っているような感じだ。
この帝国で一番偉い人がこんなんでいいのか? だが、背に腹は変えられない。
今晩の食事すらままならないのだ。これを聖女に言ったところ、私達もそうですとの回答。お金の稼ぎどころは屋台とか郵便配達とか多種に上がった。どうにかしないと飢え死にしてしまうわ。
と、思っているところに、
「回復魔法が出来るのか? うちのパーティーに入らないか?」
とのお誘い。
5名程の少年少女がこちらを見ている。
受付嬢を見ると。親指を突き出して、にっこりしている。
「はい、お願します」
「うちらは、Fランクの冒険者で、孤児院から来ているんだけどいいかな?」
「大丈夫です。私も今、登録したばかりのFランクです」
リーダーらしい、男の子が前に出て。
「俺らは、今からゴブリン討伐に行くけど大丈夫か?」
「ええ、問題ないわ」
大丈夫かと聞いて来たのは、私の何の装備もしていない恰好を見ての発言だろう。
馬車に乗り、目的地に出発した。1日半で着くらしい。途中、野宿をして翌日の昼に到着した。ここから歩きだと言う。
みんなの年齢を聞いたところ、8歳から10歳だと言う。大丈夫?
それぞれの職は剣、剣、索敵、盾、弓だそうで、丁度、回復魔法がいなかったとか。
1時間程、歩いたか……。先行していた、索敵が帰って来た。
ゴブリンの集落を見つけたとか。
「よし、行くぞ」
無理でしょ! ゴブリンとこの子達の背丈は同じ位で、ゴブリンの方が身体能力は高いわ。それも、集落なんて、無謀もいいところだわ!!
「ちょっと待って! 本当に倒せるの? 私は、単体のゴブリン討伐だと思っていたんだけど」
「大丈夫だ。俺達は転んでも泣かないくらいには強いぞ」
子供ですか!!
「ちょっと待ってね! 私が見て来るから、戦っちゃだめよ。討伐依頼個所の剥ぎ取りは手伝って貰うからね」
「簡単なら、別にいいけど」
はあ~! 1人の方が楽だわ。『装備装着』、収納指輪から、杖とマントと帽子が出て、勝手に自分に装着した。
「こっちに固まって!」
集まったところで、
「『強化結界』、サンクチュアリ」
「戻る迄、そこの結界から出ては駄目よ」
索敵が戻って来た方角に歩き、集落を見つけた。
集まったところを見計らい、
「『広範囲光魔法』、アストラルウェイブ」
巨大な水平な波動が、ゴブリンの胴体を切断して行く。見えている範囲のゴブリンは死んだようだ。血の海になり、肉塊がゴロゴロと転がっている。だが、どこかで隠れている事が想像される事から、自分自身に『強化結界反射』を張り巡らせた。
『強化結界反射』は、結界に攻撃した者に対し、攻撃を反射する便利な魔法だ。
生きている、ゴブリンがいないか、集落を散策する。
土の中と草むらの中から、突然ゴブリンが出てきて、刃物を私に突き立てた。だが、『強化結界反射』で自分自身を刺す事になり、自滅する事になった。
「『生命探知魔法』、ライフディテクション」
数体のゴブリンが死んだ振りをしているのが分かり、そのゴブリンを杖で刺していく。
子供達を呼んで、討伐依頼個所の剥ぎ取りを一緒にしたが、いつもより疲れているのが分かる。
はあ~! 疲れる……。子供のお守りはこりごりだわ。
帰りの馬車の中で、
「楽しかったから、もう一度やろうぜ」
と、言われたが、丁寧にお断りした。