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一人で街に行ってみる

翌朝、朝早くに起きてカップスープとレトルトカレー(お鍋で温めるタイプのやつ)で簡単に済ませると、机の上においておいた昨日の売り上げ金を見る。


まさかの金貨十枚以上、日本円で100万以上の売り上げが上がってしまったのが、

「これって、kuruzonにどうやって反映させるんだろう…?」

kuruzonがこっちの貨幣で表示されているから、入金や出金ができるんじゃないかな、と思っていたのでとりあえず

「注文!」

と画面を出してみる。

画面の金額がでているところにポップアップが上がる。


『入金しますか?』


「おお、これでできるんだ」

全部入金をすると、こっちの生活でも困るので、とりあえず金貨9枚分を入金する。

数字を押すパネルが現れるので、9という数字と貨幣の種類らしい金色の丸を押す。

すると、9枚の金貨がテーブルから消えて、画面の数字が変わる。

金貨の部分80枚だったのが89枚になった。

「反映された…」


ちょっとびっくりしたけれど、まずは注文、と画面操作に戻る。

生活改善として、大事なのがお風呂とトイレ。

昨日のレストランで上下水が完備されていたので、同じようにしたい、と思って調べてみたけれども、ユニットバスなんかを買っても、どうやって設置すればよいのかも分からないので買うのもためらわれる。


こっちでお風呂もトイレも買えるけれども、外にトイレがあるのも、ここの家にお風呂のスペースもないので、どうしようかと悩んで…


「しょうがないグリフィスさんに相談してみよう」


と思いついたけれども、領主であるグリフィスさんに相談って、簡単にできるのだろうか?と思い至る。一昨日と昨日は向こうから来てくれたけれど、自分から行ったら、不審者と思われて止められてしまうのではないだろうか…。

あと、街まで歩くと結構な距離がある気がする…。


これからの生活のために野菜とか卵とか、できればお肉とかも欲しいので、自分一人で街に行ってみるかと思い立ち


「自転車!」


前にかごが付いて後ろに荷物が載せられる奴を探し、後ろにつけるかごも買っちゃうことにした。電動アシスト付きは悩んだのだけど、まだ、電気の確保ができていないのでやめた。


両方買っても銀貨2枚もしなかった。


早速届いたものをセットして、洋服と一緒に買った小さな肩掛けカバンに金貨一枚分のお金を入れて、小道から馬車の通る道に出ると


「出発!」


土と石の道を自転車で走っていく。ちょっとがたがたするけれども、慣れると上手く走れるようになる。調子に乗って飛ばしていると、5分もしないうちに石畳の道にたどり着く。

さすがに街まで自転車で乗り込むのはちょっとまずいかな、と思ったので道をそれた木の茂みに自転車を隠す。目印に石を3つ積んで茂みの前に置いておく。


肩掛けポーチと、お買い物用のかごを持って、石畳の道をすすみ、街の門をくぐる。

門には衛兵さんらしき人がいたけれども、こっちで買った洋服だし、女一人だからか、特になんにもとがめられずすんなりと街の中に入れてくれた。


昨日馬車で通った道をうろ覚えながら歩いていくと、広場に出る。

昨日よりも早い時間だからか、広場には敷物を敷いていろいろな人がいろんなものを売っていた。


「とれたて新鮮の野菜だよ」

「川でさっき採れた魚だよ」

「パン、おいしいパンはいかがかね」

「果物あるよー」


自分の家で作ったものや採れたものをそれぞれ販売しているらしい。

新鮮な野菜が嬉しくて、ジャガイモ、玉ねぎ、人参、キャベツ、あとはエリンギににたキノコに小ぶりの桃らしき果物、小麦粉も売っていたので買ってみる。


「おや、お嬢さん、見ない顔だね」

小麦を買ったお店のおばあさんにそう声をかけられたので、最近街のはずれの家に引っ越してきたことを伝える。

「おや、ひょっとして細道上がったあの古い家かい?」

おばあさんはどうやら家を知っているらしく

「あんな古い家に女の子が一人で住むなんて大変だろう?」

と心配してくれる。

トイレのことを思い出したので、スライムを手に入れる方法をちょうど良いので聞くことにした。

「ああ、下水用のスライムかい?そしたら、向こうの通り入ってすぐ2軒目の魔物屋にいくといい。店主にきいたらいろいろ教えてくれるよ」

そういって広場の入ってきたのとは反対側の道を指さす。

ちょうどダイナモンドサックス商会がある道だ。

ダイナモンドサックス商会よりも手前にどうやらスライムを売っている「魔物屋」とやらあるらしい。魔物屋…異世界っぽくてドキドキする響きだ。


お礼を言って、さっそく魔物屋へと行くことにする。


魔物屋はオウムらしき鳥が入った籠がお店の前にあり、お店の中は見えないすりガラスになっていた。翼が生えた蛇のようなマークの看板が出ていて、魔物っぽさが満点だ。


ドアを開けるとカランカラン、とベルが鳴る。


「こんにちは……」


声をかけてお店に入ったけれども、応える声はない。

店内は至る所に様々な篭や檻や水槽が積みあがるように置かれている。

見たことのあるような熱帯魚のような魚から、見たことのない生物まで様々だ。


「わあ……」

異世界に来たことをものすごく実感する店内につい辺りを見回してしまう。

すると、一つの水槽に目がいく。

何故か鶏の卵のようなものが2つその水槽に置いてある。


「親がいて温めなくてもいいのかな…?」

「光を当てて温めているから大丈夫なんだよ」

急に後ろから声が聞こえてびっくりし、振り返ると、背が高く、もじゃもじゃの髪の毛で目が隠れてしまっている男の人が居た。

「ああ、ごめんね。びっくりさせちゃった?」

「あ、いえ。はい」

いいえなのかはいなのか、自分でもびっくりしすぎて分からない返事をしてしまう。


「ごめんね。ちょっと手がふさがってたからすぐに出てこれなくて」

そういってそのとこの人はエプロンのポケットに手を突っ込む。

すると、右側、左側の檻や籠にはいっている鶏やらナコっぽい生き物やら犬っぽい生き物やらが一斉に騒ぎ出す。

ポケットから出した手にはいろいろな餌らしきものが握られている。

「ちょうどみんなのご飯の時間でね。あーはいはい。順番に揚げるから騒がないの」

それぞれの檻の子たちに餌をあげているようだ。


明らかにエプロンのポケットの容量を無視して餌が出てきているけれども、マジックバッグがあると聞いたので、そういうものもあるのだろう。

餌をあげている店員さんらしきその男の人を見ていると、さっきの卵の水槽から、ぱりぱり、と音がする。

あれ、と思い見ているとその卵の1つにヒビが入り、かわいい黄色のくちばしが見えてくる。

それにびっくりしていると、もう一個の卵にもヒビが入り、そっちからもくちばしが見える。

見守っていると、卵の殻を破って、かわいいひよこが2匹、出てきて、私を見て「ピィ」と鳴いた。


「あー!!!!」

他の檻で餌をあげていた店員さんが叫んで、ひよこの水槽に近寄ってくる。

「生まれちゃった…!ひょっとして、目、あったりした?」

と聞いてきたので

「…はい」

と答えると、店員さんはがっくり、と肩を落として床に崩れ落ちる。

「あ、あの……」

「いや、君が悪いわけじゃないんだ……ずっと見守ってたし、ほとんど人が来ないから油断してたんだ……もっと奥にしまっておけばよかったんだし……」

ひょっとして、雛が最初にみたものを親とおもって懐くっていう、あれをやりたかったのかな?そう思って自分の所為じゃないとはいえ悪いことしたと思って謝る。


「ごめんなさい…親鶏になっちゃって」

「主従契約したかったなー」


「は?」

「え?」

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