子
だいぶ長らくお待たせしました。
あの日ここで一体何が起きたのか。
その手掛かりを持つのはこの病院と涼介という少年。
ないはずのものが存在しいるべき少年がいなくなった世界で何が起こっているのか。
リュックサックには前回にまして荷物を詰めてある。
懐中電灯を2本と替えの電池2セット、水筒、タオル、テント、武器になるかわからないけど折りたたみ式のスコップと過去に富士登山に使用した金剛棒を用意してある。
「見つけた」
前回来たのは3年前。もうすでに私も高校生だ。
この3年間何度もこの場所を訪れたが再びこの廃病院にたどり着けたのはこれが初めてだ。
「長かったね……涼介」
私の記憶にしか存在しない少年に声をかける。
もちろん返事は帰ってこない。
「行こうか」
前回来たときは触ったらガラスが崩れ落ち、ガラス片にダイブしかけたので警戒をする。
「声はまだ聞こえないか」
どうも独り言が増えている。
長い病院でのリハビリ生活で一人でいることが多かったからだろうか。
「ともかくどうしようかな」
実はこれ程の用意をしたはいいものの全く持って無計画だった。
正直ここに来ること自体がどういうわけか難しかったので取り敢えずここまで辿り着くことが目標だった。
着いてからのことはその時でいいや。なんてすら思っていた。
「取り敢えずあの場所行こうかな」
あの場所。
私の記憶の中で4階の非常階段から落ちたところで終わっているのでその落下点。
あの時一緒に落ちたであろう階段の一部とかが見つかればいいなという希望的観測だが行って見る価値はある。
「今のところ記憶の中の風景と変わるところはない……と」
注意深く辺りも観察しながら歩く。尤も記憶力がいい方とも言えないので曖昧だが。
「ここか……改めて見ると高い……よく生きてられたな……」
いやバイクの轢き逃げだったんだっけ?
この辺は変に記憶がごちゃごちゃしててわからない。
どっちの記憶が正しいのか。
「何も落ちてない……っと」
辺りの茂みも探して見たが何一つ見当たらない。
そもそもこの場所自体謎に満ちているため何もないとも言えなくもない。
この前ここに来てみたら空き地だったり木が生い茂ってたりと姿を変えていたのだ。
その後も特に何も見つけられず一周して正面へ。
記憶通りの手順で現場検証がいいという結論に至った。
「あれ?」
暗くなってきたのでなんとなく腕時計を見てみたら針が止まっていた。
「前回来たときは正常に動いていたのに」
電池切れか?
腕を振ったり時計を叩いたりして動くか試してみる。
「故障か……買い替えどきかな……っ!」
気配を感じた。病院とは反対側だ。
「―――虫除け持ってんならもっと早く出してくれよな」
「同意」
あれ?この会話って……
「着いたぞここだ」
「何よここ……あら?」
「あ」
目があった。
そこには5人の中学生。
大輝、結花、智也……涼介。
そして中学生だった私、琴葉。
ありえない遭遇に声が全く出なかった。
続く
登場人物紹介
琴葉 高校生。この話の語り部にして主人公。
涼介 故人。謎を解く鍵の可能性大。
大輝 中学生。病院前にて出会った。
結花 中学生。病院前にて出会った。
智也 中学生。病院前にて出会った。
涼介 中学生。病院前にて出会った。
琴葉 中学生。病院前にて出会った。
何話完結か決めてないので(仮)ついてます。
次回も少し期間を開けてから投稿します。