十一、
移動手段は電車と、バスだった。集合場所は高校の最寄りにある駅だった。
服は意外にも母がこだわった。ショートパンツは向日葵の場合童顔だからと、娘の意見は聞かずにスリットに花柄が入ったロングスカートに決めた。母がよそ行きに向日葵に着せる服だ。群青と白のコントラストが大人の雰囲気を出していた。
その姿を見たとき、三人は目を見開いた。似合うのもそうなのだが、彼女がここまで洒落しているのを見たことがないからだ。
「ひま、頭大丈夫か・・・? 」
と田中が本気で心配してくるのを、ひまりは小さい声で「正常」と完結させて他二人は笑った。「本当、ひま変わったよね」佐藤は嬉しそうに笑っている。
「俺のお陰だな」
後ろで、南が得意げに笑っていた。そんな彼を見た田中がわざとらしく口をとんがらせて「いいよなー、南は。何言ってもかっこいいもんな」と口笛を吹く。
「顔は普通だよな? 」
南は向日葵に顔を向けた。田中と佐藤は薄々気付いていた。南は、向日葵には目が穏やかだと。勿論、二人に対して冷たいわけではないのだが。
向日葵は頷いた。「そこは、嘘でもイケメンとか言って欲しかったなー」本気で南が拗ねてるのを田中と佐藤は大袈裟なほど笑った。
「いやぁ、純粋にひま好きだわ」
佐藤は眼鏡を持ち上げて、目尻の泣き笑いした跡を拭った。
電車の中でドア付近に立ち、そんな光景を思い出しながら車窓から都会の街を眺めていた。そんな彼女の横顔は、驚くほど物憂げで美しかった。
「どうしたん? 元気ないじゃん 」
南は向日葵を見下ろした。175センチの彼に対し、153cmの彼女はとても小さく見えた。
「秋って、寂しいね」
ほとんど南にしか聞こえない声で向日葵は呟いた。南はしばらく外を見て、口を開いた。
「でも綺麗だ」
向日葵はその言葉に、少し笑顔を見せた。




