表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひまわり  作者: 雪之都鳥
第二章
11/65

十、

「ほら、起きなさい。風邪ひきますよ」

 向日葵は霞んだ視界に母の姿を見た。なぜだかその時は、丸い母性のようなものを感じた。起き上がり、縁側から空を見るともう夕暮れ時だ。珍しく目覚めが良かった。

 気づけば母はもう居なくなっていた。歩いて、心当たりのある場所に行って見てみると案の定だった。厨房に立っている母はいつもより機嫌が良かった。

「やっぱり、家は静かがいいわねぇ」

 向日葵は冷蔵庫から牛乳を出して、コップに注いだ。

「月一回にしてよ、友達を連れてくるのは」

「・・・うん」

 向日葵はその後ろ姿を目に焼き付けた。母がいつも怖いのは、自分のせいじゃなくてなにか別の所にあると。そう思いたかったのだ。

 縁側にはごましおが、気持ちよさそうに眠っていた。その隣に座り、牛乳を飲もうとした。スマートフォンの通知が鳴る。猫が跳ね起きた。

「ごめんね、ごましお」

 滅多に来ないアプリの通知。開いてみると、南から連絡があった。『ひま、明日。明日、田中と佐藤と海に行くんだけど一緒に行くか?』

「・・・・・この季節に?」

 向日葵はその口にした言葉が、あまりにもバカげていて小さく笑った。指で軽くタップし、素早くスマートフォンを伏せた。

「ごまっしおっ」

 ごましおは、迷惑そうにそっぽを向いた。やったぁ、と抱きしめて仰向けになる。向日葵は今までにない安堵感に包まれていた。深呼吸をすると、なにもかも無かったことになりそうだ。

 向日葵はわくわくしていた。初めて、友達というのがありがたいと思った、田中、佐藤、南。向日葵の性格も全て受け入れてくれる存在。

「ほんとうに、ありがとう」

向日葵がそう目を閉じた。だがその涙は、目尻から溢れる。最近泣いてばかりだな、と鼻をすすった。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ