四、
向日葵は一人縁側に座っていた。向日葵は気付いていた。最近は日暮れも早くなり、夜になると秋の虫が鳴くようになった。それが示すのは夏の終わりだ。
「早いもんだな」
体育座りをして、向日葵は風鈴を例の見上げる。
「あの風鈴も、もうすぐで・・・・・・」
取り外されるだろう、いやいやと彼女は首を振った。自分のこの手であの風鈴を外すのだ。あの風鈴はもう直ぐで今年の役割を果たす。
「おめでとう」
と礼にも及ぶ心持ちで、そう言葉にした。
変わっているな、と他人事のように彼女は自身を思う。
向日葵は側に寝ていた愛猫にハグをするようにした。
「なー、ごましお。私、変わってるよね」
面倒くさそうににゃーと長い声で鳴き、ごましおはそっぽを向いた。ごましおは過去に何回も同じ人物に、その返事を要求されていた。
「はいはい、めんどくさい女ですよー私なんて」
なにもがどうでもよく思えてきた向日葵は寝っ転がった。ごましおは『やれやれ』とばかりにその腹の上に香箱座りをした。
気付けば男友達に起こされていた。寝顔を見られたかと思い、勢いよく起き上がる。笑い声が聞こえた。最悪だ、と隣を見るとごましおは居ない。向日葵はおーい、と心の中でその名前を呼んだ。
「よく、寝てたぜ。ぜんぜん起きねーんだもんこいつ」
田中が大きな声で笑うもんだから、佐藤も釣られて笑うもので縁側がうるさくなる。きっとごましおはこの
野朗らに構われたくなかったのだろう。向日葵はその気持ちを誰よりも分かるつもりでいた。
大きなため息をついて、ミディアムショートをかきあげる。しかし乱雑なかきあげ方で、そこに粗雑さが現れる。
「ほんと色気も何もねーな」
田中の意見に佐藤も同意を示す。一方でもっぱら心底どうでも良いと彼女は右から左に流す。男ならいらない、これが向日葵の口癖だ。
あ、と三人は縁側から空を仰ぐ。快晴の空はもう暮れかけで、橙色と薄く赤い紫が微妙に段階的に推移している。それを背景に夕焼け小焼けがアナウンスで流れた。
「二人とも、さぁお帰りなさい。もう家に帰るじかんですよ」
不覚にも張り詰めた空気になる、田中と佐藤は去っと立ち上がった。