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お家とファーストコンタクト

2020年7月14日に大幅に加筆修正いたしました。

「ゴホゴホ…ここは一体…?」


目が覚めた、というか穴から落ちたに近い感覚で覚醒したまどかはあたりを見回す。


古ぼけたこじんまりした木でできた家の中だった。

写真でみたことがある山の中に建っているような丸太でできたログハウス風、とでもいうのだろうか。

壁は武骨な丸太のままだが、不思議と隙間などはない。


まどかはまず部屋の中を見渡す。

窓から日が注ぐけれども、家の奥までは届いてこなくて全体的に薄暗く感じる。

今、まどかのいる10畳ほどの広さの部屋は、中央に立つと左側には作り付けの棚、反対側右側には人がはいれてしまいそうな大きな木箱が1つ置いてある。

部屋の中央には丸いテーブルに椅子が2脚。


正面左側には天板で料理ができる形の薪ストーブ。その横にはレンガと石でできた水場、さらにその横にはまるでおとぎ話に出てきそうな木の扉に、外が見にくいガラスの窓。

すりガラスである、というよりは昔のガラスらしい揺らぎゆがみがあるガラスのようだ。


そして後ろは壁、ではなく木箱のへりに沿って大きな本棚が壁一面に…と思ったら、右はしの一部がカーテンになっていて、めくってみたらカーテンの裏は本棚ではなくもう一つの部屋につながっているようだ。


カーテンをひいてもう一つの部屋を見てみると、そこはもともとはお店だったようで、両側の壁に棚があって、奥の部屋とはカーテンと本棚で仕切り、カーテンの前にはカウンターがあって、奥の部屋には入ってこれないように仕切られていた。

カウンターの向い、両側の棚の先には窓とドア。

どうやら正面はこちらのようだ。

緑が窓の向こうに見える。


まどかがカウンターの上を見ると一枚の紙きれが目に留まる。

そこには

【このお家はあなたへのプレゼント。好きに使っていいわよ 女神より】

きれいな文字で書かれていた。

どうやらこの国?世界の言葉らしいが、不思議と読める。

これも女神様の加護かな、と思いながら

「…なるほど、ここがこの世界の私の住処ね」

まどかはつぶやいた。


「私の住処、ということは、私が好きにしていいってことよね…?」

OK把握、とつぶやくと、さっき木箱の中から見つけた箒と布を取り出し、

「大掃除だー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

両手にガッツポーズをする。



何年もほったらかされて火が入っていないように見える暖炉。

人が何年もいなくて放っておかれた埃のたまった棚。

どこもかしくも埃だらけで空気がよどんでいる。

掃除のし甲斐があって上等、なのである。


まどかの趣味は休みの日にマンガがゲームをしたりちょっと凝った料理を作るのもそうだが、模様替えやリフォーム、DIYは自分でやるのも、TV番組で見るのも人のを手伝うのも大好きなのだ。


「古くて汚いお家上等。腕が鳴るわー!」


目指すはマンガやゲームを楽しめる、巣籠できる快適なお家!


さあ、掃除だ! と、本棚の奥、お店側の扉を開けると、

目の前には見たことのない景色が広がっていた。

店の前は木立が並んた細い道があり、5メートルほど進むと大きな道に面しているようだった。


店の前には木の看板と、ろうそくを入れるタイプの外灯。

興味をそそられて木立を抜けて大きな道に出ると、ちょっと先に村のように家が数件並んでいるのが見える。


「なるほど。異世界といっても、昔の外国みたいなものかしら」

まどかは独り言を呟いて、道を戻ろうとする。


掃除に必要なのは水だけれど、店の正面には水場がなさそうなので、井戸なりなんなり、おそらくあるのは裏手だろう、とあたりをつける。



と、道の横の茂みがガサガサと動いた。


「なに?」


近づくと、叢からぴょん、と耳が飛び出す。

昔飼っていたウサギの虎丸を思い出す耳は、草から飛び出したかわいらしい男の子の頭についていて、その子はまどかをみると驚いた後、

「わー!」

そう叫んで町の方へと走って行ってしまう。


「いきなり叫ばれてしまった……」

かわいいうさみみに、逃げられてしまいしょんぼり。

この世界の人とファーストコンタクトだったのに…。


とはいえ、人畜無害のまどか。女神様の加護もせいぜいkuruzonでお買い物ができる程度。

幸運も分けてもらってるしいきなり迫害されたり、殺されたりはしないだろうし

無害だと分かれば仲良くなれるだろうし、誤解さえ解ければ大丈夫だろう。

この異世界でいきなり村八分は嫌だし!


と、ポジティブにシンキングして、途中だった水場探しに家の裏へと向かう。

やはり、というか案の定、というか、キッチンや水場の横にある裏の扉を開けてすぐのところに井戸があった。

まるでおとぎの国の姫が歌っていそうなつるべ式の井戸である。


「せめてポンプ式だったら…うれしかった…」

そういいながら、なんとか一杯の水をくみ上げてみると、水は清んでいて飲んでも問題なさそうな様子。

掃除するならバケツも欲しいし、できれば石鹸くらいあったらいいな…

そう思って、いろいろなものが詰まっている木箱を開けてみる。

中はこまごまとしたガラクタが積まれて埃をかぶっていた。

木でできたコップやお皿スプーンなども見つけたがバケツになりそうなものやせっけんなどはないようだった。


「そうだ、本当にkuruzonが使えるかせっかくだし試してみるか」


女神様が使えるようにしてくれたというkuruzonを使える加護。

足りないものを買うついでにせっかくなら試してみよう、という気持ちになる。


どうやったら使えるのだろう、と考えてとりあえずふと頭に思い浮かんだ「注文」と言ってみると目の前にお馴染みの注文画面が浮かび上がる。

「おお、なんだか異世界っぽい!」

と、ちょっと感動しながら検索。


「どうぜ床を掃除するなら、やっぱアレかなー。全自動のやつ。かっちゃう?」

と調子にのって注文しかけて、気が付く。

「あれ? そういえばこの家にコンセントてあるのかな…?」

家の外には電線らしきものは…なかった。

部屋を一通り見まわしてみても、コンセントが見当たらない。

暖炉が薪、外灯はローソク式だったことを考えると…

「電気…ひょっとして……ない…?」

思わぬことにショックを受ける。

ゲームとかTVとか……買っても使えないのでは?と思いものすごく落ち込む。


が、

「ソーラーパネル!!!!」

さすが何でも売ってるkuruzon!ソーラーパネルの他に蓄電器も発見して、少しだけ引きこもれる一筋の光が見えたので、バケツと塵取り、雑巾、あと石鹸をいくつか注文する。


注文しようとして、見慣れない画面の端に気が付く。

金貨80枚、銀貨52枚、白銅貨5枚 銅貨6枚

その数字になんとなく見覚えがある。

「なんだっけ…この数字…あ!」

通帳の残高¥8525600

自分の通帳の残高だ。

ブラック企業に努めながらもコツコツと貯めたお金と母が残してくれた財産の合計。


それが金貨と銀貨と銅貨になっている。

金貨が10万、銀貨が1万。そして白銅貨が1000円で銅貨が100円のようだ。


「前の世界の財産をそのまま引き継ぐってことは、このお金がなくなっちゃったらkuruzon使えなくなるってこと?」

注文し放題だとおもっていたのでがっかり感が半端ない。

しかもこっちの物価もわからないので、このお金で生活していけるのかどうかもわからない。


いきなり世の中の世知辛さを実感して、異世界観が現実味を帯びたが

とりあえず、お買いものをして部屋の中を掃除することにした。


『お部屋が汚いと気分もめげるものよ。

お家がきれいだと気分も楽しくなるわ』


亡くなった母が口癖のように言っていた言葉だ。

こういう時こそ掃除をしてすっきりさっぱりしよう、そう思い、注文ボタンを「えいや!」と押すと、1,2分後にお店のカウンターに「ぼふん!」という音と煙が立ちあがり、見慣れた段ボール箱が現れた。


「なるほど、こういう風に届くのか。さすが異世界」

ちょっと感動しながら、段ボールを開けると、先ほど注文したものが箱にそのまま入っている。

「これくらいの梱包でいいんだけどなあ」

前の世界の梱包事情を思い出してそんな呟きをするが、もうそれは過去のこと。

「さ、掃除掃除」

バケツを手に裏の井戸へと再び向かう。


家の裏はテニスコート1面分くらいの広さの家庭菜園になっていて、その周りは木に囲われていて、奥は森のようになっている。

森の奥からせせらぎが聞こえてきたので、少し歩いてみたら、1分も歩かないうちに浅い小川を見つける。

井戸で水をくむのと、ここから水をくみ上げて水場に水道を作るの、どっちが大変だろう、と考えて、おとなしく井戸から水を汲むことにした。

私が知ってるアイドルが島を開拓するTV番組では水路作るのに3年近くかかってたから…。


小川からもどり家の扉を開けたままにして、窓も開けると、部屋の埃っぽい空気が一掃される。

箒で埃を外にだし、どうせなら、と机も椅子も、あとは木箱の中身も全部外に出して太陽にあてて消毒。ガラガラになった部屋を雑巾掛けしていく。


家具があまりなく、埃も一回掃除したので、雑巾がけがはかどる。

真っ黒になった雑巾をバケツで洗い、また雑巾がけし、洗い、雑巾がけし…を繰り返してピッカピカにしていく。

そのあとは乾いた布でからぶきしてさらにピッカピカに磨き上げた。

木箱は動かせそうにないのでバケツで水を運んでたわしでごしごしと擦る。

サイズ的に、この木箱、上も平らだし、ひょっとしてベッド…なのかな?

それ以外に寝るスペースがなさそうなので、そんなことを思いつつ窓や棚も埃をとって水を濡らした雑巾で拭く。


あとは家の中に家具や物を戻すだけになったので、ここで改めて大きな木箱の中にあったものや家の中にあったものを確認してみる。


小さな箱×5

RPGの宝物がはいってそうなかわいい箱。

これは衣装とかいれるためのものっぽい。

埃を払って、水で軽く洗って外も中も乾かしておいた。


大きな鉄の鍋×1

ストーブの上においてあったもので、ドキドキしながら中をのぞいてみたけれど、幸いなことに(?)空でした。

よかった。

これも洗って日干しにしました。


たわし×1

木の皿×3

木のスプーン×3

フォークっぽい2又のもの×3

ガラスの瓶×1

木でできたコップ×1

あんまりよく切れないナイフ×1


あとは

カーテンらしきもの×2

は、雑巾へと変えさせていただきました。



すっきりしたので、扉と窓も開けて風を通して床を仕上げに乾かすことにする。


どうせなら、表のお店側の扉も明けたら風通しいいかも、そう思ってお店側の扉を開けると、ドアの向こうに人が立っていた。


「わ!?」


金髪に碧眼。わかりやすーく異国の国の人っぽいいで立ちの若い男の人は私のことを上から下までジロジロみて「ふうん」と何か納得したように相槌をうつ。


「名前は?」

「は?」


初対面であいさつもなくいきなり見下したように言われて、カチンときた私は

「人に名前を聞くなら、まずご自分から名乗ったらどうですか?」

とその男の人に言った。

お掃除で気持ち良くなった気分が台無しになったので、ちょっと好戦的にいきますよ?


私が言い返すとは思わなかったらしく彼はびっくりしたようで

「そんなこと、初めていわれたよ」

と楽しそうに笑った。


一人でなんか笑っているので、金髪碧眼の慇懃無礼なこの男の人を良く観察することにした。


顔は……なかなかのイケメン。

態度は……最悪。


今さっきこの世界に来た私なので、知り合いはいない。

というか、名前を聞かれたので向こうも私の事は知らないはず。


そんなことを考えていたら

「グリフィス、俺の名前はグリフィスだ」

そういって自己紹介(?)をしてきたので

「私はまどか。本田まどかです」

と名乗ることにする。


「ホンダ?変わった名前だな。マドカもへんな苗字だ」

と言われたので

「本田が苗字、まどかが名前です」

と訂正する。

するとどっちにしろ変な名前だ、といちゃもんつけて来るので、腹が立ったのでそのままドアを閉めることにした。


会っていきなり名前に文句を言われる筋合いはないからね。

うさ耳の子に叫んで逃げられたり、いきなり上から目線な男が現れたり、この世界大丈夫かな…。

近所づきあいにこれから悩まされそうです。

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