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エンポリオ親方のお仕事

朝、まだあたりが薄暗い時間に目が覚めてしまった。

時計がなくて、街から聞こえる鐘の音で時間が分かるので、今が何時くらいか分からないけれども、もう少ししたら日の出、くらいの時間だと思う。


ベッドから出て、ストーブに火をつけてお湯を沸かす。

裏庭で大きな木のたらいに水を張って、沸かしたお湯と水とでちょうどいい温度にして、体や髪を洗う。

「お風呂ほしいなあ…」


そう呟いていると

「ピィ」

「ピィ?」

コカトリスちゃんたちが足元に寄ってきた。昨日はまだ小屋がないから、畑でごはんを食べさせた後、おうちの中に入れて、kuruzonの箱に裏庭でとった草を敷き詰めて簡易ベッドにしたら、思ったよりも気に入ったようで、そこで二羽とも寝てくれたのだった。


「ごはん、食べに行く?」

そう聞くと

「ぴ!」

「ぴい!」

と元気な返事が返ってきたので、裏庭への扉を開けてあげる。


そのついでに、体を洗った残り湯を、トイレにもっていってスライムがいるはずのトイレの穴に流すと、なんだか石鹸の香りが辺りに漂う。芳香剤効果もあるスライム、もう情報が多すぎて混乱しそう。


そんなことを思っているとお腹がぐう、と鳴ったので、洋服を着替えて、昨日かった野菜にコンソメを入れた簡単野菜スープと、kuruzonでかったパンで朝ごはんにする。


朝ごはんを食べ終わったところでオモテのドアをノックする音が聞えたので見に行ってみると

「さあ、嬢ちゃん!工事をはじめるぞい!」

エンポリオ親方が10人くらいの人たちを連れて家の前で待機していたのだった。


「エンポリオさん!?」

「いやあ、工事ができるんだって仲間内で自慢したら自分もやりたいっていうやつが多くてな…全員っていうわけにはいかないからくじ引きで10人だけにしたんだぜ」


どうやら、ドワーフさんたちは久しぶりの大工事に我も我もと参加をしたがったらしい。

家の中を見渡すとエンポリオ親方が

「どんなふうにしたいか、希望はあるかい?」

と聞いてきたので、言葉で話すと伝わりづらいかと思い、昨日kuruzonで買っておいたインテリア雑誌を見せる。

「トイレはこんな風にして、お風呂はこんな風にしてほしいんだけど、できるかな…?」

と聞くと、エンポリオ親方は

「なになに…ふうむ。…いや、こいつは…」と

と雑誌を食い入るように見る。

「あ、よかったら他にも何冊があるので…」

と10冊ほど用意しておいた雑誌を広げると

「おい、お前らこいつを見てみろ」

そういって、雑誌のいたるところをめくってはドワーフさんたちで話をし、たまに分からないところがあると

「これは?」

「こっちはどうなってる?」

「これはどんな設備だ?」

とものすごく聞かれたあと

「よし、嬢ちゃんまかせとけ!」

「腕がなるぜー!!!」

「おおー!!!」

とみんなで雄たけびを上げながら作業に取り掛かっていく。


ここでゆっくりしてるといい、と机と椅子を裏庭に出され、そこで座るように言われ、気が付くと、家の家具もそれぞれ裏庭に出され、なんだかどんどんお家の改築準備がされていく。


「嬢ちゃん、まずは外にあるトイレを壊して、そこの跡地と回りを増築部分として建て増すぞい」

エンポリオさんの説明にただ頷くと

「よっしゃ解体じゃあー」

「こっちはトイレをつくるぞい」

「わしゃあ風呂桶をつくるぞい」

「上水下水の管はまかせとくれ」

「解体したがれきはこっちによせとくれ、新しい増築部分の基礎に使うからな」

ドワーフさんたちが一斉に取り掛かる。


あっという間に古いトイレが取り壊されて、増築部分の骨組みが組み立てられる。

ベッドの向かいの壁、棚があったところに穴があけられて増築部分と繋げられるようになっている。たぶんあとで扉ができるのだろう。


気が付くと井戸に蓋がされて、蓋から管が出ている。

どうやら井戸から水をくみ上げる装置が付いたみたいだ。


「嬢ちゃん、裏庭に畑があるってことは庭でも水を使いたいよな?」

と聞かれたので

「あ、はい。そうですね…」

と答えると、井戸からの管を地面に埋め込み、裏庭の家から離れたところに、蛇口に可愛い小鳥がついた水場を作ってくれた。


「ピィ!」

「ピィーピッピッ!」

コカトリスちゃんたちが水場に近寄って嬉しそうにしているので、

「これってお水出ますか?」

と聞いたら

「おお、ちょっとまってくれよ」

そういって、もともとトイレのところにあった大きい穴をレンガとモルタルのようなもので補強してた人たちに声をかけて、水場からの管をつないてしまった。

さらに

「よいしょっと」

トイレにいたスライムをその穴に放り込むと

「さあ、これでOKだ」

と言われたので、さっそく蛇口をひねる。

綺麗な水が蛇口から流れるのをコカトリスちゃんたちが嬉しそうに水浴びする。

「のどが渇いてたんじゃなくて、水浴びしたかったのかな…?」

「ピ!」

元気よく返された。水浴びするんだね。コカトリス。


気が付くと、増築部分にレンガの壁ができていて

「さあ、トイレが出来たぞ! 風呂もあとちょっとだ」

工事を始めて2時間もしないうちに増築部分とトイレが出来上がってしまった。


なるほど。このスピードだから腕を振るう場所があっという間になくなってしまって、腕を振るう場所に飢えているのか。

そんなことを思っていると

「嬢ちゃん、キッチンも新しくしてよいかの?」

エンポリオ親方とは別のドワーフさんが期待に満ちた眼差しでこちらを見てくる。

「あ、はい。いいですよ」

その眼差しに負けて許可を出すと

「キッチンも新しくするぞおおおお!!!!!」

「おおおー!!!!!!!」

新しい仕事が増えて嬉しそうなドワーフさんたちがストーブに簡易水場なだけだったキッチンにとりかかる。


「嬢ちゃんは、箪笥とかクローゼットは必要ないのかのう?」

と聞かれ、

「欲しいんですけど、ベッドと本棚があるので場所もないですし…」

というと

「そこはまかせておけい!欲しいんじゃな!?」

目の色を変えたドワーフさんがベッドのあった辺りで何やら作業を始める。

トイレとお風呂の増築だけだったはずだけど、なんだかフルリフォームの様相を呈してきた。


コカトリスの小屋は10分で出来上がり、コカトリスちゃんたちは楽しそうに小屋でくつろいでいる。

そんな姿をぼーっとみていたら、いつの間にかうとうとしていたらしく

「嬢ちゃん、嬢ちゃん」

と声をかけられてはっとする。

「あれ?私寝てました?」

「小半時(30分)くらいかのう。それよりもあらかた出来たから確認してもらえんか?」

10人のドワーフさんたちが期待に満ちた目で私を見ている。

朝、ドワーフさんたちが来てから4時間弱。ようやくお昼過ぎくらいの時間で、もうできてしまったらしい。

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