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異世界で食べる!!

異世界料理物ってあるじゃないですか。もっと異世界異世界したゲテモノ料理ばっかりのイロモノ枠があってもいいんじゃないかなぁって思ってね。

「冷たい……」


 都会は夜でも眠らない。けれどそれでも深夜となれば人は少ない。


 コンクリートは熱を容易く逃がしてしまうからと土の上に座っているけれど、誤差の範囲だろう。


 何もかもが嫌になって、逃げだした愚かな僕。


 この寒空の下、何をしているのだろうか。


 まぶたが重い。


 でもそれよりも、


「お腹…空いた、なぁ……」


 切なさを胸に、そっとまぶたを閉じた。


 ……


 ……


 ……


 ……


 ……


「おい、大丈夫か?おいっ!しっかりしろっ!」


 誰だろうか?おぼろげだが金色が見えた。


 それよりもとても胸、いやお腹が切ないのだ。


「お腹、空いた……」


 なんだか色々聞こえたけれど、意識は遠のく。





 とても、いい匂いだ。お腹がグルルルルと唸り声をあげる。


 意識が覚醒する。


「ここは……?」


 目が覚めると冷たいコンクリートジャングルではなく見慣れぬ木製の建物にいた。暖かい。どうやらベッドに寝かせてもらっていたようだ。


「目が覚めたかい」


 40くらいだろうか?恰幅の良いくすんだ金髪のおばさんがいた。間違いなく外国の方だ。日本語がとても上手い。


「あなたが僕を?」


「細かい話はあとあと。まずはその腹の虫を黙らせないとね」


 僕のお腹は未だに唸り声をあげ続けていた。


 おばさんが用意してくれたのであろうスープがベッドの脇の小さなテーブルに乗っている。


 美味しそうな匂いだ。野菜がしっかり煮込まれているのであろう。思わず唾を飲み込む。


 ただ、そのスープ────物凄く紫であった。黒に近い紫。ジャイ◯ンシチューが如く紫色。それがほんの少しの抵抗を産む。


 だが空きっ腹には虚しい抵抗であった。


 添えられた匙を手に取ると恐る恐る口へ運ぶ。


 おいしい……


 夢中で口へ掻き込む。


「そうかい、そりゃあよかった。お代わりはあるからたぁーんとお食べ」


 どうやら声に出ていたらしい。


 この黒紫色のスープは不思議な美味しさだった。舌触りはポタージュのようなとろみを感じさせ、味はキャベツを思わせる甘さとビーツのようなスッキリさがあった。具材はしっかり煮込まれていてホロホロと崩れる程であったが間違いなくどれも見たことがない。緑色の人参風味のじゃがいもやアスパラのような味がする黄色い豆だ。間違いなく日本ではお目にかかれないだろう。故郷から取り寄せているのだろうか?


 一杯目のスープはあっという間になくなり、二杯三杯とお代わりを重ねていった……












 お腹を満たした僕は女将さん(どうやら食堂を営んでいるらしい)と向かいあって話をしていた。


「それで、お前さんはどうして行き倒れたんだい?」


「………」


「訳ありかい……」


「いえっ!そこまで深刻な理由じゃないです。……ただ、ただ逃げ出しただです、現実から……」


 そう、ただ逃げ出しただけ。みっともなくただ、ただ逃げ出しただけ。


「そうかい……、当てはあるのかい?」


「……ありま、せん…」


 痛いところを突いてくる。


「……あんた、働けるかい?随分と細っこいけど」


「……やる気はあります」


 なんの職業訓練も積んでない身元の不確かなガキが今のご時世雇って貰えるなんてそうそうない。我ながら酷い解答だ。


「やる気だけじゃねぇ…。……まあこれも縁だ、せっかく助けてやったのにすぐに死なれちゃ気分が悪い。…うちで働きな!」


「……っ!?あ、ありがとうございます」


「大した賃金は出せないけどね」


 なんて懐の広い人だろうか。会ったばかりの身元不詳のやつを匿うなんて……安いドラマのようだ。ただ、まあ例え女将さんが悪人で僕が騙されていたとしても今の僕にはお世話になる以外の道はないだろう。


 少なくとも一宿一飯の恩はあるんだ。


 そんな決意を固めていた僕に女将さんは盛大な爆弾を発言する。


「それじゃ、あんたは今日からここの従業員だ。そしてオーナーであるアタシには従業員の素性を知る義務がある!あんたの名前とどこの国から来たかくらいは教えな」


「あ、ごめんなさい。僕の名前…は……っ?」


 ん?どこの国??どこの県とか町とかを言い間違えている?


「あの?どこの国って?県とか市じゃないんですか?」


「いや、あんたここらじゃ見ない肌色や顔立ちだろ?てっきり国外から来たものだと思ったんだけどね。意外と近くの街や領地から来たのかい?」


 え……ここらじゃ見ない肌色や顔立ち?僕の肌の色は別に異常はない。顔は確認できないが……


「あ、あの……?つかぬ事をお聞きしますがここはどこですか?」


「ど、何処ってあんた────っ……?」


 僕の様子から何か察したのだろう。女将さんは真面目な顔になった。


「レオズレッグ王国カウズヘッド子爵領領都ブルだよ」


 異世界だ。


「はぁ……なんて顔してんだい」


 だって仕方がないだろう。本当に後戻りができないところに来てしまったのだから……







美味しいジャ◯アンシチューしか思いつかなかったw

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