息子がダメなテンプレ転生者で困っています!父が最低チーレム野郎で困っています!
転生者二人が繰り広げる大コメディー。割と自信作なんだZE☆
初っ端なから伏線コミコミなのにタイトルが全てネタバレしているという欠陥品だけどNA☆
目の前に俺譲りの銀髪に妻譲りの長い睫毛の赤子……まあ俺の息子なんだが、規則正しい寝息を立てている。不自然な程に────
親馬鹿なのかもしれないが息子はとても可愛らしく、それでいて将来は親に似て美形間違いなし。それでいて受け継ぐ魔力量……ハイスペックベイビーである。親としてとても嬉しいい。けれど一つだけ、息子には問題があった。
俺の息子は転生者なのだ。……間違いない。
妻が死産の危機を乗り越え産まれた待望の第一子。おそらくは本当は死産だったのだろう。それに魂が入り込んだってところだ。
何を馬鹿な、って思うだろう。けどな、同じ事例を俺は知っている。
息子は泣かない子だった。生まれてすぐも泣かなくて、息子を取り上げた産婆さんは困っていたものだ。俺が代わりに抱いて背中を叩きつつ、こっそり抓ってやってようやく泣いた。
生まれてから1カ月、息子は常に周りをじっと観察するようにしており、その瞳には強い知性が感じられた。少なくとも無垢な赤子が世界を観察するのとは違った目だ。おかげで乳母になってくれている近所のお母さん方は大層不気味がっていた。
誤魔化そうとも思っていないのか……世渡りが下手過ぎるだろう。悪魔憑きだと騒がれたらどうするつもりなんだ。妻は最初はなんとも思っていないようだったが、最近はご近所さんに毒されて気にし始めている。
早急に対策が必要だ。
まずは対象の観察をした。
息子は最近ようやく言葉を理解したようである。反応が違うからな、丸分かりだ。頭がいいんだか悪いんだか。前世は言語が違う国、ここら辺の国ではなかったと推定。……まあ心あたりはあるのだけれど。
魔法を見せたときの反応も顕著であった。目がキラッキラしてたから。悪いやつではないかもしれない……油断はできないが。魔法が好きとみえる。今後勝手に魔法を使わないか要観察だ。
まあ、息子の観察は今後じっくり続ければいいだろう。今は言葉がわかるってのが大事だ。
さてさて、妻は世間知らずなので適当に丸め込めると。
じゃあ、一芝居打つか。
で、今に至る。
「クリスティアンヌ……クリスティンのことで話しがある」
クリスティアンヌは妻の名前である。元は高貴な身分だったが今は姓を捨てている。いわゆる駆け落ちである(親公認だが)。今はその話しは置いておこう。
クリスティンは息子の名前だ。俺の名前がジャスティンだから、妻の名前と合わせてこの名前となった。……でもよく見れば殆ど妻の名前なんだよなぁ。
「やっぱりクリスティンは……うぅ」
「待て待て、落ち着け。俺に心あたりがあるんだ」
場所はクリスティンのベビーベッドがある子ども部屋。さあよく聞け、息子よ。お前がこの時間起きているのは知っているんだ。狸寝入りしているのはわかっているんだよ。
「あなた、それはホントなの!?」
「落ち着け、俺のかわいい奥さん。クリスティンが起きるだろう?」
「そ、そうね。ごめんなさいあなた」
さすが妻である。わざわざこの部屋で話さなければいい話しだぜ?クリスティンにも聞かせるために決まっているだろう。箱入り令嬢は伊達じゃないな。そういえばなんで俺はこいつと結婚したんだろ。不思議だ、まだ新婚なのに……。まあいいや続けよう。
「いいさ、お前の気持ちもわかる。……それでだな、恐らくクリスティンは前世の記憶が強く残り過ぎているんだ」
「え、ちょっと待って。……え?…………前世?なんで?死んだらみんな死者の国で暮らすのよ?」
「いや、いつまでも死者の国にいたら退屈だろう。それに死者がずっと死者の国にいたら死者国はいつか溢れかえってしまうじゃないか。だから記憶を消して生まれ変わるんだよ」
この国、というかここら辺の国々で主流の宗教では輪廻転生の概念は無い。なので俺がテキトーに作った理屈で納得させておく。俺のかわいい奥さんはこれで大丈夫だ。
「そうだったのね、知らなかったわ!」
ほらね。
「続けようか。クリスティンは記憶を消し損ねたみたいだね、しかも殆ど。残っても一部だけってのが普通なんだけど――」
「ちょっと待って!それじゃクリスティンは赤の他人じゃない!」
「それは違うっ!!……ごめん、クリスティアンヌ。突然怒鳴って。……あくまで記憶なんだ、そう記憶があるだけ。クリスティンはクリスティンなんだよ。一番苦しいのはクリスティンさ。記憶が殆ど残っているせいで自分が前世の人物のように感じるんだ。前世に縛られてしまうんだよ……。クリスティンの新しい人生を支えることができるのは俺たちだけなんだよ、クリスティアンヌ……」
すると妻は何を思ったのかクリスティンの方へ。
「落ちつ――」
「………。ごめんねクリスティン」
「――け?」
どうやら我が妻はよく出来た女のようだ。普通は子どもが前世の記憶があるなんて気持ちが悪いものだ。あんな説得一つで受け入れるなんてこと、出来ない。
妻はそっとクリスティンの頭を撫でる。その動きには慈しみが溢れていた。
「クリスティン……あとでママに死者の国のことを教えてね!」
そう鼻息荒く言う我が妻。
訂正しよう。ただの馬鹿だ。表情もよく見ればワクワクしている感じだ。
何と無くクリスティンが冷や汗をかいてような気がする。
とりあえずクリスティンのフォローをしておいてやろう。
「クリスティアンヌ……残っているのは前世の記憶で、死者の国のことは忘れているかもしれないじゃないか。……大丈夫だからな、クリスティン。パパがしっかり助けてやるからな」
ああサポートしてやるよ。転生者っぽくない平和な異世界生活をなぁ!
ふっ、せいぜい悩むがいいさクリスティン。自分は前世の自分が正しい自分なのか今世こそが正しい自分なのか、な。
あ、ちなみに俺はどっちも自分だから悩まなかったね。前の命が死産で失われているの知ってるし。
俺は波乱とか冒険とか全然求めていないので、巻き込まれないように息子には大人になるまで普通の人生で我慢してもらう。
悪いが大人しくしやがれ馬鹿息子!