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街へおでかけ

異世界のトイレがぼっとんでお風呂がなくてしょんぼりしている。

朝。


「今は何時くらいなんだろう?」

薄暗い窓からは光が少し差し込んでいる。

もそもそとベッド(という名の木の箱)から這い出す。

昨日の夜買った寝間着替わりの安いワンピースのまま、ストーブに近寄り使い捨てライターで火をつける。


昨日の夜


・寝間着兼部屋着

・着替えのシャツとデニムパンツ

・使い捨てライター

・着火剤

・カップスープの素

・パン


これらを買ってから寝たので、カップスープにパンの簡単朝食を用意する。


「生鮮食品があまり売ってないし、売ってても買えないのがkuruzonの不便なところだなあ…」


ネットスーパーとは違うので、食料品があまり充実していないのが残念なところだが、


「でも、漫画や小説の新刊が買えるほうが大事!!!!」


優先順位がそっちなので気にしないことにする。

野菜やお肉はひょっとしたらこっちのほうが安いかもしれないし。


朝ごはんを食べて、他に買った洋服から動きやすそうな恰好になる。

Tシャツにデニムのパンツ。

街まで行くのなら、動きやすい方が良いだろう、そう思っての恰好だ。


食後にお茶を飲んでいたら、お店側のドアが開く音がした。


「マドカ? いるか?」


グリフィスが店の中に入ってこちらに声をかけてきたので


「はーい! 今行きますー」


そういって、準備していたカバンを持つと、店との仕切りのカーテンをめくった。


グリフィスに先導されて店の前の小道を降りると、昨日ちょっとだけみた大きな道に馬車が止まっていた。

馬車! 初めて見たよ!

どうやって乗ったらよいか戸惑っていると、すっと手を差し出される。

なるほど、紳士だな!


その手を借りて、馬車に乗ると、御者の人がドアを閉めてくれる。

ドアがしまったとはいえ、両面に窓が付いているので、開けると風が入ってきて気持ちが良いし、景色も見える。


馬車は軽快に道を走っている。といっても道はアスファルトで舗装をされているものではなく、馬車の轍と思われる跡がずっと続く小石と土の道。がたがたと揺れながら馬車が走っていく。

両側には野草が生えていて、さわやかな風が吹いて気持ちがいい。


「ちなみに街ってどれくらいですか?」

「もうすぐそこだよ」

そういって指さした先には、道の両側に数件家が連なっているのが見えたけれど

「あ、いま家が数軒しかないって思っただろ?」

街というには寂しいなあ、と思っていた私の心を読んだようにいわれ

「もうちょっと、あと少ししたらわかるよ」

そういっていたずらっぽく笑った。


道が石畳になったな、と思ったら、大きな門を抜け、目の前に家々がひしめき合う、中世のヨーロッパのような可愛い街並が広がった。馬車はその家々が続く大通りを走っていく。


「綺麗な街だろう?」


数千軒の家やお店が立ち並び、馬車は街の憩いの場らしい、中央の広場に到着する。

広場には大きな噴水なのか、みんなが水仕事をする場所なのか大きなライオンぽい頭から水が出ている場所と、その中央に日時計が太陽の光をうけて輝いている。


「僕たちは南の門から入ってきたけれど、広場を挟んで反対側、街の北側には教会があって、その奥にはこの街の政治などを行う施設がいくつかあるよ」

グリフィスは、広場の一角にあるお店に馬車を横づけすると、そういって、街並みを見ながらぐるり、と説明してくれる。


教会、と言われた鐘の鳴る塔がついた大きな建物があり、そこを中心に道が東西南北に放射線状に伸びて、1番幅広い中心の道はこの道に繋がっているようだ。


「綺麗だし可愛い!」

「そうだろ。自慢の街なんだ」

王都からは少し離れているが、他国に面していて物と人が溢れる貿易と外交の街「セグウォルド」。

グリフィスがまるでちっちゃい子が自分の気に入ったおもちゃのように誇らしげに言うのが面白くて、ちょっと笑うと、一瞬驚いたような顔をして、そのあと手で顔を押さえたあと、そっぽを向いてしまう。

笑ったから気を悪くしたのだろうか。


微かにパンを焼く良い香りが漂ってきて、おなかがグーとなる。

朝ごはんにスープもパンも食べたのに……。恥ずかしい……。



「良い食堂があるから、商会に行く前に案内するよ」

腹の虫の音が面白かったのか、グリフィスが笑いながら(涙まで流しながら!)広場にある一軒の店へと歩いていく。


街の中心の広場を囲う建物の1つにそのお店はあった。

かわいいペールグリーンの壁と木でできたそのお店は海賊さんたちが酒盛りをするようなそんな雰囲気の店内と、ヨーロッパのカフェのような外のテーブル席に分かれていて外では年若いお嬢さんたちや奥様がお茶を、店内ではおじさんたちがお酒を楽しんでいる。


グリフィスが店の外の席に座るとあちこちからひそひそ声と視線が飛んでくる。

(王子様がこんなところにいるからかな・・・?」

…とおもって、視線の先を見るとどうやらみられているのはこっち?

そして自分の格好がTシャツにデニムなことを思い出す。

どこからどうみても、この世界の皆様の着ている洋服とは一線を画す奇抜なファッション。

(って、思われてるんだよね、きっと)


…あとでこちらの洋服を購入しようと思います。


「グリフィス様!ご来店ありがとうございます!!!!」

店の奥からこの店のご主人らしき人が飛び出してきて揉み手せんばかりに挨拶をしてくる。

グリフィスさんってやっぱり本当に領主様なんだな。

領主様、というより最初に言われたイメージからか交番のおまわりさんとか、騎士とかなんかそういう感じの風に思えてしまう。


だって領主様が供も連れずに一人でレストランに入ったりする?この世界ではするのか。ていうか実際にしてる…。


そんなことを考えていると

「今日はシチューがおススメです」

「じゃあそれを2つ貰おうか」

店のご主人の勧めるままにシチューを注文し、来るのを待つ。

ひそひそ話と視線が痛いけれど、それも我慢。


街の広場に面したお店がなのでテラス席のここから、広場を見渡せた。

広場には新鮮そうな野菜を売っている露店や果物の露店、生地の露店などが並びにぎわいを見せていて見ているだけでも楽しそう。


中央の水場ではライオンみたいな動物の彫刻の口から水があふれ出ていて、そのまわりで主婦らしきみなさんが楽しそうにおしゃべりをしながら野菜を洗ったり洋服を洗ったりしている。

THE井戸端会議というやつだ。

そんなこんなをぼーっと見ているとお店の主人がごはんを持ってきてくれた。

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