03 捕まってみる
エレベータで下に降りて行き、大聖女の塔の大扉の前に立つと、自動に轟音と共に開いて行く。
うわっ!! なんて数なの? みんな武器を手に構えているわ。
『隠蔽』
そそくさと、この場を退散しましょう。
1人の女性が前に出てきた。おそらく聖女だろう。昔と変わらない聖女だけが許される服装を着ているからだ。後ろにも9名の聖女の服装をした女性が並んでいた。
「まてっ!! 『隠蔽』で逃げようとしても無駄ですよ。『ホーリーアロー』」
的確にこちらに攻撃して来た。
『絶対結界』
『絶対結界』で『ホーリーアロー』を跳ね返した。
『隠蔽』は解かれた。『隠蔽』は魔法、スキルを発動すると、解けるのだ。
下を見ると、石灰がまかれていて、足跡が残っている。よく考えたわね。
「あなたは何者です?」
聖女から当たり前の質問が飛んできた。
「大聖女以外に考えられるかしら」
私がそう告げると、聖女は驚きの表情を作った。
「あなたを捕縛します」
私は拳を顎につけて、少し考えてみる。
この場を逃げ出す事は簡単だわ。でも、これから追ってが来ないかビクビクしながら生きて行くのは嫌だ。身の危険を感じたら逃げればいいだけでしょう。
「捕縛の必要はないわ。どこにでも連れて行きなさい」
「では、こちらに来なさい」
とことこと聖女に付いて行く。聖女の塔に連れて行く気だ。
聖女の塔の中には、聖女1名と聖騎士が20名が中に入った。
聖女の塔の中は大聖女の塔とあまり変わらない。しいていえば、大聖女の塔の方が豪華な装飾品がある事くらい。
エレベータに乗り、ある階に停まり、廊下を歩いて行き、ある部屋に案内された。
拷問より話し合いを取ったようだ。ここは応接室だ。
まあ、聖女に拷問の仕方を教える輩はいないのだから。
中に入り、長テーブルを挟んで、お互いソファに座る。聖女の後ろには聖騎士が並んで護衛している恰好だ。
「それでは聞きましょうか。あなたは自分自身を大聖女と名乗りました。返答次第では偽証罪で死罪になります」
こわっ!! 適当に答えて、ボロがでたら、殺されるわ!! ここは正直に話した方が良さそうね。
「私の名は、サラ・デ・ラークス。侯爵の4女。大聖女の転生者です」
「それを証明する事は出来まして?」
証明って! 大聖女の塔に入れるのは、大聖女しか出来ないのを知らないの?
「大聖女の塔の結界を破った事。大聖女の塔に入れた事では証明にならないかしら」
「それでは不十分です。長年掛けて何らかの方法を見つけて、結界解除、中に入ったと見られてもしょうがないでしょう」
そんな事を言えば、何でもありでしょうに。なんだかムカムカしてきたわ。
「では、どうすれば、信じてくれるかしら」
「『リザレクト』を見せて頂けるでしょうか? 大聖女だったら出来るはずですよね!」
出来る訳がないと言った、物の言い方だ。やってやるわよ!!
やるには、誰かを殺さないといけない。今、ここにいる聖騎士は上位聖騎士のはず。殺せるかしら。
「では、誰かを殺して下さい」
「ミハイル」
「はっ」
「あなた死になさい」
何の、表情も出さずに聖女は命令した。
冗談でしょ! 大切な部下に自害しろと!!
ミハイルと言う男性青年は扉の前に行き、短剣を喉に突き当てた。膝がガクガク、汗がダラダラ流れている。たぶん、この聖騎士の中では位が低くて指名されたのだろう。
この聖女、異常だわ。そして、なぜ、誰も止めないの???
ミハイルは首の動脈を斬り、血飛沫が勢いよく飛んだ! そして……、前のめりで倒れた! 私は立ち上がり、『エクストラヒール』を施そうとした。
「まだよ、まだ死んでいないわ」
鬼か!! 人が死んでも何も感じない、その表情は何なんだ!!!
ミハイルの体はピクピク痙攣をして、やがて……痙攣もなくなった。
私は、人が死んでいくのを初めて見て、動揺が隠せない。それを聖女はニヤニヤしながら見ている。
「も……もう、いいかしら」
「もういいわ。さて、『リザレクト』を見せて頂戴」
この女の非情さはどこから来ているのだ!!! 人が死ぬのをニヤニヤしながら笑っている人間がこの世にいる事が信じられない。私は覚悟を決めた。
「それでは、『リザレクト』」
ミハイルの体が白く発光し、徐々に発光が消えて行った。
ミハイルは四つん這いになり、足を床につけて、立ち上がった。目はキョロキョロしている。冥界を彷徨い、いきなり引き戻されたのだ、無理はない。
全員が目を見張っていた、だが徐々に我に帰り。全員が扉の前に行き、片膝になった。
「大聖女様、お帰りなさいませ」