04 大聖女
聖女は先頭をスタスタと歩き、聖女の塔の1階迄エレベータで降り、大扉を開けた。そこには大勢の上位聖騎士、上位聖魔法師が集まっていた。
聖女は突然、大きな声を張り上げて、告げた。
「みなの者、大聖女様が転生なされました」
全員が片膝になり、頭を垂れた。
「今後、大聖女様を中心にアストロ帝国は益々の発展を迎える事になるでしょう」
みなが歓声を上げている。中には涙を流す者もいた。それだけ長年、大聖女が不在な為、聖女間での派閥争いが起こっていたと想像がつく。
早速、祝賀会が開かれる事になったが、私はアストロ聖魔法学院に入学する為に
アストロ帝都に来たのだ。なぜ、こうなったの?
◇
現在、アストロ宮殿の応接間で私の向かいに、聖女10名とアストロ皇帝がソファに座っている。
私が話しがあると、皆を集めたのだ。アストロ皇帝ですら、大聖女の前では部下にしかならない。大聖女の権力は最上級なのだ。
「私が、ここアスタリア帝都に来たのは、アストロ聖魔法学院に入学する為です。便宜を図って貰えますか?」
「学院の学院長には私の方から言っておきます」
アストロ皇帝は、私が学院に入学するのは賛成のようだ。学院長くらいには素性を明かしてもいいでしょう。
「私がアストロ聖魔法学院に入学するのが不満な方はいますか?」
「申し訳ありませんが、大聖女様の決定事項は絶対なのです。命令するだけで、全貴族は動くでしょう」
「ありがとう、では、祝賀会は行いません。又、私が大聖女と言うのは秘密事項です」
「はい、かしこまりました。ですが、聖女の塔の下で、派手に宣言してしまいました」
「その者達にも通達の程、宜しくお願い致しますね」
「ははっ」
それでは、宿屋にお金を取りに戻って、教科書と文房具を買って来なければいけないわね。
というわけで、帝都に詳しい人を呼んできて貰い。教科書と文房具を買おうと思う。その事を話すと……。
「それでしたら、聖騎士を50名程、護衛にします」
なんで、そうなるの? 私の話し聞いていた?
「護衛は2名迄とします」
「ははっ! かしこまりました」
そして、教科書と筆記用具はつつがなく買う事が出来。出発の当日になった。
緊急な連絡はマジックアイテムで通信出来るようにした。又、大聖女の印として
アストロ皇帝の刻印ペンダントを貰った。
「さて、出発するか」
学院バスに乗り込み、新入生らしき生徒も乗って来て、場所を確保しようとしている。私が座っていると、
「おい、お前! 邪魔だからどけよ」
私は知らない振りをした。こう言う輩は無視に限る。
「俺はベスタ魔法家のパーリだぞ!」
「パーリ様は公爵様の御子息だぞ! そこをどけ」
取り巻きが言った。
そして、殴り掛かって来た。
私は、結界を張って反射した。一部始終をミラービューに記録して。
「いって~!! 魔法を使ったな? 先生に言いつけるぞ!!」
「どうぞ」
今度から、目立たないようにバスの中では立っていよう。
アストロ聖魔法学院に入学するにあたり、目立たない事をモットーとする事にした。眼鏡とおさげ、そばかすでカモフラージュして、ぱっとしない小娘を演じる事にしたのも、ラークス騎士家に迷惑が掛からないようにと思ったからで、大聖女を隠す為ではない、だが大聖女がバレれば、ここにはいられないだろう。
そうなればそうなれだ!
周りを見れば、まだ12歳の子供がいる。泣いている子供もいれば、喧嘩している子供もいる。
私の精神年齢は前世の大聖女の寿命104歳なのだ。先々、前途多難だわ。
まだ、この時代の事が分かっていない。他国はどうなっているとか、歴史は? 産業は? 勉強する事が多すぎる。ここは勉強だけにして、子供にはあまり関わらないでおこう。
だが、絡んで来る奴がいるんだよな~。さっきの公爵がまた来て、手を引っ張り、どかせようとしている。
ハイハイどきますよ。立って、手すりにつかまる事になった。後、到着まで2時間はある。
でもここでも勉強は出来るのだ。このバスがどうやって動いているのか透視で確認したり、これから関わる、子供達のステータスを見たり。
そうこうしている間に、アストロ聖魔法学院に到着した。
担当の先生らしき人が来て、
「1年生はここに集まって来てくださ~い」
みんな、大きなカバンを持って来ており、動かすだけでも大変みたいだ。
私の荷物は収納指輪に入れているので、問題ない。
ここでも、公爵は私に絡んで来る。
「お前は下級貴族だから、荷物がないのか?」
取り巻きが笑い出した。
ここでも無視だ。違うクラスになればいいなと思うが、我慢が出来ない場合は、こいつの父親を失脚させて学院を退学させる方法もある。それは最悪の場合だ。
私は、大聖女の権限を私欲で行使するのは違うと思っている。そんな事をすれば、忽ち大聖女の地位が落ちるのだ。
ただ、パーリの父親の公爵は大聖女からの信用が無くなる為、今後の人生は茨の道になるだろう。こういう輩は何人いるんだろうか。