【ハルキとハナ】埋葬計画
何バカな事言ってるのよ。
ハナはそう言い、毎度のようにすり抜ける。社交辞令にも似た行為だ。ハルキが軽口ついでに甘く囁き、ハナがそれを受け流す。彼女がそうすると知って。
どうやら数千年に一度の天体ショーが行われるらしく、今回はそれを餌にし口説いてみた。常連の客達は懲りずに何度もよくやるもんだとこちらを伺っている。カウンターの中でグラスを拭いていたハナは、一度だけ視線をハルキに寄越し、ふっと笑った。
断らねぇって事は、今回ばかりはいいって事かな。
ハルキが問えばもっと笑う。つられてハルキも笑った。
山ほどの流星群に空一面が埋め尽くされるらしい。ずっと昔には世界の終わりだと噂され、書籍にも残っている。空一面が埋め尽くされ光に包まれるのはこの街だけで、その中でも空一面を見渡す事の出来る場所。
「よくこんな場所知ってたわね、地元でもないのに」
「星に潰されるらしいぜ」
「それ、誰に聞いたのよ」
「港に住んでるホームレスのじいさん」
星に潰された魂はどこにも行けず彷徨うらしい。あの眩しさを捜し求め永遠に彷徨う。数千年後、又流星群が訪れた時の為に身代わりを求める。次こそは置いて行かれないようにと。
聞いたのはそんな話だった。
「じゃあ何?あたし達は身代わりってわけ?」
「そうだな」
「案外夢見がちなのね、ハルキ」
そうでもないさ。
そう呟き腕を伸ばす。空を仰いでいるハナの肩に。
抜けない。今回ばかりはすり抜けない。彼女はこちらを向かない。少しだけ引き寄せる、我慢出来ない。こちらが寄る。
余りに強い光に包まれハナの顔も見えなくなった。