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雌雄を決するコカトリス

「ひょっとしてきみたち、コカトリスじゃなくて、バジリスク?」

そう聞くと

コカちゃんとトリスちゃんは

「ぴいいいいいいい♡」

「ぴいぴいぴい♡」

そうだよ、というように嬉しそうに返事をした。


「尻尾は切らなくて大丈夫だ」

「なんで!?」

「コカトリスじゃなくてバジリスクだったから」


なにその「イモリじゃなくてヤモリだった」みたいな感じ、と思いながら聞いてみる。


「バジリスクだったら大丈夫なの?」

「ああ、バジリスクは毒を出さない」

コカトリスは尾の蛇からは毒を出すが、バジリスクは見た目は一緒だが、毒を出さないらしい。

「俺も見るのは初めてだが…卵を産んだから、この子達はバジリスク。毒の危険はない。だから大丈夫」

そういうと、グリフィスがコカとトリスを指先でなでてやる。

いや、もうコカとトリスではなくバジとリスクか。

ていうかリスクってなんか危険な感じがするから、ほかの名前の方がいいかな…。


「あれ?でも魔物屋さんはもともとコカトリスの卵だって話をしてコカトリスが卵を産むっていってたんだけど…」

「ああ、それは…」

どうやら、一般的にバジリスクもコカトリスの一種なのでコカトリス、と呼ばれるらしい。違いが雄雌なだけだからだという。なんとも紛らわしい。

というか、コカトリスが見つかる率とバジリスクが見つかる率が1000分の1くらいで、基本はコカトリスなので、コカトリス、と呼ばれるのだとか。

コカトリスかバジリスクかはプロでないと分からないので(ひよこの雄雌検定みたいなものか)毒なしだと分かって売ったのだと思うが(もし毒ありなら生まれた瞬間に尾を落とすらしい)一言このコカトリスはバジ(毒なし)だ、と言ってくれたらよかったんだが、とグリフィスさんがびっくり損、みたいに言う。


1000分の1の卵を楽しみにしていたのに、うっかり親になってしまったのか、と思うとなんだか申し訳ない気もする。

あと、卵の産み方も産む、というか錬成する?感じだということもわかり、ヒヨコでも卵ができるのだと分かって嬉しくなる。

あと、産んだ卵じゃないので、良心もちょっとだけ痛まない。

(大事に産んだ卵食べちゃってごめんね、的な感じが薄れるんだよね)


とりあえず、二羽が痛い思いも悲しい思いもしなくて済んだので、ほっとしたマドカとグリフィスは

「それじゃあ次の水の日に」

と4日後の約束をし、グリフィスは街へと帰って行った。


「なんだかどっと疲れちゃったな」

本を読んで自堕落に過ごすのはなんだか良心が痛むが、かといって忙しくしたいわけでも、心労を増やしたいわけではない。

「よし、こういう時こそ、お風呂にながーく入ってまったりしよう」

ブラック企業に勤めていた時はできなかった、ゆっくりお風呂タイムを楽しむのだ。なにしろ、旅館のようなお風呂にしてもらったのだから、長風呂が楽しくなる、というものだ。

「あ、漫画をお風呂場にもちこんじゃおうかな…?」

禁じ手も発動し、お風呂を長時間楽しむことにする。

「よし!そしたらあのシリーズを全部もってレッツお風呂だー!」

まったりお風呂タイムを過ごすため、いそいそと準備するのだった。



「ぷっはー!この一杯のために生きてるうー!」

と言いながら手に握られているのはオレンジジュースなのだが。

風呂上がりに冷たいジュースを流し込んで、一息つく。

今は夕方から夜になる、マジックモーメント、と言われる時間だ。

地球にいたころはこんな時間にお風呂に入り終わって、寝るなんて考えもしなかった。

いまは日の出とともに起きて日が沈むと寝る日々だ。

人間本来の生活をしている、そんな気がしている。


忙しくしていても、前のように心が沈んだりしていない。

「追われない日々っていいなあ」

でもそれは衣食住が保証されてのこと。

「食べ物…ごはんをなんとかしなくちゃ…」

大ヒット食通料理漫画を全巻買いしながら、マドカは眠りにつくのだった…。

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