表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ  作者: 味野平希
2/2

一の弐

 僕が足を止めた、その先にあったのは、高い緑色のフェンスに囲まれた、広く、土だらけの場所。僕が通う、背月セツキ高校のグラウンドだった。

 普段は徒歩で20~30分はかかるのだが、今日は、五分もたたぬうちにたどり着いた。

 僕は、自身の四倍もあろうかと思われるフェンスを軽々と、弧を描き飛び越え、その先にあった土を踏みしめて、顔を上げる。荒く、激しくなった息を整えながら、ゆっくりとゆっくりと。

ーー!

 僕の視界に入ったのは……。

ーーえっ?そんなまさか……。

ーーあの速さだったら、ついて来るのがやっとのはず、なのに……。

ーー先回り……?

 様々な疑問が頭の中を駆け巡り、答えの出ぬままに消えていく。

 ¨ヤツがいた。¨

 十数メートル程前で、僕と対峙するヤツの存在感は、真夜中の闇に溶け込めぬ程黒く、圧倒的であった。

「くそ……ここじゃ、まだ人に見つかる。」

 思わず、そんな台詞が口をついた。

 僕は、苦汁を飲まされたような表情を浮かべ、ヤツから視線を逸らし、目的地の方を仰ぐ。

 凛と佇む、白く大きな校舎ーー背月高校の屋上。

ーーどうしよう。

 考えが纏まらぬまま、ヤツの方に向き直った時、僕は目の前に提示された光景を見て、目を丸くさせた。風にあてられ冷たくなった汗が、額から流れて、地面に落ちる。

 一瞬、目逸らせた間に、ヤツは……。

 ¨真っ二つ¨になっていた。まるで鋭利な刃物で切られたように。

 切られた上部が地面に落下する。その時、ボトっと言う音を立てたような気がした。

 それを見下げている少女。ヤツを¨真っ二つ¨にしたのはあの少女に間違いは無い。

 全身が桃色にぼやっと光っていて、手には全身を包む桃色よりも、濃く、はっきりと光る、少女と等身大の¨鎌¨のようなものが握られている。身長は、僕より頭一つ分ほど小さい。腰ぐらいまでに伸びた長い髪をポニーテールで結ってあった。

 よく、見知った僕の知り合い、クラスは別だが、同じ高校に通う少女ーー番匠目愛龍バンジョウメ メデルであった。

「愛龍ぅぅぅぅぅ!」

 叫んだ。叫ぶと同時に、足から、腰をつたって順々に、体が赤い光に包まれる。

 その状態のまま、三段跳びの要領で、愛龍との間合いを瞬時に詰め、勢いを乗せて、思いっきり愛龍の顔面を殴ろうとした。

 しかし、阻まれる。桃色に光る鎌に。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ