十二、
田中、佐藤はコンビニの前に二人しゃがみ、肉まんを頬張っていた。空気の冷たさが一層寒い中だった。
「佐藤」
「ん?なに」
佐藤は関心が無さそうに、肉まんのコリコリしたものを不愉快そうに噛みながら一応返事だけをする。
「向日葵さ、可愛くなったよな」
「ああ、そうだね」
佐藤は肉まんから顔を離した。アスファルトに枯葉が転がった。田中は佐藤を呼ぶ。佐藤は返事をしながら何かを察した。田中が言う前から目を見張る。
「俺さ、向日葵に恋してるんだ」
なんだその言葉のチョイス、と佐藤は心の中で笑いながら真摯に聞くを努める。
「そう、か・・・・。でも、向日葵には南が」
その名前を出すと、田中は勢いよく佐藤に向かい合う。
「そうなんだよ、そうなんだよ! なのにあいつはなにもアタックしないで見守ってるじゃんか、はっきりしろ男なら! 」
まるで佐藤に言っているように言う田中に対し、佐藤はそうかそうかと両肩をぽんぽんと叩きまず元の所に座らせる。
「言い分はわかるが、田中。お前には無理だ諦めろ」
佐藤は田中には正直である。その普通の地味なヘアスタイルの黒髪が風の波に乗り揺れた。田中の坊主頭は相変わらず寂しそうだ。
それに、と田中は一言足す。
「向日葵は絶対あんなキャラじゃないし、田中のことバカだと思ってるから無理だ。南には読書という共通点がある。だが俺らには何もない」
そこで田中は首を僅かに傾げて「お前も、好きなのか」と珍しく確信をつく。佐藤は苦虫を噛み締めるような顔をしてうなずいた。
「仕方ないさ、諦めよう」
さぁ、と二人は立ち上がった。
「今日は帰りたくない、田中俺はそこらへんぶらついてるわ」
「お、じゃ俺も」
親に怒られるかもな、とはにかんだ田中に佐藤はため息をした。こいつは、本当に。と、
夜道のアスフォルの上で男二人はとぼとぼと歩く。地味な二人だ。あの教室に流れる賑やかで楽しく殺伐とした空気に同化しているような立ち位置の二人。そして、二人はそこに辿り着いた。土手だ。
「・・・少し覗いてみようぜ」
「ダメだろ、怒られるぜ」
田中は佐藤の制止も聞かずにズカズカと歩いていく。単細胞とはこのことだなと、痛感した佐藤。とか言って自分も実は見たいので、歩いてそこへ向かう。そして肝を潰した。
「だれだ? 俺に何の用だ?」
ロッキンな格好が似合っているどちらか見分けがつかないほど中性的な美しい人だった。
「いや。別に気になって入っただけです」
「はい、田中の言う通りで悪意は・・・・」
大丈夫、大丈夫と立ち竦む二人をアンは笑った。
「大丈夫だって、なんで俺見ると怖がるのさ」
田中と佐藤はその眩しさに目を細めた。
「女性がこの時間に、一人で大丈夫ですか? 」
田中は察した。その目に涙が込み上げていたからだ。あ、アンはとたじろぐ田中等に向かって突然立ち上がり「行こうぜ」
そう言って歩き出したのだ。時刻は十九時。
その長い足でアンはどんどん先頭を切り歩く。二人は少し空間を開けてついて行った。
連れて行かれたのは、ショッピングモールだった。「買い物、つきあってくれよ」と、アンは笑う。二人にはそれがから元気に映った。
アンは二人を連れて店を次々廻り、最後に手に取ったのは柄シャツであった。メンズのである。佐藤は田中が何度も、それ、レディースじゃないですよねと確認したがるのを肘をついてよしなさいとなだめた。
田中と佐藤は片手にビニールのカラフルな重たさのある袋をぶら下げてこなきゃよかったと、絶望して歩いた。だが最後についたのはファミリーレストランで、二人はその椅子に座った瞬間に、体が重くなった、
「ありがとうな、二人とも」
えっと、田中と佐藤だったけな。と名前を探すので二人は先に自己紹介をした。
ハンバーグに食らいつくアン。女気もなく、二人はいよいよどちらなんだろうとふつふつ考える。佐藤はよく観察してみて、分かったところが一つだけあった。これが、彼女なんだと、いつか向日葵が学校に来なくなったときの噂の相手。
確かに一緒にいると安心感がある。と佐藤は耳の後ろを掻いた。悪い人ではないのは確かだった。ただ、その目に何か悲しみを感じるのは何故だろうと、ここに一人佐藤はその目の奥を覗いた。




