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旅行から戻った則子さんに待っていたのは、山積の仕事でした。残業しまくって、ようやくお見合いサイトにアクセスできたのは、旅行から1週間後のこと。
旅行でサイトが見られないと伝えていたので、メールは来ていないだろうと思ったら、受信ボックスに7通も届いていました。
差出人は、すべてドボンさん。あ、ドボンさんもハンドルネームです。念のため。
1通目には、『旅行から帰って、メールが沢山届いてるのを見たらビックリすると思って!』とありました。
実は、貴船神社で水占いをした時、則子さんの脳裏に浮かんだのは、ドボンさんだったのです。
ドボンさんは、神奈川県在住、30代。バイクの修理屋さんを細々と経営。20代の頃は、トラック野郎で金回りも良く、女遊びもすごかったらしい。
女の敵!(笑)
でも、30代になり、バイク事故で生死の境を彷徨い、貯金も恋人も全てを失ったそうです。
紆余曲折はあれど、世間体より自分のやりたいことをやって生きる所が則子さんと似ていて、メール交換した数もダントツでした。ただ、女遊びをしていた経歴が気になります。
次いでメールを良く交わしていたのは、ハンドルネーム・テディベアさん。東京都在住、40代。職種は分からないけれど、何かの事務所を経営しているらしい。
趣味は、旅行とDYI。則子さんが京都へ行くとメールした時も、名所やお土産などを教えてくれました。残念ながら、予定が組んであったので教えていただいた名所を訪れることは出来なかったのですが。
もしここが大手のお見合いサイトで仲人がいたら、まず間違いなくテディベアさんを推すだろうと思います。
でも、則子さんの一番苦手なことは、常識とか世間体という枠にはめられること。
何となくですが、テディベささんは、ちゃんとした大学を出て、ちゃんとした就職をして、ちゃんとした人生設計を持ってる人という印象を受けました。当然、結婚相手もちゃんとした人を望むだろうと思ったら、則子さんには無理というか、我慢できないのは火を見るより明らかでした。
い、いや!そんな簡単に他人を判断してはいけない!
そう思い直した則子さんは、気を取り直して、ドボンさんと、テディベさんに1つだけ質問してみました。2人に投げかけた質問は、これ。
「スピリチュアルをどう思うか?」
スピリチュアルといっても、江原啓之さんとか霊体験をするとか、そういう意味ではありません。
20代前半の頃、半年ほど無職だった時があって、同じくプー仲間の友達と図書館に通って様々な占いの本を読み漁ったのです。占うのは自分自身ですが、星占い、姓名判断、四柱推命、手相、カバラ占い、名前の発音で調べる音声占いなどもありました。100冊くらいは読んだでしょうか。ノート1冊ほどになりました。
面白いのは、全然、別の占いなのに、意外と、共通する結果が出たことでした。
『運が強いこと』
『強すぎて家庭に収まらないこと』
『故に晩婚』
こんな感じ。まあ、当たっているかも。(笑)
その他、則子さんは幼少時からずっとアトピーを患っていました。最初は、指だけだったのが、手から顔から成長するにつれてあちこち広がっていきました。
どんなに薬を塗っても、病院を変えても効果はなく、悩んでいた27歳の時。友人に誘われて始めた気功の治療で指導を受けながら何年もかけて治したのです。
気功は、則子さんにとって生活の一部なのですが、世間的には胡散臭いとか、怪しいなどと言われ、理解してもらえないことがあります。ですので、相手に強要する気はないけれど、則子さんがしていることを嫌悪する相手だったら難しいと考えたのです。
返ってきた答えは、似ているけれど、全く違うものでした。
『私としては関わりたくないけれど、デコさんがやるのであれば我慢する』
『スピリチュアルなことは分からないけれど、デコさんが大切に考えているのであれば良いと思う。人はそれぞれ違うのだから』
もしかして、既に忘れている読者もいるかもしれませんが、デコさんというのは則子さんのハンドルネームです。(笑)
こうして、安全とは程遠い男性とのお付き合いが始まったのでした。




