劇的なお家のビフォアー&アフター
裏庭の扉から部屋に入ると、もともと水場とストーブがあったところには、レストランで見た機能的なキッチンのちょっと小さい版が出来上がっていた。
しかも
「作業用のカウンターもつけといたからな」
何故かカウンターキッチンのような作業スペースまでついていて、そこには座ってそのままごはんが食べれるような椅子まで新しく作られていた。
その横にもともとおいてあったテーブルと椅子を裏庭からもどしたところで、なぜかベッドがあった左側に壁があり、扉ができていることに気が付いた。
「あれ?」
扉を開けると、なぜか6畳ほどのベッドルームができていた。
「……え?」
「嬢ちゃん、クローゼットが欲しいって言ってたじゃろ。だからクローゼットが置ける部屋を作ってみたんじゃ。あの木の箱のベッドじゃ寝づらいだろうから、ベッドも作ってみたぞ」
ドアの正面にはダブルベッドくらいの大きさのベッドがあり、ベッドサイドの壁には窓があり、ドアに沿って、洋服がいっぱいかけれそうなクローゼットと、可愛い鏡台まで設置されていた。
クローゼットを作るために部屋が一つできあがるとは、誰が予想しただろうか…。
「どうじゃ?気に入ったかい?」
と言われたので
「思った以上でした」
と答えると、ドワーフのおじさんたちは嬉しそうに頷く。
新しく作られた寝室を出て、キッチンをはさんで反対側、当初の予定通り増設されたトイレと洗面所があると思われる扉を開ける。
「おおおおお!」
まずは洗面台が目に入る。
まるでホテルのような、陶器のシンクに鏡がついた立派な洗面所。
洗面所の右に扉があって開けるとそこはトイレになっていて、白で統一された清潔な懐かしいトイレがそこにあった。
もう一つあった奥正面の扉を開けると
「すごい…」
リクエストした通りの、タイルと木でできた、ちょっと高級旅館のようなバスルームがそこにあった。
「思った通りにできとるじゃろか?」
不安そうに聞いてくるドワーフさんたちに
「ありがとうございます!!!!想像以上です!!!うごい!!うれしい!!!」
というと、ドワーフさんたちが嬉しそうに笑った。
「嬢ちゃん、他に何かしてほしいこと作ってほしいことはあるかい?」
とエンポリオ親方が聞いてきたので、kuruzonで買っておいたものを出して、ちょっとしたお願いをする。
「なるほど…。これをあちこちに這わせればいいんじゃな」
kuruzonで買ったソーラーパネル、屋内配線用ケーブルと蓄電器、コンセントのカバーを、説明書とともに指さして説明をする。
コードを壁に這わせてもらってあえて壁の中にいれなかったのは、何かあったときや部屋のレイアウトと共に変更できるようにと考えたからだ。
とりあえずソーラーパネル1枚でどれくらい電気が賄えるのか試してみようとおもう。
あっという間に配線が終わったので、せっかくなら、とドワーフさんたちにお昼ご飯をご馳走することにした。
「こんな大人数、作るの大変じゃろう?」
と言われたので、大丈夫、と答えるとお店の方に物を取りに行くふりをしてkuruzonで注文をする。
大容量のパスタ。2kg、パスタソース20人前。
ドワーフさんたちは10人だけど、推し事後だし、お腹がすいているかな、と思って多めに注文してみる。
とりあえず10人前のパスタを新しいキッチンでゆでる。
魔法コンロの使い方と魔法の蛇口の使い方を聞いたけれど、ぶっちゃけボタンを押すだけだった。魔法を使えって言われたら困ってたところなので、よかった。
パスタをゆでて、半分は別の鍋で温めておいたソースと絡める。
もう半分は玉ねぎとジャガイモを細かく切ったものを炒めたのと、パスタソースで仕上げに炒める。1つはミートソースでもう一つはペペロンチーノだ。
「あ、お皿…」
人数分のお皿もフォークもないことに出来上がったものをよそおうとして気が付いたら
「嬢ちゃん、つくっておいたぞ!」
パスタを茹でる間にドワーフさんたちが「こんなこともあろうかと!」と
大皿を4枚、それぞれのお皿とフォークを木を削って作っておいてくれていた。
大皿に2種類のパスタを盛り付けると
「良かったら食べてください」
と、みなさんに勧める。
「なんじゃこりゃ美味しいぞ!!!!」
「こんな美味いもん、初めて食べたわい!」
「モグモグモグモグ」
2つの皿に山盛りのパスタがどんどんなくなっていくので、追加分も作り始める。
今度はカルボナーラと食べてもらえるかどうかわからなかったけれどもたらこパスタにしてみる。
「なんじゃこりゃ!!!!」
「こりゃ…天国の食べ物かのう…」
たらこもカルボナーラもおおよそ好評で、20人前のパスタがあっという間になくなってしまいました。
エンポリオ親方に、最初の予定よりもいろいろ作ってもらったから、と追加でお支払いをしようとしたら
「それよりも…」
ともじもじされて
「また、このぱすた、とやらを食べさせてもらえんかのう?」
と10人のおじさんドワーフにうるうるした目で見られたので月に1回、パスタを食べに来てもらうことと、みんなが物凄く興味を持っていたインテリアの雑誌をあげることで手打ちとなった。
……本当にそれでよいのだろうか……。