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寝起きの彼女


 朝、いつもよりも少し早く起きる。

今日はガーネットと旅立つ日だ。

しばらくこの地を離れるので、少し寂しく感じる。


 朝ごはんの準備を軽くすませ、身支度を整える。

しかしガーネットはまだ起きてこない。

おかしいな、そろそろ起きてもいいころだと思うんだけど……。


 少し気になり爺さんの部屋へ。

扉の前でガーネットに声をかける。


「おーい、ガーネット。そろそろ起きないか?」


 しばらく待っても返事がない。

しかも部屋の中から音もしてこない。

おかしいと思い、扉に耳をつけ中の音を探ってみる。

中から変な音が聞こえてきた。


『……っうぅ。はぁはぁはぁ……。んぅぐうぅ……』


 なんだ、この変なうめき声は。

も、もしかして熱でも出たのでは!


「入るぞ!」


 ガーネットの身に何かあったのか、俺は扉を勢いよく開け、中に入る。

カーテンも閉まっており、ややうす暗い部屋。

昨日ベッドに寝たときの姿のまま、ガーネットは布団に入っている。

近くまで行き、表情を見てみると、なんだか苦しそうにもがいている。


「うぅ、あぁぁ……。んっ……」


 少し顔も赤く、肩で息をしているようだ。

そっと額に手を乗せるが熱はない。


「ガーネット! どうした! 大丈夫か!」


 ガーネットの肩に手をかけ、少し強めに揺らす。

少し頭もがくがくしているが、この際問題はないだろう。


 ゆっくりと目を開けるガーネット。

その瞳は俺をまっすぐ見ている。


「きゃ、きゃぁーーーー!」


――びたーーん!


 突然ガーネットの平手が俺の頬を襲った。

い、痛いじゃないか。


「おい、いきなり何をするんだ」


 目をぱちぱちさせながら、ガーネットの手は布団を握りしめている。

少しおびえたような表情。俺が何かしてしまったのか?


「ご、ごめん……。急に起こされたから、びっくりしちゃって」


 本当にそれだけなのか?

俺はテーブルに置いてあるコップに魔法で水を入れ、ガーネットに渡す。


「ほら、これでも飲んで少し落ち着いたらどうだ?」

「ありがとう。……ねぇ、私何か言っていなかった?」

「いや、時に何も言っていない。少しうなされていただけだ。嫌な夢でも見たのか?」


 水を飲みながら頷くガーネット。

怖い夢でも見たんだな。


 俺は立ち上がり、カーテンを開ける。

日の光がガーネットを照らし、金色の髪が輝いている。


「改めて、おはよう。少しは休めたか?」

「うん。おかげ様で。朝からごめんね、痛かったでしょ?」

「たいしたことない。それよりも朝食の準備が終わっている、一緒に食べようか」

「うん。着替えたらすぐに行くね」


 俺は一足先に部屋を出て、ガーネットを待つ。

しばらくすると身支度を整えたガーネットが部屋から出てきた。


「お待たせ。もう準備はできたの?」

「あぁ。昨夜のうちに済ませたし、あとは少しかたずけたら出発できる」


 朝食を二人で取りながら、これからの事について少し話し合う。

ガーネットは主に後衛として回復や支援を行っており、攻撃は主に魔法一択。

昨日のオークとも戦闘になったが、魔力が切れかかったらしい。


 魔法は便利だが、魔力を完全に使い切ると気絶してしまい、しばらく動けなくなる。

一人旅では危険な行動だな。

昨夜の事をガーネットに告げると、目的地を赤の線の差す先に決まる。

一体どれくらい離れたところに向かうのか。俺には想像もできない。


 食事を終え、最後に掃除をする。

しばらく留守にするけど大丈夫かな?

玄関の戸をしっかりと閉じ、結界石を設置する。


「ずいぶん立派な結界石ね」


 ガーネットがまじまじと結界石を見ている。

そうなのか? 立派なのか?


「爺さんと遠出をするときによく使っていたんだ。これでしばらくは大丈夫だろ?」

「そうね。でも、近くを通ったら帰ってきましょうね」

「そうだな。ちょっと出発前にいいか?」


 俺は大きな木の根元に行き、爺さんに挨拶をする。


 しばらく帰ってこないけど、心配しないでくれよな。

外の世界を見てくるよ。爺さんももともとは外の世界にいたんだろ?

どうして、俺と二人でここに住んでいるのかは、結局教えてくれなかったな。


 爺さん、今までありがとう。

剣の使い方を教えてくれたり、狩りの仕方も、生きる術も全部教えてくれた。

だからガーネットを助けることもできたんだ。

爺さんのおかげだな。また、帰ってくるよ。行ってきます!


 最後に爺さんに水をあげる。

爺さんは俺の出す水をいつでも喜んで飲んでくれた。

うまいのか、好きなのかはよくわからない。

息を引き取る時も、最後に飲んだのは俺の出した水だった。


「行こうか」


 振り返るとガーネットが立っていた。

ぼろのローブを身に着け、フードから金色の髪がはみ出している。


 ガーネットは俺の隣を通り過ぎ、フードをはずす。

風が吹き、ガーネットの金色の髪が風になびく。


「ライトのおじいさん。行ってきます。きっと、無事に帰ってきますね」


 笑顔を爺さんに見せ、そのまま俺の腕を取り、走り出す。

俺はその腕に引かれ、ガーネットの後を追う。


「ライト、今から私たちの冒険が始まるよ」


 森のけもの道を進み、俺が住んでいた家がどんどん小さくなっていく。

内心少し寂しいと感じているけど、きっとこの先楽しいことも待っているはず。

握られた腕には、彼女のぬくもりを感じる。

 

「初めはどこに向かうんだ?」


 彼女は振り返り、笑顔で答える。


「赤い線が差す方。交易都市ダイセンに行こうと思うの」

「ダイセン?」

「そう。人と物とお金が集まる都市。きっと、何か情報があると思うわ」


 すると向かっている先に魔物の気配を感じた。

何かいる……。


「ガーネット! 向こうに何かいるぞ!」


 ガーネットは足を止め、ゆっくりと歩き始める。


「どこ? 向こうの木の陰かしら?」

「多分そうだ」


 足元に落ちていた小枝を拾い、けもの道の先へ投げつける。

すると、気の陰から黒いオオカミが数等出てきた。


「ダークウルフ……。しかも三匹」


 ガーネットが俺の後ろに隠れた。

目の前のウルフを見ながら、ふと考える。

うーん、今夜も肉になるのか?


「ガーネット?」

「三匹は厳しいわね。ライト、私の魔法で何とかするから、逃げましょう」


 え? たった三匹相手に逃げるのか?


「三匹しかいないぞ? なぜ逃げる必要が?」

「三匹だからよ? 一匹なら何とかなるのに……」


 言っている意味が良くわからない。

確かに三匹一気に食べるのは大変だ。

二人でも一匹がいいところだろう。

でも、ほかの二匹はマジックポーチに入れておけばいいじゃないか。


「二匹もらってもいいか? ガーネットにも一匹はあげるからさ」


 ガーネットの返事を聞く前に、俺は腰の剣を抜き、ダークウルフに向かって走り出す。


「え? ちょっと! ライト、待ってよ!」


 後ろの方で何か叫んでいるガーネット。

そんな声を聞きながら俺は剣を横なぎに払った。


――スパァァァァン


 一振りで三匹のウルフが地面に倒れる。

これならオークの方がよっぽど大変だ。


「さて、とりあえず血を抜いておくかなー」


 ウルフの首を切りその場で血を抜く。


「ライト?」

「終わったぞ。一匹はガーネットにもあげるからさ」

「そ、そう……。悪いわね」


 俺から少し距離を置き、離れて歩くガーネット。

なんだろう、変なこと言ったのか?

ポーチには今日の肉も入った。今夜も贅沢に肉が食べられそうだ。


こんにちは! 作者の紅狐です。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

やっと旅立ちました。

向かう先に何が待ち受けているのか、二人の関係はどうなっていくのか作者は結構楽しみだったりします。


もし、よろしければ当作品の応援をよろしくお願いいたします。


画面下の方にあります ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ にしていただけると作者は大変喜びます。

また、ブクマも合わせてよろしくお願いいたします。


それでは、引き続き当作品をよろしくお願いいたします!

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