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コカトリスと魔森


「コカトリスは、村ひとつ、小さな町すら滅ぼしてしまえる魔物なんだよ」

グリフィスの発言に一瞬マドカの手が止まった。


「コカトリスですよ? あんなちっちゃくてかわいくてピイピイいってる子たちですよ?」

というとグリフィスが難しい顔で口を開く。

「君はコカトリスがどういう生き物だか知っているか?」

と聞かれたので

「えっと……よくわからないです」

素直に聞くことにする。


ついでに「魔物」というものについても詳しく教えてくれる、というので聞いてみた。


このグラスファイド(意味的には地球みたいな表現みたいだった)には「動物」に分類されるものと「魔物」に分類されるものがあるという。


まず、動物は、可愛く、飼育したり共存したりできる種もいれば、人に危害を加えたり獰猛なものもいる。もちろん食用なものも、あまり食用に適していないのもいる。


魔物は、というとほぼ、動物とおなじで可愛かったり、主従契約を結び飼育出来るものもいるし、人に危害を加えたりするものもいる。ただ、動物に比べると魔物の危害の加え方や被害は大きいものになると、街や国を滅ぼすレベルになるという。


「そして大きな違いは魔物は基本的に生まれるのも、住んでいるのも魔森マシンで、人が意図的に持ってこない限り、魔森からは出てこない」

「魔森?」

「そうだ。君も知っている通り、この世界にある人間の不可侵の領域の森だ」


グラスファイドという世界は 8割の海と2割の陸地に分けられている。

2割の陸地は大きな一つの大陸でできていて、その形は少しゆがんだひし形のような形をしている。

この大陸には人が住む内陸、内側の地と、その周りをぐるりと囲み海と面している魔森でできている。

海に面している国がほんのわずかなのは、この魔森が大陸の外側をぐるりと囲んでいるからだそうだ。


魔物、と呼ばれる生き物はその魔森で生まれ育ち朽ちていく。

その時間は人間と同じくらい生きる者もいれば、数億の時を生きるものもいるという。

そして魔物の中で多くの時を超えたものは智恵がつき、人間よりもはるかに高い知能を持つ魔物もいるという。


「コカトリスは尾にある蛇が成長すると、毒を吐いて回りの敵すべてを攻撃する習性がある。主従関係になったとはいえ、危険な尻尾は切り落とさないといけない」

「え、そんな可哀想なこと……」

「コカトリスは本来魔の森の奥に住み、コカトリスの住む付近一帯は毒にあふれていて人どころか、他の魔物すら近寄れなくなる。百年程前、一匹のコカトリスを捕まえて町に連れ帰ったものがいた。その町は……」

「町は……?」

「一晩で人が住めない瘴気の溜まる場所となり、住んでいた人全員が死に、捨てられた街となった」

コカトリスは、それだけ恐ろしい生き物なんだ、とグリフィスが言う。

「主従契約をしたのなら、主人を殺さないとは思う。だが毒を吐かないという保証がない」


厳しい表情のグリフィスに言われ、裏庭にいるかわいいコカトリスちゃんたちを思い浮かべる。


「急に言われても、難しいかもしれない。また幼体だから、1月ほどは大丈夫だろう。だが、できれば早く決断をしてほしい」


できれば尻尾を切り落としてくれ、そういうと、裏庭の扉を開けて、水場にとどめている馬のところに歩いて行った。優しそうに馬の首をなで、そして小屋から出てくるコカトリスちゃんたちも撫でてあげている。

別に、コカトリスちゃんたちが憎い、とか嫌いというわけじゃないのが分かるから、つらい。


「ぴ?」

「ぴっぴぃ?」

コカトリスちゃんたちがトボトボと歩いてきた私をみて、声をかけてくる。元気がないのを察してか、周りをぐるぐる回って、元気出してと言わんばかりに、声をかけてくる。

「ありがとね……」

でも、こんな可愛いコカトリスちゃんたちの尻尾を切ったら、痛がったり、悲しんだり、最後には恨んだりされるんじゃないかとおもうと、とても心が痛い。

とはいえ、辺り一帯を死のエリアにもしたくない。

そんなことを思いながら二羽を見ていると

「ぴい」

「ぴー!」

二羽がふるふる、と体を震わせて、お尻を合わせたかと思うと、尻尾の部分である蛇が何故か「♡」の形になる。

そしてそこから

「ぽん!」

何故か、卵が産まれた…。


「グリフィスさん!!!!ごめんなさい!!!尻尾切れません!!!だってだって・・!!!!」

生卵があそこから生まれてくるんですよ!!!!!

生で食べれる貴重な卵が!!!

どうしたらいいの!!!!


「ぴー?」

裏庭で打ちひしがれている私をみてグリフィスが不思議そうな顔をして、近づいてくると、コカトリスちゃんたちが

「ぴ!」

「ぴ!!」

卵をどや顔して自慢する。

グリフィスが落ちている卵を拾い、ぐるぐると見回した後

「ひょっとしてきみたち、コカトリスじゃなくて…」

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