衣食住のまずは住を満たすことにする
魔物屋さんから紹介をされたエンポリオ親方はどうやら「ドワーフ」という種類の人で、鍛冶や大工が得意なのだという。ドワーフの人みんながモノづくりが好きらしく、家の話をしたら、トイレもお風呂も全部作ってくれて、外だと不便だから家の増築もしてくれる、という話になった。
「最近はめっきりそういう仕事が少なくなったから腕が鳴るわい」
エンポリオ親方はそういって嬉しそうにするので、お金をどれくらい支払ったらよいかを聞くと、
「いやいや大工仕事させてもらえるんだから、こっちが払いたいくらいだよ」
とよくわからないことを言われてしまったので、相場がよくわからないのでポールさんとも相談して、金貨1枚と銀貨50枚お支払いすることにする。
増築して、風呂とトイレを付けて小屋まで作って150万…。日本だったら考えられないくらい破格の金額だけれども、
「こんなにもらってええのかのう…」
エンポリオ親方は最後までそういっていた。
ちなみにコカトリスももらってくれと言われたけれどもさすがにそれは悪いので、スライム1匹と同じ値段を支払ったので銀貨30枚を渡した。
下水処理能力がある10年もつスライムが銀貨15枚って、これも安い気がする。鶏換算で2匹も…買ったことないけど、どうなんだろう…。しかも鶏じゃなくてコカトリスだし、主従契約もしたし。
そういえば主従契約は、ポールさんが何かを呟いたら空中に証明書のような紙が現れて、それに私はサイン、コカトリスたちは足型をそれぞれ押して、契約、となった。
主従契約の取り扱いはテイムの能力がないとできないので、ポールさんは
「他に魔獣と契約したら、僕のところに来てね」
と言ってくれたけれど、今のところは予定は、ない。
買った野菜とコカトリスちゃんたちをかごに入れて、そのまま道なりのダイナモンドサックス商会に向かうと、昨日のように、ドアに立ってた店員さんが扉を開けてくれた。
「あの。今日はお約束していないんですけど…」
そういっていると
「マドカさん、どうしたんですか?」
ミサエルさんが気が付いて寄ってきてくれた。
「一人で街に来たついでに、グリフィスさんに相談をしようと思って、グリフィスさんとの連絡の取り方を聞こうと思ったんですが…」
魔物屋さんで大工さんを紹介してもらい、風呂とトイレがなんとかなりそうな話をする。
「一応、なにかあったときのために、どうやったらグリフィスさんに連絡ができるのか聞いておこうと思って…」
そういうと、ミサエルさんが
「なるほど。ちょっとまってね」
そういって、昨日はいった部屋に入り、すぐに出てくる。
「はい、これ」
渡されたのは小さな小箱だった。
「これは?」
「この中に手紙を入れるとすぐに相手の元に届く魔術品。グリフィスに設定してあるから、何かあったらこれでやりとりするといい。直接会いたいときはここに来てくれたら、店のものにグリフィスを呼びに行かせるから、ここにくるといいよ」
ミサエルさんがそういってくれる。
「え、でも領主様だし忙しいのでは…」
「マドカさんはそういってくれるだろうと思ってその小箱を渡してみました。直接領主のところに君が行くと、政治的にまずいことがあると困るので、とりあえずしばらくはこういう形で」
ミサエルさんがそういってにっこりと笑う。
「僕もグリフィスも君を政治的な変なものに巻き込みたくないからね」
昨日の美味しいお菓子が食べられなくなるのが嫌だし、と言ってくれる。
「グリフィスの予定では来週また家まで迎えにいって、取引の話をしたい、っていっていたんだよ」
たぶん、手紙か何かを届ける予定だったんじゃないかな?とミサエルさんが教えてくれたので、来週までにお菓子を用意しておきます、と笑顔で伝える。
「グリフィスは忙しいけれど、何かあったらちゃんと言うんだよ」
とアドバイスももらい、ダイナモンドサックス商会を後にする。
野菜と一緒のかごにいたコカトリスちゃんたちは、どうやら桃のようなフルーツを少しかじってお昼寝をしているようなので、このままそっと籠ごともちあるいて、起こさないように注意して、街の門を出る。
「自転車……起きちゃうかな?」
と心配しながら走っていたけれども、二羽ともすやすや眠っていて家につくまで目を覚まさなかった。
家について、かごを開けると、コカトリスちゃんたちが目を覚ましたので裏庭に放してあげる。
あと、スライムをとりあえず今あるトイレにいれようかどうしようか、蓋をあけて悩んでいると、容器からぽん、と飛び出して自分からトイレにダイブしていった。
……まじか。
ちなみに1時間ほどしてトイレにいくと、なんとなーくトイレがきれいになっていたのでびっくりした。スライムってすごい。