表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

野生の隣人に学ぶ

作者: 紅白

遅い起床時刻を迎え

私は外へと駆けていく

私にとっては早朝の

世間にとっては真昼間の

ほんのりのどかな田舎道を

私は気ままに走っていく

周囲にあるのは

田んぼ 草花 木々

遠くにあるのは

霊峰 青空 羊雲


私のたてる足音に

私の作る黒影に

私という人間に驚いて

葉に擬態中のバッタが逃げる

交尾中のトンボが逃げる

羽休め中のスズメが逃げる

田で餌をあさるサギが逃げる


横へ逃げれば良いものを

前に逃げるものだから

私はすぐに追いついて

彼らは再び前へと逃げる

それを二度だか三度だか

繰り返した後彼らはようやく横へ逃げる


『逃げなくたって襲いやしない』

つぶやきかけたそんな言葉を

私はごくりと飲み込んだ

足元にグシャリとくたびれるのは

車のタイヤに踏みつぶされた

トノサマバッタの無残な死骸


彼らは逃げる意味を知っている

逃げることを弱さとつなげ

忌避にも至る人間よりも

はるかにそれを知っている

そんな逃げ慣れた彼らでさえ

上手く逃げられるようになるまで

いくばくかの時を要する

ならば私たち人間は

何度下手に前へ前へと逃げているのだろう


横へ逃げてみさえすれば

追いかけてくるものの正体がわかるだろうに

追いかけてくるものの目的もわかるだろうに

追われているという強迫観念に支配され

その選択肢さえ見えないまま

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ