02 聖魔塔
アストロ聖魔法学院はお城のような外見であり、周りは森に囲まれている。端から見ると隔離されていて、来るにも出るにも移動手段は学院バスしかないと言う。全寮制で、4年制、制服は魔法師らしく魔法の帽子とマントを支給される。
入学式の10日前に寮の部屋の割り当てがあると連絡があり、早速学院バスが出るアストロ帝都に向かう事にした。
父の領土からアストロ帝都への道のりは3日の行程だ。早めにアストロ帝都に着き、やりたい事があった。
アストロ帝都の中心には聖魔塔があり、その塔には私が大聖女の時に使用した私物が保管されていて、それを取りに行きたいのだ。
ただ、入れるかどうか分からない。大聖女として塔が認識してくれるのか……。
アストロ帝都にある、4つの塔。真ん中の一番高い塔は大聖女の塔と呼ばれ、後の3つは聖女の塔と呼ばれている。その4つの塔は私が作った物だ。
父には2日前には到着して、教科書等を買わないといけない事を報告し、15日前に馬車で出発した。
馬車の車輪に補助魔法を掛け、3日の行程を2日でアストロ帝都に辿り着いた。
アストロ帝都の城壁門のところで御者とは別れ、貴族門に行きラークス騎士家の紋章を出すと、すんなりと入る事が出来た。
門を潜ると、地平線が見える程の大通りがあり、人が溢れ返っていた。地平線の向こうには塔が4つ並んでいるのが目立つ。私が作った塔を中心に帝都を作ったのだろう。
「さてと、まずは宿屋を探さないといけないわね」
これからの買い物の事を考えると、節約しないといけない。大通り沿いの高そうな宿屋が並んでいるので、裏路地に良い宿屋が無いかと脇道に入ると、ガラリと雰囲気が変わった。大通り沿いの建物は漆喰で白く塗られていたが、裏路地はレンガ作りになっていた。
「これは、懐かしい感じだわね」
建物の前で立っていた獣がやって来た。猫耳の女の子だ。
「宿屋を探してるかにゃ?」
感がいい獣ですね。獣特有の察知能力でもあるのかしら。
「そうですが、空いてますか?」
「空いてるにゃ。来るにゃ」
これで、宿屋の確保が出来たわ。買い物は明日に回して、今日の夜は塔に行こう。
宿屋で夕食を取り、塔に行く準備をする。ラークス騎士家にあった黒のフード付きマントと黒のパンツを穿いて目立たなくした。これでは、盗賊ね。でも私が大聖女だと言う事は内緒だから、しょうがないわ。
暗闇の中、『隠密』スキルで塔に向かう。
塔は厳重な見張りと結界が張られていたが、ススッと、風が通るような感じで通り過ぎる。
「雑な結界だわ」
さてと、私の塔に辿り着いたわ。これからね。私の上級結界魔法を解除しないと。
『上級結界魔法解除』
そして、横にある魔力装置の水晶に私の魔力を流し込み、魔力が一致すると塔の大扉が開くはず。ドキドキするわね。でも一致しなくても何も起きないはずだわ。その時は諦めて帰るだけ。
魔力装置の水晶が光し出した。
「一致したわ!!」
塔の大扉が轟音と共に開きだした。そして中に入ると、大扉は閉まった。
大きな広場の中心にエレベータがあり、中に入り、最上階に行く。
最上階の私の部屋に入り、机の引き出しから収納指輪を取出し、私の衣服と杖、数個の指輪を取出し収納指輪に入れた。
さてと、下では警備員が待ち構えていると思われる。ここから出るにはこの塔を壊さないといけないが、この帝都にシンボルを破壊するには気が引けた。
下に降りて行き、『隠蔽』で通り過ぎましょう。