これは必然的である
「ねえ。約束して? きっと私を迎えに来てくれるって」
「あぁ」
「そしたら私とずっと一緒にいて、幸せにして」
妹は最後の別れの時も微笑んでいた。その時から彼女のことを忘れられずにいる。日常生活を送る中でどこか片隅に彼女の姿があった。まるで彼女の幻影に縛り付けられているようにも思えているような錯覚さえも覚えた。両親の離婚により俺は父側に、妹は母側に引き取られた。それきり妹とは連絡を取り合うこともせず、会うこともなかった。
「行ってきます」
十年後、八雲元は高校二年に上がり、父の仕事の都合で転校してから初めての登校する高校に向かっていた。元の父は単身赴任中でほぼ一人暮らしの状態が続いていた。慣れてくると寂しいと感じることもなく、自分の身の回りのことをこなしていく家事能力が少しだけ上がったような気がしていた。同時に、母が父と離れたのも父の仕事を優先しすぎる性格が理由なのではないかと考えるようにもなった。今更そんなことを考えてどうにかなることではないのだが。今日から通う学校は特に変わったことのない普通科の高校で、とりあえず早く馴染むようにしたいというぼんやりとした願望を抱いていた。
「君が八雲くんか。緊張するかもしれないけど、クラスの奴らは大体気さくだから気楽にね」
「はい」
教師に連れられて教室まで向かう。授業中かと思うほどにやけに静かだったがまだ授業は始まっていないらしい。教室の前に来ても予想していた騒がしさとは違った異様な静けさを感じた。
「八雲元です。よろしくお願いします」
「転校生の八雲元君だ。新しい環境に慣れないと思うから皆仲良くしてあげてくれ」
「……」
「じゃあ八雲君は後ろの端の席に座って。10分後授業開始だから」
教室の静けさの謎はすぐに理解できた。教室にはホームルーム中だというのに人が数名しかいなかったのだ。クラス内で集団感染にでもかかったのかと思ったが、机はザッと40名ほどあるが、八名ほどしか席に着いていない。八雲が不思議そうにしていると、気だるげな雰囲気を醸し出している女子が八雲に向かって左隣の机を指した。八雲がその方向にある席に向かうと女子はニヒルな笑みを浮かべて話しかけてきた。
「何でこんな人いないんだよって顔してるね」
「皆欠席してるのか」
「違う。いなくなったからいないの」
「いなくなった?」
「殺しあったんだよ。てかさ、うちの高校のこと知らないで来ちゃった感じ?」
まじで言ってる? と女子は訝しげにこちらを見ながらへらへらとしていた。こちらとしてはそちらの方が何を言っているのか理解が追いついていない。ふと我に帰り、周りを見渡してみるとこの女子以外、皆同じように暗い顔をしている。どうやら妙な高校に転校してきてしまっていたらしい。八雲はとりあえず後ろの黒板に書かれてある一限数学の時間割を見て教科書とペンケースを取り出した。
「うちのクラスさ、日直回ってくんの早いよ。人間少ないから」
女子は特に机に何も出していなかった。