異世界に召喚されたのに先輩がマイペース過ぎる件について
イケメンを書きたくて、イケメンを書きたくて……
私、米津 三重は華の女子高生である。
とかなんとか言ってみたがJKであるはずの私の高校生活に華はない。スクールカーストとかで見れば底辺だからだ。既に入学から3ヶ月経ってしまった。だが私はどこのグループにも属せないでいた。リア充グループに入れる華もなく、地味目の子達は同じ中学だとかで固まっている。かといって、なにやら淀んだ空気を漂わせるオタクグループに属すのは難しい……。何故なら私はオタクから敬遠されるライト層であり、腐属性を持っていないから……ニワカが許されるのはリア充だけ!
なけなしの勇気を出して色々なグループに声をかけてみるが自分の異物感が強くてとても居づらい……。なんというか、ただ居るだけって感じ。話しに入れない。
ああ、何たることか……!?このままでは高1の夏は悲惨である。
だが、こんな私の高校生活であるが全く華がない訳ではない。私には最強の切り札である部活があるのだ!
"演劇同好会"。演劇部と言えば文化系の部活の華型であるが近年では演劇部のある高校は減りつつあるそうだ。私の通うこの津南高校(発音は、つ、みなみ高校)も例外ではなく、数年前に演劇部は廃部したそう。
けれどそれを復活させようとする先輩がいた。一つ上の2年、演劇同好会部長、ミゲルこと御堂 茂先輩だ。
先輩は一年のときにこの高校に演劇部が無くて泣く泣く別の部活に入ったものの、何か違うと思い今年部の設立に踏み切ったそう。先輩曰く、「演劇部のない絶望は俺たちが終わらせるんだ」そう。この台詞から聡い人は薄々感じているかもしれないが、先輩はアレな人である。まだ入学して3ヶ月だというのに既に1年にも変な先輩として知られている。
しかしながら、私はこの変な先輩に勧誘されて演劇同好会に入部したのである。
この演劇同好会、2年はミゲル先輩(もうみんなそう呼んでいる)ともう一人、加藤 怜という先輩の二人だけ、あとは私を含めた1年女子が五人いるだけ。ただ純粋に演劇がしたくて入った1年はきっと一人か二人だろう。
どうしてか?
それは2年の二人の先輩がイケメンだからである。
加藤 怜先輩は名前とは裏腹に非常に優しげで落ち着きがあり包容力溢れる見た目をしている。そして期待を裏切らない低音で深みのある声!そして意外に結構がっしりした体格の持ち主である。華のあるタイプではないが落ち着いた魅力がある男性である。イメージは紳士だろうか。
そしてミゲルこと御堂 茂先輩。御堂先輩はズバリ、ホストである。整髪料とかピアスとかしてる訳ではないし、そこまでチャラい訳ではないのだけど、軽いノリと甘い声が合わさり部活への勧誘がイケメンホストの客引きと化していた。容姿はスラリとしているが男性らしく筋張っていない、女性っぽさのある少し丸みのあるシルエット。ハーフやクウォーターなのではと思わせる白い肌と少し堀の深い顔に色素の薄い琥珀色の瞳。睫毛は長くはっきりとした二重、とどめとばかりの泣きぼくろが色っぽい。そんな中性的でどこか日本人離れした容姿は多くの女性を惹きつけるだろう。
かなりの数の女子が色めき立ったのだが、流石にそれだけで高校生活を左右する部活を決めるのは正直難しいし、一部女子の先輩からアレは残念系イケメンというリークもあり、入部に踏み切った女子は五人だけである。
そして、私はミゲル先輩に惹かれて入ってきた口である。
当然ながら入部してしばらくすれば先輩の残念っぷりを理解することとなった。
まずあの甘い声は勧誘する相手に真摯であろうと心掛けた故の作り声で実際はテノール通り越して少年のような地声であった。おかげで普段の先輩には全く色香がなく、わんぱく小僧みたいである。先輩は同級生の女子から永遠の少年と言われたらしい。
そして独特なファッションセンス。我が校には制服がなく、私服登校なのだが……先輩はどこで買ったのか変な、そしてなんか可愛いTシャツを愛用しているのである。先輩とすれ違う生徒は必ず先輩のTシャツを二度見する。
そしてとどめはその言動、無駄にテンションが高く物凄くマイペース、そして空気を読めない常識がない。
だが、だが私はこの部活は当たりだと言わざるおえない。入った他の女子もミゲル先輩に裏切られたものの加藤先輩は期待を概ね外さない紳士っぷりだし、部活自体も色々とゆるゆるでとても楽しいものだ。そして、私たちの期待を裏切ったミゲル先輩も変なところはあるが気さくで話しやすく、そこそこ面倒見もあったりして何よりイケメンであるので私はとても充実している。部活にいる間はまさに私の思い描いた理想の高校生活だ。
因みにミゲル先輩の"常識がない"には恩恵もある。先輩は「後輩は後輩というだけで無条件で可愛い」という謎の理論から普通に私たち1年に全員に可愛いを連呼するのである。普通の男性であればアウトであるが先輩はイケメンなのでセーフどころかウェルカムなのである。更に先輩は可愛い後輩ともっと仲良くなりたいとかで全員を名前orニックネーム呼びなのだ!イケメンから名前で呼ばれて可愛いと言われる。────理想郷はここにあった。あと、加藤先輩もミゲル先輩から私たちのことを名前で呼ぶよう言われているので名前で呼んでくれるのである。
更に3ヶ月経った今ではいつの間にかミゲル先輩は私たちの頭を撫でるようになっていた!!これも普通の男性ならアウトだがry(以下略)
今日も今日とて部活をゆるゆると過ごし、先輩たちとスキンシップをとった。そして部活終わりは電車通学でないのにわざわざ駅まで先輩たちが送っていってくれるので校門の前で待ち合わせをする。
「わるい、わるい。待ったか?」
なんてミゲル先輩が駆けてきて、
「何でそんなデートの定番みたいな感じなんですか……」
と私たちがツッコミを入れて、
「まあミゲルくんだからな」
なんて少し遅れてきた加藤先輩が呆れた声を出し、
「そうか?」
と先輩が首をひねる。
部活終わりの生徒が溢れる校門で繰り広げられる何気ない日常……
けれどそれは、
突然の光の奔流に呑み込まれ、跡形もなく消える。
*****
────っ!?何がっ?
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
突然足元が光ったと思ったら、目の前にいきなりイケメンフェイスが!?
長い睫毛にぱっちりとした目、その琥珀色の瞳は宝石の様。スッとした鼻筋は彼のやや高めの鼻へと繋がる。その肌は雪の様な白さで……ってこれ先輩だっ!?
ここで私、経ヶ峰 美里は我にかえる。
確か私は演劇同好会の面々と一緒に下校するのに校門で待ち合わせていたはずであった。だが、見回せば何やら洋風で高級感のある大きな部屋にいる様だ。そして周りには演劇同好会の面々と部活帰りの他の生徒たちがいる。
すると、バンッと音を立てて大きな扉が開く。
「お待ちしておりました勇者様方っ!」
これは、まさか……
経ヶ峰 美里は隠れオタクである。クラスに一人はいる程度だが容姿は悪くなく、クラスのリア充グループに属している。ただ、その際オタクということは枷にはなるが利にはならないために公表していない。マンガ、アニメ、ラノベからウェブ小説に至るまで手広く嗜んでいる私にはこういった知識には自信がある。
この状況はそんな私の知識にモロに該当している。
"勇者召喚"何故か日本人が異世界に呼ばれ、勇者として活躍をするウェブ小説を中心に多いジャンルである。今回は集団転移にも該当しているだろう。
しかしこの勇者召喚、多くはただ勇者として強敵と戦い活躍し、持て囃されるというのが主流であるが、実は召喚した国なり人なりが極悪非道でしたというパターンも少なくない。更には集団転移の複合タイプは一緒に召喚された日本人も敵になるのだ!
読み物として読むぶんにはいいが、実際に体験するとなると最悪である。魑魅魍魎が闊歩する政治の世界に生きる貴族や王族など、一介の高校生の手に負えない相手である。
ただ、そのように考えている間にも状況は変化していく。
あっと言う間に王女とやらに付いて行き、謁見の間に行くことに……
いつもどおり書きかけです




