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第5話 冷酷、首領サウザン!!

「ちょうどよいタイミングですの。ここで後顧の憂いを断つことにいたしましょう」


 そうジュリアに声をかけたジャスティナは、二八郎を引き連れて玄関に向かって歩き出したのでございます。


 それを呆然と見送ったジュリアでございましたが、我にかえると慌ててジャスティナたちを追いかけます。そして、追いついたときには、既に玄関を出てしまっていました。


 「お、お待ちになって! 千の十字架サウザンドクロッシーズ一家(ファミリー)は……ヒッ」


 ジャスティナを止めようとしたジュリアは、玄関の外に待ち受けていた()()を見て悲鳴を上げそうになり、慌ててこらえました。


 そこには、二十人を超える屈強な男たちが手にさまざまな得物を(たずさ)えてニヤニヤと笑っていたのでございます。


 これぞ、非道の千の十字架サウザンドクロッシーズ一家(ファミリー)


 その男たちの群の中央が割れると、ひとりの男が悠然と歩み出してきました。周囲の大男の間では目立ちませんが、身長は百九十センチを超え、仕立てのよいダブルのダークスーツをまとっているため目立たないものの、その下には強靱な筋肉の鎧を隠し持っているようです。くすんだ金髪をオールバックにして、目元をサングラスで隠していましたが、歩みながらそのサングラスを外してスーツの胸ポケットに挿します。その下から現れた切れ長の目と、通った鼻筋、髭がなくすっきりとした口元、細めの顎など、なかなかのハンサムです。歳の頃は三十前後くらいでしょうか。


 しかしながら、その瞳には冷酷な光が宿り、口元は酷薄そうな微笑を浮かべております。


「ど、首領(ドン)サウザン……」


 ジュリアの口から思わずその名がこぼれます。そう、この男こそ、千の十字架サウザンドクロッシーズ一家(ファミリー)の首領、サウザンその人なのでありました!


「やあ、レディ・ジュリア。今日も変わらず美しいね、君は」


 吐く言葉は甘くとも、その視線はまるで極北の氷山のように冷たくジュリアを見据えております。


「な、何のご用でしょうか?」


 気丈にも問い返すジュリアでしたが、その声は震えています。それも無理からぬこと。首領(ドン)サウザンの後ろには筋骨隆々とした無法者どもが、手に手に鉄パイプや角棒はおろか、拳銃や散弾銃(ショットガン)短機関銃(サブ・マシンガン)のような凶悪な武器を(たずさ)えて控えているのです。


「昨日言ったはずだよ『考え直す気はないかな?』と。その答えを聞きに来ただけさ」


「な、何度来られても、私の答えは……」


「ほう?」


 ジュリアの言葉を遮り、首領(ドン)サウザンは顔を不快そうにしかめてから、冷たく言い放ちます。


「現実を見て欲しいものだね、レディ。貧しい子供たちに豊かな未来を与えたいとは思わないのかな? 我々千の十字架サウザンドクロッシーズ一家(ファミリー)に従えば、それは約束されるのだよ?」


「で、ですが……」


 蛇に睨まれた蛙……いや、狼に狙われた牝鹿のように、身をすくませて立ちすくむ麗しきジュリア。


 しかし、ここにひとつの人影がジュリアの前に立ち、決然と首領(ドン)サウザンに言い返しました!


「おやめなさい! 麻薬などという邪悪なもので得た豊かさなど、決して人を幸せにはいたしませんわ!!」


 そう、我らが少女探偵その人であります!


「何だね、君は? ここは子供の出る幕ではないよ」


 不快そうに問う首領(ドン)サウザン。それに対して、少女探偵は朗々と名乗りを上げます。


「わたくしの名はジャスティナ・ゴールドフィールド! 知的・衝撃的・破壊的天才少女探偵ですわ!!」


 それを聞いた首領(ドン)サウザンは片眉をつり上げて言います。


「ほう、君たちかね、ブラックドッグ三兄弟を可愛がってくれたというのは? 言っておくが、彼らは我ら千の十字架サウザンドクロッシーズ一家(ファミリー)の中でも使い走りの下っ端に過ぎないのだよ。そこの大男は少しはやるようだが、多少腕っ節が強いからといって我らに逆らえるなどと思い上がらないことだな」


 その言葉と同時に、首領(ドン)サウザンの背後に立っていた男がバアン! と空に向けて散弾銃(ショットガン)を放ち、ジャキン! とハンドグリップを動かして空薬莢を排出し、次弾を装填します。相手を女子供と見て露骨に脅しにかかったのでありましょう。


 しかし、そんな脅しに怯むジャスティナ・ゴールドフィールドと銕二八郎ではありません!


「思い上がっているのは、そちらではございませんこと? 二八郎は強いですわよ!」


 そう挑発的に言い放つジャスティナに、眉をひそめた首領(ドン)サウザンは吐き捨てるように命令します。


「愚かな小娘だ。お前たち、こいつらに教訓を与えてやれ!」


「イエッサー!」


 首領(ドン)サウザンの命令一下、無法者どもがジャスティナたちに襲いかかります。嗚呼(ああ)、危うし少女探偵!


 しかし、我らが少女探偵ジャスティナ・ゴールドフィールドは毅然として二八郎に命令しました。


「二八郎、やっておしまいなさい! 汚物は消毒なのです!!」


「ガオーッ!!」


 ガッツポーズをとって高らかに吼える二八郎。それを号砲として、戦いの幕は切って落とされました。


 襲い来る無法者ども。しかし、その棍棒も鉄パイプも、二八郎の鋼の肉体には通用しません。二八郎が腕を一振りすれば無法者がふっとび、足で一蹴りすれば筋骨隆々の無頼漢もなぎ倒されます。鬼神もかくやと暴れ回る二八郎に、千の十字架サウザンドクロッシーズ一家(ファミリー)の誇る猛者(もさ)どもも手も足も出ません。


 この様子を見た、首領(ドン)サウザンは、苛立たしげに叫びました。


「何をやっているのだ馬鹿者ども! 接近戦が通じないなら銃を使え!! どうせ警察など何もできんのだ、蜂の巣にしてしまえっ!!」


 その命令を聞いて、散弾銃(ショットガン)短機関銃(サブ・マシンガン)を持っていた男たちが、慌てて二八郎を狙って構えます。危うし、二八郎!


 嗚呼(ああ)、好漢二八郎の運命やいかに!? 刮目(かつもく)して待て、以下次回!!


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